第20回 正しい観光地ミヤゲ
(その1 埼玉・吉見百穴 篇)
日本の観光地には数多くのおミヤゲ屋さんがあり、沢山のミヤゲモノが売られています。しかし、最近のミヤゲモノのレベルは低く、眉をしかめたくなるようなモノばかりで、吐き気がします。某ファンシーグッズ会社の猫のキャラクターがあしらわれたグッズばかりが並び、また80年代の原宿に売っていたようなヤンキー向けのグッズがミヤゲ売場を占拠しており、各観光地の個性というものが無くなっています(「ご当地もの●●ィ」なるものも出ているようですが、そこには金儲けや便乗の匂いしか漂っていないように思います)。おミヤゲとは、本来、もっと楽しいものでは無かったか、もっとチープなものではなかったか、もっと愛らしいものではなかったか。そんな原点に立ち返り、今も買える日本の「正しいおミヤゲ」を探してみたいと思います(あえて食べ物ミヤゲははずします)。ちなみにこのコーナーは、みうらじゅん氏の「いやげ物」とはちょっと趣旨が違い、ミヤゲ物に「愛」があります(笑)。
今回、日光、奈良、京都、東京タワー、浅草などの王道観光地のミヤゲは、他のメディアでも取り上げられることも多いのであえてはずし、マイナーではあるけど、今も「正しいおミヤゲ」を売る「正しい観光地」のミヤゲモノ達を取り上げます。第1回は、埼玉県比企郡吉見町の「吉見百穴(よしみひゃくあな)」です。
吉見百穴は大正12年(1923)に、わが国の代表的な古墳時代の横穴墓群として国の史跡に指定されました。横穴墓は、丘陵の岩盤を横に掘ってお墓としたものです。横穴墓は5世紀末から6世紀にかけて北九州に出現したもので、7世紀頃までには東日本に進出しました。吉見百穴の確認総数は237基ですが周辺地域は森林に覆われており、埋蔵されている百穴の存在は否定できません。昭和20年(1945)の終戦直前には、吉見百穴とその周辺の丘陵地帯に飛行機の部品を製造する目的で、大規模な地下軍事工場が造られました。現在でも直径3メートル程の開口部を持つ洞窟として軍事工場の痕跡を残しています。また、この百穴の中には「ヒカリゴケ」というコケが自生しています。ヒカリゴケはコケ類の一種であり、緑色の光を放出しているように見えるところから、この名がついています。ヒカリゴケの生育には、一定の気温と湿度を保つ環境に恵まれることが必要で、この条件に合った吉見百穴の横穴墓内にはヒカリゴケが自生しています。ヒカリゴケは一般的に中部以北の山地に見られますが、関東平野に生育していることは植物学上極めて貴重なのだそうで、国指定天然記念物となっています。
私は過去に3回ほどこの百穴を訪れていますが、いつも人はまばらで、なんだか寂しい感じがしました。しかし、桜の名所として知られているため、4月ともなれば、近隣はおろか遠方より老若男女が大挙するそうで、まだまだ場末の観光地と呼ぶには早いようです。この穴のいくつかには実際に入ることも出来ますし、この百穴の山の上に昇ることもできます。そして山頂にはちゃんと「みはらし売店」なるミヤゲ屋があります(笑)。そんな百穴にはおミヤゲ屋さんが全部で4軒存在しますが、そこでゲットした百穴グッズ達をご紹介いたします。
1.百穴ペナント型しおりセット
これは、百穴入口の手前にあった『岩窟ホテル(この辺に住んでいたおやじが江戸時代から3代かけて掘った洞窟。ホテルとは、近所の人々が、岩窟ほってる!、と言っていたことに拠る)』前の『岩窟前売店』にありました。すでに最後の1セットで、ホコリをかぶっていたため格安で購入できました。しおりをペナント型にするというアイディアも良し、一つ一つのペナントに描かれている名所が細かすぎる(中央道路とか洞窟内部とか…)のも良し。ペナントがまだおミヤゲの王道であった時代を思い起こさせる逸品です。しかし、一体どれくらいの量が売れたのでしょうか?
2.吉見百穴 BEAUTY CARD
全国の観光地には必ずある「風光社」の絵葉書セットですが、これは絵葉書よりも小さなカードセットです。おそらく70年代に製作され、デザインや写真はそのままだと思われます。微妙な版ズレ具合や、写っている子供たちの服装なんかに時代を感じます。しかし、吉見百穴なんてマイナーなスポットにもこの手のカードがあったんですね。今もたくさん売れ残っています。1セット150円也。
3.吉見百穴 特選カラーしおり
こちらもBEAUTY CARDと同じ会社が製作したと思われます。BEAUTY CARDよりさらに前の時代に作られたようです。昔のおミヤゲと言えば「しおり」は王道でしたが、今ではあまり喜ばれませんよね。この楕円型しおりはとてもかわいいのですが、少し大きすぎるのが難点です。薔薇の絵や原色のふちどりが大味な感じでとてもステキなのですが、写っているのは横穴のお墓。うーん、シュールすぎる。5年前に購入しましたが今も大量にあります。1セット350円也。
4.吉見百穴キーフォルダー
金属製で丸いキーフォルダーもあったのですが、あえてこの写真のバージョンを買いました。こっちの方がなんだか親しみ易くて…、この飾らない感じがとても良いです。希望を言えば、裏面は同じような写真ではなく「ヒカリゴケ」にしてほしかったです。おそらく80年代に作られたものでしょう。1ケ350円也。
5.吉見百穴ペナント
出たー!観光地ミヤゲの元横綱「ペナント」。まさか百穴にもこのシリーズのがあったとは。ちゃんとヒカリゴケも岩窟ホテルも載っています。特選カラーしおりとBEAUTY
CARDとペナントは、ともに同じメーカー作と思われます。このペナント、今から5年前に行った時に購入しましたが、最近行ったら店頭にありませんでした。まだ倉庫には眠っているのかも…。たしか300円〜500円くらいの値段でした。
この他、ハガキセット、お約束の百穴饅頭、百穴せんべいなどもありました。
日本にはまだまだ面白い観光地があります。ステキなミヤゲ物があります。そんなミヤゲを求めて日本中を彷徨い歩きたいと思います。次回は、日本が誇る鍾乳洞『山口・秋吉洞』です。お楽しみに!
(たばた ひろあき 日本の正しいミヤゲ物を復活させる会 準備室々長)
2003年8月15日更新
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