鴻池綱孝
〈第十五夜〉 「怪獣のネーミング」(Part1)
キング・オブ・モンスター『ゴジラ』の名付け親は円谷英二監督だそうだ。
何でも、当時の東宝の社員にゴリラに似た、クジラのような大きな身体の男がいたそうで、その男が映画の大怪獣のイメージと重なったらしい。ゴリラ+クジラの造語というわけだ。あまりに出来すぎた話で、後年、広報が考えた後付けの伝説っぽい匂いもするが、『プロジェクトX』で、そう言ってたので信じることにしよう。
今回は怪獣のネーミングについて。いつもは努めて事実だけを報告している千一夜だが、今夜は大推論大会だ。実際、誰がどうネーミングをしているかは知らないが、適当ぶっこくから空耳アワーのつもりで協力的に聞くように。突っ込みがある子は、メールしてね!
『ゴジラ』以後、ゴジラのヒットをあやかり「ラ」留めのネーミングが流行するようになる。『モスラ』然り、『ガメラ』然りだ。「ラ」は怪獣を意味する符号となった。
ウルQでは『ペギラ』が有名だ。南極の怪獣なので、ペンギン+「ラ」の法則だけれど‥
|
ペギラ:マルサン商店。初期作風に共通した愛嬌に満ちた造形。幼児体形に眠そうな目。
|
東宝から出向してきた野長瀬監督は「自分なりに、ゴジラを撮りたい。」という姿勢で作品に臨んだらしい。だから、他の「ラ」より、思い入れの強いフォルテシモの「ラ♪」だ。
「トド」の怪獣は『トドラ』、「モグラ」の怪獣は『モングラー』と、最初は説明的だった「ラ」も、ウルトラマン放映時には、『ベムラー』『ゲスラ』『ガボラ』『ジャミラ』『グビラ』『ゴモラ』等と、元ネタとなる生き物を持たずにひとり立ちしてくる。
ちなみに『アントラー』ってのは「アント(蟻)」+「ラー」じゃないよ。「アントラー=ツノ」だからね、これ、引っ掛け問題だから要注意ネ。
だけどさ、『バニラ』ってのはどうなんだい!「ラ」付けりゃいいってことかよ。
『チャンドラー』ってさぁ、『ペギラ』の着ぐるみの改造で、やっつけで作られたキャラ。ネーミングもやっつけで、『男はタフでなければ生きていられない。やさしくなければ生きている資格がない』で有名なハードボイルド小説の巨匠『レイモンド・チャンドラー』から戴いた。(でしょ?)ハードボイルドつながりでもう一丁。
|
チャンドラー:マルサン商店。商品はペギラの頭部のすげ替え。それ故、差別化を徹底する為、ペギラでの愛嬌は修正され、極端に邪悪化された。職人に、もっと怖くしてって注文したんだろうなぁ。出来上がったら、鬼の形相。
|
『ゴメス』(脚本;千束北男)って、いきなり脚本家のネーミングが、北千束の男かよ!本名かなぁ?で、「ゴメス」ってひとの名前じゃん。メキシコあたりでよくいる奴。実物を見ると「モスラ対ゴジラ」、通称「モスゴジ」の改造で、元ゴジのイメージを消すために太い付け眉毛が施さている。マカロニ・ウェスタンに登場する、ソンブレロにポンチョ姿の悪党メキやん「ゴメス」に見えなくもないが‥
|
ゴメス:マルサン商店。ゴメスと呼ぶに相応しい眉。実物ではゴジラの改造であったが、商品には全くその影はない。本編では学術名もあり、「ゴメスの名はゴメテウス」という事になる。
|
で、決定版はこれ。名作の誉れ高いスパイ小説『ゴメスの名はゴメス』(‘62年 結城昌治)だ!‥と思う。結城昌治は日本のハードボイルドを確立させた作家だ。
『チャンドラー』も『ゴメス』も名前付けた奴は、相当なハードボイルド小説の大ファンだったんだな。これ当たったな。
共演の『リトラ』は、リトルな「ラ」でしょ。
Part2へつづく‥
2003年3月12日更新
ご意見・ご感想は webmaster@maboroshi-ch.com
まで
〈第十四夜〉 エビラの勝ち目なき戦い(投稿文)
〈第十三夜〉 運命の塔
〈第十二夜〉 わたしのモゲラ様(投稿文)
〈第十一夜〉 怪塔、現る(part2)
〈第十夜〉 怪塔、現る(part1)
〈第九夜〉 すべての怪獣ブーマーへ告ぐ!
〈第八夜〉 大魔神の学習
〈第七夜〉 「レッドキングでダダ」
〈第六夜〉 マルサン商店『エビラ』『アントラー』『ガボラ』登場
〈第五夜〉 セメント怪獣
〈第四夜〉 マルサン商店『ウルトラマン』登場
〈第三夜〉 マルサン商店『ゴジラ』登場
〈第二夜〉 『マイ・ファースト・ウルトラマン』
〈第一夜〉 増田屋「ウルトラQ手踊り」『ペギラ』『ゴメス』登場
→
|