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「蕩尽日録」タイトル

「アンダーグラウンド・ブックカフェ 地下室の古書展」

6月某日 本ノ街・神保町ノ
「本丸」デ古本ヲ熱苦シク語ル事

南陀楼綾繁

写真:藤城雅彦(EDI)


 昨年末、神保町の古書店「西秋書店」さんから、書物同人誌「sumus」(http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/5180/)の展覧会をやりませんか? と声をかけられた。彼らが東京古書会館の地下で開催する「アンダーグラウンド・ブックカフェ 地下室の古書展」にあわせて、二階の展示スペースを提供するとおっしゃるのだ。春に出るコトになっている「sumus」12号の特集が「小出版社の冒険」なので、そこに出てくる本を展示すれば……と、トントン拍子にハナシが進んだ。〔古書展は「展覧会」と称されることも多いが、ココでは「アンダー〜」は古書展、「sumus」の展示は展覧会でハナシを進める〕

 古書会館といえば、全国から古本屋さんが取引のために集まる、本の街・神保町の「本丸」みたいなトコロだ。そこに、プロではないただの古本好き連中が乗り込んでいくのも一興ではないか。6月開催というコトだったが、その時点では、「sumus」の締め切りもまだ先であり、ま、ナンとかなるだろう、という(いつもの通りの根拠なき)楽観もあった。

 しかし、月日の過ぎるのは早い。たちまちのウチに4月となり、「sumus」の原稿も(大幅に遅れつつ)ナンとか書き上げたあたりから、やっと具体的な準備に入った。「アンダー〜」のヒトたちは告知用のblogを立ち上げたり、配布用のフリーペーパーをつくりはじめた。その進行を眺めつつ、京都にいる林哲夫さんと連絡を取りながら、展示の内容をツメていった。初日にはトークイベントを行なうことも決まった。「sumus」関係の出版物や付き合いのあるミニコミに声をかけ、会場で販売することにした。

書物同人誌の展覧会

 そして6月12日。開催の前日だ。上京してきた林哲夫さんをはじめ、松本八郎さん、荻原魚雷さん、生田誠さん、EDIの藤城さんたちと会場設営を行なう。最初は古本屋さんたちも手伝ったが、地下の「アンダー〜」でも本を並べる仕事があるので、同人だけで作業を行なう。生来の不器用・ずぼらであるぼくは、適当に並べれば何とかなると思っていたが、画家で「sumus」の編集制作も行なっている林さんは、本が変な風に置かれていたり、キャプションが曲がっていたりするのが我慢できなくて、ホトンド一人でやってしまった。そこで、ぼくは販売物を並べたり部数をチェックしたりする。8時頃終わり、明日の成功を祝ってビールで乾杯する。

 しかし、ウチに帰ってもまだ眠るワケにはいかない。明日会場で配布するつもりの「モクローくん通信」がまだ出来てないのだった。版下はできたが、旬公がマンガを描くのを待ってるうちに眠ってしまう。今回はあきらめるかと思ったが、朝にはマンガか完成していたので、急いでコピーを取りにいく。今回は「まるごと月の輪書林特集」と称して、いつもの倍(といっても2枚ですが……)にしたので、折る手間も倍かかる。タクシーの社内でも折るが、ゼンゼン終わらない。古書会館に到着し、展覧会場に入ってから、知ってるヤツを数人捕まえて、代わりに折ってもらう。その合間に、この日になんとか間に合った、ぼくのエッセイ集『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)をお買い上げの方にサインしたり、トークの設営をしたりと、ナカナカ忙しい。

トークイベント

 次第にヒトが増えてざわざわしてくる。3時にトークイベント開始。30席ほど用意した椅子は全部埋まり、立ち見の客も後ろにたくさん。目の前に月の輪書林の高橋徹さんと坪内祐三さんが座られていて、緊張する。全部で60人ぐらいか。あとで聞くと、見られそうもないので帰ったヒトも数人いたらしい。出演者は、林哲夫、岡崎武志、生田誠、荻原魚雷、松本八郎(歯槽膿漏が悪化して、この日はマスクを掛けていた)、そして南陀楼綾繁。司会は「なないろ文庫ふしぎ堂」店主にして、「彷書月刊」編集長の田村七痴庵さん。ひょうひょうとした進行ぶり。企画の段階で思いつきで決めてしまったテーマは、「こんな古本屋が欲しい!」だったが、最後にちょっと話しただけ。あとは「sumus」の内輪話に終始したが、でも、けっこう受けていたのでヨカッタ。

 休憩をはさんで、「振り市」、つまり古本のオークションだ。同人が用意してきた本を田村さんが振ってくれる(岡崎さんだけは自分で振った)。生田さんが出した十数点はいずれも珍しく、壇上にいるぼくも思わず振りに参加。最近注目してる雑誌『月刊TOWN』の数号分とか、麦書房の雑誌『本』の揃いなどが欲しくて、かなり値段をつり上げたが、かならず上乗せしてくるヒトがいて(しかも、知り合いだから余計ハラ立つよなあ)、ほとんど落とせず。

振り市

 振りの精算などを終えると、6時近くになっていた。三省堂書店の地下にある〈放心亭〉での打ち上げに合流。さらに9時からは古書会館8階での打ち上げ、さらにさらに近くのカラオケボックスで終電まで。ウチに帰ると、身も心も芯から疲れ、ぐったりと眠ってしまう。翌朝起きると、ナンと声が出ない! いくら叫んでも変質者の囁きぐらいにしか、相手に通じないのだ。コレには参ったね。みんなからは「カラオケ歌いすぎたせいでしょう」と冷やかされたが、あの日は一曲しか歌ってなかったのだ。数日後、いっこうに治らないので医者に行ったら、「声帯の炎症」だと云われ、抗生物質を飲んだら声が出た。展覧会は盛況で、物販の売上も多かった(三日で17万円)けれど、個人的にはダメージの大きい一日でした。


2004年7月30日更新
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