鴻池綱孝
〈第十四夜〉 エビラの勝ち目なき戦い(投稿文)
東宝映画「ゴジラ.エビラ.モスラ南海の大決闘」(1966)が公開されている頃のお話。
僕は小学2年生。「ウルトラQ」の初回のゴメスの登場シーンの「ド〜ン」「ド〜ン」という足音が恐くて泣いちゃって以来、怪獣の虜となっていた。2つ年上の兄と二人で新聞広告裏の白い面に怪獣の絵を描いたりしてよく遊んだものだ。
僕は生まれつき鼻に持病があり、医者は両親に手術と入院に耐えられる体力がつく年頃に手術する事を勧め、この頃万を持しての入院生活と相成った。
入院生活に慣れず、食の細った僕に担当医は「今日は特別に、なんでも食べさせてあげるから好きなものを言ってごらん?ビフテキ?お子さまランチ?」と聞いてきた。散々悩みに悩んだ末僕の出したリクエストは「ラーメン」。看護婦さん等周りの失笑をかったうえ「もっとマシなものを頼めばいいのに!」と暫く母を嘆かせた。
そんな侘びしい入院生活だったから友達の見舞いはとっても嬉しかった。手に手にマンガ本やお菓子、たまに50円や100円のプラモデル(当時の男の子のおもちゃの王様は、なんといってもプラモデル!)を持って放課後や休みの日に来てくれた。そんな中でも最大のお見舞い品が兄によって届けられた。マルサンのラジコンプラモデル「エビラ」だ!。嬉しかった。とにかく箱がでかいし、描かれているエビラが獰猛そうでカッコ良かった。「俺が組み立ててやるよ」普段見せたことのない優しい兄の申し出にも泣けた。美しき兄弟愛が花ひらいていた。...退院するまでは。
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写真はマルサン商店の『エビラ』。これはソフビ製。
マルサン電動歩行シリーズ『エビラ』のプラモデルは超絶にレアなため、写真を用意することが出来ませんでした。残念。文中にある「えびフライ」のような姿は、白夜書房刊『究極プラモデル大全』にて見ることが出来ます。 |
2週間あまりの入院生活を終え、家に帰って愕然とした。兄の手にはなんとマルサンのリモコンプラモデル「ゴジラ」が握られているではないか!どうやら僕のお見舞いエビラを買いに行った時、ちゃっかり一緒に買ってもらったみたいなのだ。
「あんまりだ!入院していたのは僕なのに(泣)。」怪獣の区別なんてつかない両親にとって、できるだけ兄弟同じものを買い与えたいとする親心を逆手にとった兄の作戦勝ちといったところだろう。しかしよりによって怪獣王ゴジラとは!
以来、ゴジラとの戦いは映画同様に連戦連敗。激しい戦いにやがてヒゲはとれ、たくさんあった足も1本1本もがれていき、ゴジラの吐く火炎にさらされたようなその姿は、どう見ても「えびフライ」にしか見えなくなっていった。
成相博之(なりあい ひろゆき) 43歳 テレビ局勤務
如何でしたでしょうか?泣けます。怪獣話にはドラマがあります。やはり、なぜかエビラの話には食べ物がまつわってしまうのでしょうか。(第六夜 参照)
皆々様のこのような怪獣秘話、待っています。箇条書きでも結構です!
採用分には当時物の粗品進呈しますので、奮ってご応募を!
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お茶濁しですが、同シリーズの『ガラモン』です。『エビラ』の写真に重ね、どんなもんか、想像してくださいね!
因みにこの『ガラモン』はデパートの完成品ディスプレイでは目に赤いセロファンを貼り電飾を施していたりした。 |
2003年2月10日更新
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〈第九夜〉 すべての怪獣ブーマーへ告ぐ!
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〈第七夜〉 「レッドキングでダダ」
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〈第五夜〉 セメント怪獣
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