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「雑貨店」タイトル串間努

第9回 清浄グッズ特集
 「バナナ歯磨きはいつなくなったのだ?」の巻


こどもシャンプー第1項 こどもシャンプー

 現代のようにスーパー銭湯や健康ランドが都会にできて、入浴がレジャーや慰安になるとは、昔、誰も予想していなかった。だが、昭和40年代の銭湯は子どもの遊び場の1つだったのだ。内風呂がある家も少なく、近所の子と誘いあって夕方に銭湯に通ったものだ。ボクが小学1年生の昭和44年当時、小人料金は10円だった。シャンプーは使い捨ての「タマゴシャンプー」の小瓶や「花王フェザーシャンプー」を5円で買っていた。フェザーシャンプーは粉がアルミ袋に入っていて、最後まで振り出すために、袋のなかにお湯を入れて1粒残らず使い切ったものだ。カルピスの瓶に水をいれて最後の一滴まで洗って飲んだように……。
 金持ちの子はシャンプーボトルがアニメキャラになっている「サンスターこどもシャンプー」を持ってきていた。お金がないときは石鹸で頭を洗っていたボクは、当然、そんな素晴らしいおもちゃシャンプーを持っていたことはない。
こどもシャンプー アニメや特撮のキャラクターを型どった容器に入ったものが、こどもシャンプーと呼ばれていたけれど、結構高価だったから買って貰えない子のほうがおおかった気がする。なにしろデラックス版だと、昭和46年の時点でも400円もするのだ(普通品は180円)。しかし、あれは確かに40年代グッズの1つであった。同じものはダリヤ、美香園、今は会社がなくなってしまったミツワ石鹸も出していたが、全発売点数ではサンスター(サンスター歯磨)がダントツである。
 サンスターがこどもシャンプーを最初に出したのは昭和40年だった。お風呂ギライのこどもでも、喜んで頭を洗う習慣をつけさせようという狙いであった。初期はレーシングカーや新幹線、ヘリコプターなど乗り物が多かったが、「マグマ大使」を皮切りにだんだんとテレビキャラクターの版権モノが中心となってくる。その時代時代に人気のあるキャラクターを採用していたが、全盛期は昭和40年代から50年代初期にかけてである。特撮・アニメのキャラクターが豊富な時代とリンクしている。
 「昭和50年にロボコン、フランダースの犬、ゴレンジャー、グレードマシンガー、ゲッターロボを発売していまして、このころが一番うけたのかもしれませんね」(サンスター広報室)
 それ以降は、少子化でマーケット規模が小さくなったこと、比較的高価であること、人気が衰えるサイクルが早いことなどを理由に減少していった。サンスターでは平成4年以後はこどもシャンプーを発売していないという。とうとうこどもシャンプー文化は廃れてしまうのか……。
 同社では昭和46年までが「おもちゃシャンプー」と称しており、昭和47年以降は「こどもシャンプー」と改名している。理由は明らかではないが、子どもが「買ってくれ!」と親にせがんだときに「おもちゃはいらないの!」といわれるのを回避するためではないだろうか。


子ども用の歯磨き粉第2項 こどもはみがき

 毎週木曜日、「らいおーん、こどもはみがきー」というCMが流れていた。テレビドラマ、ケンちゃんチャコちゃんシリーズの提供がライオン歯磨であったからだ(関東の場合の記憶)。
 この頃の子どもたちは毎朝、バナナを食べたものだ。といってもバナナ味の歯磨き粉をつい飲んでしまうことだけど。チューブから出てくる黄色いクリームは、朝食前の食欲を刺激する。子ども用の歯磨き粉には、バナナやいちごなどの矯味剤が添加されていた。大人の歯磨き粉の風味は清涼だけれども、ハッカの刺激が強すぎる。ボクの家では「そりゃ贅沢だ」といって、気が向かない限り子ども歯磨きは買ってもらえなかったが。
こどもはみがき 「子供の喜ぶ果物の味を添加して、幼児のときから歯磨きに親しませることは需要開発の上からも一義ある」とはサンスター社史の言葉だが、ボクらは喜びすぎて、歯を磨かず食べてしまった。リンゴやいちごよりもバナナ味が人気だったのは、バナナが高級果物であったからであろう。戦前には屋台の叩き売りもあったバナナだが、庶民には病気のときしか食べられない「滋養物」。それが昭和39年の輸入自由化で一気に値段がさがり、昭和40年代後半には各地に台頭してきたスーパーマーケットの目玉商品になった。1グラム1円という価格に庶民のココロの中の価値は暴落した。「バナナを半分しか食べられない」さっちゃんんは、舞台を失った。供給過剰とフィリピンバナナの農薬問題などで昭和58年まで、バナナ輸入量は激減の一途。おそらくこの頃に子ども歯磨きのバナナ味がなくなり、メロン味にシフトしたかと思われる。

