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「あやかし動物園」タイトル

スズメ

園長 プリペラ葉古

その21−スズメ


チュンチュンと耳なじみのある声がします。
そう、スズメです。
どうしてわざわざスズメなんか飼っているのでしょう?

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ちょっと記憶を探ってみてほしい。
ここ最近、スズメの姿をご覧になっただろうか?
頭と背がこげ茶色で頬に黒い斑点のあるあの小鳥だ。
どこにでもいるありふれた鳥という印象のスズメだが、
都会に暮らす人にとっては、なかなか見づらくなった。
ご存知のとおり、スズメは米が大好物。
だから水田が身近にあった時代にはスズメは普通だった。
しかしいまや都会の近くでは田んぼなんて見なくなった。
必然的にスズメを見る機会も減ったわけだ。
遠からぬ未来、珍鳥になっている可能性がある。

スズメ

日本人の生活様式の変化がスズメを郊外へ追いやった。
原因は日本人のお米離れである。
「やっぱ朝食は米よりもパンよね」
なんて人々が増えて、米の地位が落ちた。
「都会の近くの田んぼは住宅地にしたほうがいいさ」
という意見が通り、都市近郊から稲作農家が消えた。
「苦労して稲を育てるよりも野菜や果物がもうかるよ」
とかいう噂で、農民も米を一生懸命作らなくなった。
加速度的に水田は姿を消し、都市化が進んでいる。

都市化により増えている鳥もいる。
その筆頭がカラスだろう。
人間の出す生ゴミに目をつけたカラスは増えるばかりだ。
ハトやカモも増えている。
人間が甘やかして餌をあげたりするので味をしめたのだ。
実はタカ類も都会で増殖中だ。
野生をなくしたのろまなハトやカモが彼らの餌となる。
これらの鳥とは正反対に、スズメは数を減らす一方。
生活圏を奪われたうえ、都市進出にも失敗したのだ。

日本がダメなら外国に行くという手も残っているのでは?
中国や東南アジアではいまでも水田面積は広いわけだし。
でもその選択肢は“逃走”を覚悟する必要がある。
向こうでは良質な蛋白源として食べられてしまうのだから。
それではアメリカに移住するのはどうか?
カリフォルニア米があるし、そもそも米国というわけだし。
でもその選択肢は“闘争”を覚悟する必要がある。
向こうにはイエスズメという強敵が先住しているのだから。
そもそも渡りの習慣を持たないスズメに、渡航は荷が重い。

人家に巣を作るスズメは昔から日本人に親しまれてきた。
「舌切り雀」に見られるように小さな悪戯者の代表として。
同じ人家に営巣する鳥でも律儀者のツバメとは扱いが違う。
それでもわれわれ日本人はスズメを愛してきたはずだ。
無自覚のまま絶滅へと追い込んでよいのか?

スズメ

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【スズメ】
ヨーロッパから東アジアにかけて広く分布する本種は、英名でTree
Sparrowと呼ばれる。ヨーロッパやアメリカなどにはより大型のイ
エスズメ(House Sparrow)が分布しており、両種が競合するヨーロッ
パなどではスズメは人里を追われ、森林に生息している。


画像提供は今泉洋さんです。


2004年3月10日更新
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