園長　ペリプラ葉古

その17−トカゲ

路上で日光浴をしている動物がいます。
そう、あれはトカゲ。
子どもの頃、よく捕まえて遊びませんでしたか？

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夏休みの頃、石垣の上や舗装道路の上で
トカゲが日向ぼっこをしている姿をよく見かけた。
直射日光が肌に痛いようなくそ暑い昼間にも、
やけた地面が気持ちよさそうにでれっと体を投げ出していた。
あんな無防備な生き物なら簡単に捕まえられるに違いない。
そう思って、そろりそろりと近づいてはぱっと手を出す。
あわれトカゲは子どもの手の中。
……のはずが、大概は逃げられていた。
ぴょんぴょんと踊り跳ねる尻尾だけを残して。

株式会社ユージンのガチャ
「原色爬虫類トカゲ図鑑」より

いまでもニホントカゲは島を除く日本各地で普通に観られる。
幼いニホントカゲははっとするほど美しい。
頭から胴体が暗色で、金色のストライプが5本走っている。
尻尾はメタリックな輝きを帯びた鮮やかなブルーである。
長じるにしたがって色褪せていき、
完全な成体はねぼけたような褐色になってしまうのだが、
てらてら光るむっちりした皮膚が妙になまめかしく目に映る。
トカゲというときにどこか淫靡な響きを感じるのは
成体の皮膚を思い出すからであろうか。
漢字で蜥蜴などと書くとその蠱惑度はさらにアップする。
こうなると妖艶な江戸川乱歩の世界である。

株式会社ユージンのガチャ
「原色爬虫類トカゲ図鑑」より

実際のトカゲは妖しくも艶っぽくもない非効率な動物である。
夏でも日向ぼっこをしているのは、
ああやって体温を十分に高めないと素早く動き回れないのだ。
日光浴中はいわば充電状態。
あんなにしばしば充電が必要ってことは、
一昔前の携帯電話と同じでとてつもなく効率が悪い。
敵に襲われたときに尻尾を切って逃げるというのも、
画期的な逃走戦術のようで、よく考えるとロスが多い。
体の半分近くを占める尻尾を毎回捨ててしまうということは、
いくら再生可能とはいえ、資源を随分無駄にしている。
その分のエネルギーを他に回したほうがずっと効率的だろう。

すべてを効率で割り切ってよいのかと反論しているあなた、
子どもたちからおやじくさいなんて罵倒されていませんか？
ほら、脂ぎった肌のてかりがどことなくトカゲっぽいですよ。
もしかしてリストラの憂き目に遭われたのではないですか？
会社のためにと頑張ってきたのに、気がついたら肩たたき。
それこそトカゲの尻尾切ってやつですか。
いっそトカゲになりきって日がな一日、
日向ぼっこでもしてみてはいかがでしょうか？
意外と素敵な人生が見えてくるかもしれませんよ。

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【トカゲ】
爬虫類の有鱗目トカゲ科の動物は日本に10種類以上いるとされるが、
本土で普通に見られるのはニホントカゲのみ。近縁のカナヘビ科の
ニホンカナヘビのことをトカゲと呼ぶこともあるが、こちらは全身
茶褐色で皮膚が乾燥しているので簡単に見分けることができる。

2003年７月24日更新
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