こどもはみがき 子ども歯磨き自体は戦前からある。子どものころから歯磨きの習慣をつけさせるのは、メーカーにとっても需要増となるし、将来の自社ブランドへ使用への布石ともなる。ライオン歯磨(当時は小林商店)は児童の歯科衛生向上のために刺激を緩やかにして磨きやすくした「ライオンコドモハミガキ」を大正2年末に発売している。子どもが自主的に歯磨き習慣を付けることを狙いとして、教育カードと絵本を付録につけた。戦前には薬用子ども歯磨とし、戦後、神武景気が始まる昭和30年にライオン子ども練歯磨として再出発(32年という記録もあり)、昭和51年に「レオ」ブランドに改装されるまでレギュラータイプが続いた。
 サンスターでは昭和35年に「まんがサンスター」を発売したのが最初。
 「この頃、当社は塩野義製薬と販売提携してまして、「まんがサンスターシオノギ」という名前で鉄腕アトムとオバQをイチゴとバナナ味で出しました」(同社)
子ども用の歯磨き粉 しかし、市場での人気は期待したほど高まらなかったらしい。昭和35年だとまだアトムもオバQも雑誌掲載の漫画時代。やはりテレビ化の威力がないと。
 バナナ味がなくなったことについては、「昭和53年にこどもはみがきがリニューアルしています。これ以降にバナナ味の記録が見られませんから、この頃になくなったのでは」と見ている。
 戦後の子どもたちの記憶に強く残る「バナナ味」の歯磨きの歴史はなかなか明瞭にならない。
 バナナ味の歯磨きのことが100年後の子孫に伝えるべき大事なことなのかどうかはわからない。だが、バナナという果物の価値を記録して置かなければ、昭和の喫茶店の、バナナや桃缶、パイン缶を使ったメニューである、「ピーチメルバ」や「バナナサンデー」が、ハレの日の贅沢の象徴であったことが伝わらない、バナナでスッテンコロリと転ぶギャグがわからないのである。
 復刻ブームのいま、バナナ歯磨きが求められている。
  (※なおインターネットで調べたところ中国の「中華牙膏」という歯磨き粉は「バナナ200%」の味だそうだ。)


第3項 お子様化粧品

 子ども用化粧品のはしりは昭和28年に平尾賛平商店(レートブランド)から出た「ジュニアクリーム」というものだ。当時150円というからとっても高い。ビンは中原淳一がデザインしたという。
 40年代グッズとして印象に残るのは、「ウテナお子様クリーム」や「ダリヤお子様化粧水」だ。テレビでコマーシャルもやっていたから覚えている人も多いだろう。女の子が「ウ・テ・ナ・おこさまくりーぃむ、ハイッ」と黄色い声で絶叫していた。最後の「ハイ」が良かったな。

お子様化粧品

 ダリヤは「アコちゃんおしゃれセット(2500円)」というのを発売していて、これは手提げかばんのなかに、化粧水・クリーム・おしろい・マニキュア・口紅・リップ・ブラシがセットされているもの。当時の女子たちは、なにか手提げかばんが好きだったようで、就学時前のたいていの女子はかばんを提げていた。お菓子の入れ物でも「ランドセル」や「日航のフライトバッグ」などカバンを模したものが多かった時代である。

お子さまおふろセット

 また、ダリヤ「お子さまおふろセット」というカバンがもった。頑丈な丸いプラスチックケースに砂時計や鏡、化粧水やシャンプーが入っていて、ケースが風呂場ではイスになるというもの。なんで女姉妹もいない一人っ子なのにそんなことを覚えているかというと、隣の家に住んでいた幼馴染が持っていたからだ。今と違って、女子1千万人と子どもも多かったから、子ども用の化粧品市場というのが成り立ったのだろう。大人の気分が味わえた良い時代だ。

お子様化粧品

 これらの「おしゃま玩具」が発売されたのは大阪万博が開催された昭和45年のことだった。「ヘアードレス」と称してカツラまで売り出された。当然、「教育上好ましくない」「行きすぎだ」という批判もあった。男は男らしく、子どもは子どもらしく、が求められる風潮がまだ根強かった。
 昭和46年には読売新聞(3月1日)が、「ちびっこ化粧品禁止 口紅、マニュキュア感心しません」という見出しで厚生省が「子ども用化粧品は好ましくない」から化粧品工業会に製造中止を呼びかけたという記事を掲載している。主婦連が「行きすぎ」と反対していた子ども用化粧品は、皮膚が弱い子どもが使うと障害が起こる心配がもたれ、教育上も好ましくないというのだ。しかしこれは一部誤りであって、厚生省が今後許可せず、メーカーが自主的に製造を中止したのは、実は口紅やマニュキュアなどのメークアップ化粧品だけであって、クリーム、乳液、パウダーなどの基礎化粧品はおとがめなしであった。既存品も回収を指示されたわけでもなく、そのまま売ってもよかった。
 「ママがよくて、子どもが化粧してどうして悪い?」という質問に明確に答えられる大人はいなかったのである。子ども用の歯磨き粉

「GON」年月不明号を加筆訂正


2003年7月4日更新
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第8回「お菓子販売台、回転す。」の巻
第7回「ウイスパーカード」の巻
第6回「デパートの屋上」の巻
第5回「家の中には家電リモコンがいっぱい」の巻
第4回「デパートその2 『お子さまランチ』」の巻
第3回「デパート その1」の巻
第2回「シャンプーの変遷」の巻
第1回「レトロスタイルを気取るなら『スモカ』で行こう!」の巻


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