そろそろあちこちでにぎやかなお祭りの音が聞こえてくる季節になりました。
お祭りには色々な屋台が出ており、今は食べ物中心だが、昔は鉄砲や俵ころがし、水中花にほうずきと、小物玩具も結構売っていたものだ。
テレビが家庭に浸透してからは、子どもらの遊びはテレビで流行していた番組に拠る所が多い。時代劇が隆盛だとチャンバラ遊びがはやったり、力道山が全盛のころはプロレスごっこがあったりと。昭和四十年代前半は、西部劇を真似たのか、銀玉鉄砲によるファイトが多かった。
忍者モノのアニメが流行っていた時は、やはりその手のものが縁日で売っていた。吹き矢である。標的に向けて筒から「プウーッ」と思いきり空気を吐き出すと弾が飛ぶ。一番安い弾は新聞紙やチラシを円錐に丸めたものである。漏斗状の新聞紙は空気をはらんで飛んで行く。先端がとんがらないとダメだから、紙の厚みのある折り込み広告の方がいい。これだと紙質が固くて威力が増す。
対するマトは弓道場で使うような、中心が赤丸の三重の同心円。四隅に「天下太平」と筆文字で書いてあり、裏側につけた割り箸で、畳のヘリの隙間に立てる。
吹き矢の本体はプラスチックで、水色や赤など各種の色や長さがあり、吹き口には銀紙が張ってある。この銀紙が口の中に入るとなぜか電気が流れてピリリとしびれちゃう。吸盤付きのプラスチックの弾も三本ついていた。黒い吸盤を唾で湿らせると、真空の原理で紙マトにピッタリと吸い付くのだ。
光文社の「少年」の付録にも「サスケの吹き矢」がついたことがあった。筒だけの実に簡単な玩具だが、縁日の商品の中では、とても高かったと記憶している。今は見かけることはない。忍者ブームが去ったこともあるが、新聞紙の弾の先端に縫い針をくっつけ、板などの的に突き刺さる遊びが危険視されて廃れていったようだ。
玩具や食品の安全性を考えるようになったのは良いことだろうが、「たまごっち」や「プリクラ」では縁日の屋台の玩具になりにくい。少子化で集団遊び自体が滅びつつあるこんにち、忍者・西部劇・スパイ・探偵などの「ごっこ遊び」が復活する日を夢みるオジサン「時代遅れ〜」なのだろうか。
空洞の筒を「ホー、ホー」と吹いたときに残る両頬の感触をいまでも覚えている。
●「毎日小学生新聞」を改稿
2003年8月28日更新
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