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田端宏章

第19回 タバコの王様ピース美術館
 その4 (モダニズムデザイン 篇)


タバコの王様ピース ここのところ、記念ピースのパッケージを特集しておりますが、今回は最終回ということで、ハイセンスなモダニズムデザイン篇をお送りしたいと思います。今までに取り上げたピースもセンスの良いものが多かったように思いますが、今回はシンプルでセンスの良いピース記念物を取り上げます。
 ところで、このピース、一時は売上の不振から発売中止になりそうだったことがあるのです。1948年(昭和23年)7月のこと、今までの定価から10円も引き上げたために売上がガタ落ち。同年11月には一時製造が中止になりました。さあ、困った専売局、さんざん考え抜いた結果、温泉旅行の当る「温泉くじ付きピース」を12月に発売。また、「ミス・ピース」というミスコンを企画して、ピースに投票券を添付して発表会まで行いました。その結果、苦労の甲斐あってか12月には30億円を売上げ、100本入り贈答用ピース売り切れストック無し、と好成績を納めたのです。そしてついに翌年1月には製造が再開されたのでした。いつの時代も販促企画って重要なんですね〜。
 では、今回も美しいデザインのピースを取り上げたいと思います。


「アルコール専売事業25周年記念」(1962年発売)

「アルコール専売事業25周年記念」アルコール専売法という法律が1937年(昭和12年)3月から2001年(平成13年)3月末まで施行されていました。当初は、「飲料への不正使用防止による酒税の確保」などを目的にアルコール専売法が制定されました。その後、戦後を経て社会に合致した形でアルコール専売制度が実施されました。これは産業政策的観点と国家財政的観点から見いだされた制度で、「工業用アルコールの低廉な価格で安定的な供給の確保」、「工業用アルコールの酒類への転用防止による酒税の確保」を目的にしていました。1999年(平成11年)4月に規制緩和や行政のスリム化等の促進を図るため、アルコール専売事業の民営化が閣議決定されました。そして、2001年(平成13年)3月末日をもってこの法律は廃止されました。そんな制度の25周年を記念したピースには、原子モデルのようなイラストに丸底フラスコのシルエット、そしてアルコール製造機と思われる機械のイラストが描かれています。60年代の商品パッケージのセンスの高さが解る逸品です。


「第4回東京国際見本市記念」(1961年発売)

「第4回東京国際見本市記念」1961年(昭和36年)の4月17日から5月7日に東京・晴海埠頭で第4回東京国際見本市が開催されました(記念すべき第1回の開催は、1955年(昭和30年)の5月5日でした)。この第4回見本市では、松下電器産業が国産初の燃料電池(30W)を発表したり、世界28カ国が参加するなど、多くの話題を呼んだそうです。この見本市を運営している「東京国際見本市協会」は、日本の高度成長時代の初期にあたる1956年(昭和31年)、産業の発展や国際親善を目的として、東京都などによって設立された社団法人です。協会は当初、中央区晴海に所有する展示会場で、自身が主催する見本市や、第三者が主催する各種展示会の運営を行ってきました。そして1995年(平成7年)、江東区有明に完成した東京国際見本市会場の管理運営を受託し、翌1996年(平成8年)に「東京ビッグサイト」を開業しました。そんな見本市の第4回目を記念したピースには展示ブースを表現したと思われる矩形が美しい配列でデザインされています。


「航空博覧会記念」(1963年発売)

「航空博覧会記念」航空博覧会は、1963年(昭和38年)3月16日から5月31日まで、東京都世田谷区にあった「二子玉川園」で行われました。自衛隊機の航空ショーや野外展示の他、格納庫のような屋根付き施設の中に「飛燕」「アンリファルマン」などの航空機が展示されたそうです。その時の航空ショーを描いたのでしょうか、箱には3機の自衛隊機とおぼしき航空機と、野外展示されてたとおぼしき「アンリファルマン機」だか「ライト兄弟の発明した飛行機」だかの飛行機が描かれています。空への憧れが感じられるデザインです。


「東京-京阪神ダイヤル通話完成記念」(1964年発売)

「東京-京阪神ダイヤル通話完成記念」
「東京-京阪神ダイヤル通話完成記念」

東京オリンピックの開催された年である1964年(昭和39年)は、電話業界にとって大きな変革が起きた時期でした。前にも紹介しました「東京−全県庁所在地 ダイヤル通話完成記念」ピースはこのピースの1年後の発売ですから、それに先立って東京-京阪神間のダイヤル通話が完成したようです。箱の裏には「東京03 名古屋052 京都075 大阪06 神戸078」という市外局番がデザインされています(図版参照)。エメラルドグリーンに白抜きの日本国土、黄色のロゴに銀色のラインなど、特色による美しい配色が魅力的です。


「自治体消防15周年記念」(1963年発売)

「自治体消防15周年記念」自治体消防制度は、1948年(昭和23年)3月7日、「消防組織法」の施行に伴って発足しました。自治体消防制度の原則に基づき、それぞれの消防機関が、独自の立場で業務を執行することになったため、発足直後からそれまでの消防と異なり、四散分離することを危惧する声が数多く起こりました。このことを受けて同年9月30日、大阪市で開催された「七大都市消防長会議」の席上において、七大都市(東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡)の消防長が設立発起人となって、全国都市消防長連絡協議会の設置についての趣旨書と規約案の検討が行われ了承されました。その15周年を記念するピースは、消火ホースで炎を囲ったモダンなデザイン。消防のシンプルなヴィジュアル化に成功しています。


「たばこ製造専売60年記念」(1963年発売)

「たばこ製造専売60年記念」わが国におけるたばこ専売制度は、1989年(明治31年)から葉煙草専売法が施行されていましたが、1904年(明治37年)に日露戦争の軍費調達のため、製造専売を含む「煙草専売法案」が帝国議会に上程されます。そしてその際、英米たばこトラスト(BAT社)から民族資本を守るという大義名分が加わって同法案は成立し、以後80年間続くたばこ専売制度がスタートしました。第2次世界大戦の終戦後は、戦後改革の中で「公共企業体」として、日本専売公社が設立されました。その後1970年代に入り、貿易の自由化、経済の国際化が進む中で、たばこ多国籍企業群からのたばこ市場開放要求が強まり、ついに専売制度は1985年(昭和60年 )に廃止されました。まだ専売公社の時代にその制度60周年を記念して出されたピースは青バックに白い煙草の横棒一本、そして煙を表現した赤い渦巻き模様がデザインされています。この模様は60の文字を表現しているように思われます。


 というわけで、4回に渡って「記念物ピース」の特集を組みました。いかがでしたでしょうか?1960年代頃にはデザイン的に優れたピースがこんなに沢山あったんですね。今も同じようなデザインで復刻モデルを発売してくれないでしょうか?JTさん、お願い致します。出れば必ず買いたいと思います。また、機会がありましたら、別の記念物ピースをご紹介したいと思っております。長々とおつきあいいただきありがとうございました。ピース!(Vサイン)

(たばた ひろあき 非平和主義者?)


2003年7月12日更新
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