「まぼろしチャンネル」の扉へ
「番組表」へ 「復刻ch」へ 「教育的ch」へ 「東京カリスマch」へ 「日曜研究家ch」へ 「あった、あったch」へ 「再放送」へ 「ネット局」へ
ら〜めん路漫避行
まぼろし書店・神保町店
少女漫画 ふろくの花園
帝都逍遙蕩尽日録
定食ニッポン
駅前ガラクタ商店街
日本絶滅紀行
怪獣千一夜
秘宝館
掲示板
マガジン登録
メール
まぼろし商店街
まぼろし洋品店

「怪獣」タイトル

〈第二十一夜〉 『怪獣ソフビ道 作法習い』

鴻池綱孝


 ガチャガチャや、食玩、フィギュア収集。今でこそ、おもちゃのコレクションをしている人は、なんの後ろめたさも無いであろうが、ほんの5年前までは、裏街道バリバリのれっきとしたオタク趣味だったはずだ。インターネットの発達する以前は、雑誌『QUANT』が、おもちゃコレクターたちの情報インフラを担い、さらに遡れば、『かんの』なるミニコミ誌がコレクター同士をつないでいた、かなり閉じた世界だった。
 現在はインターネットの環境さえあれば、オークションでの、コレクター同士の過剰なる競り合いも高見の見物が出来よう。
 われら、怪獣ソフビコレクターを楽しく傍観するために、「怪獣ソフビ道」作法習いの基本を伝授しよう。

ユートム(マルザン製)
ユートム(マルザン製)132gでした。実際、赤のスプレーの吹きは素晴らしく、ってもうイイかぁ‥

ex.ユートム(マルザン製)

1.

「ほほぉ〜。うわぁ〜スゲ〜、マルザンじぁ〜ン!ちょっと持たせて!」と、手に取ると同時に、足裏を見る。手足の嵌着の緩みもあわせてチェック。

2.


「あー、やっぱ重いやズッシリくる。ブルとは、違うね〜。150gはあるね!」

3.


全体を見渡し、キズや割れ、補修暦などを確認しつつ、「赤の吹きもいいし、銀がスゲ〜残ってる!まるでミントだね!」

4.


とか発言しながら、ブツを鼻にくっつけて匂いをかぐ「あ〜やっぱ、いい匂いだなぁ〜」

5.


「ブルのもある?並べようよ〜」「ほら、やっぱ違うナ、ぜんっ!ぜん違う!デカイもん!」

ユートム(ブルマァク製)
ユートム(ブルマァク製)との対比。サイズ感、スプレー色の違い。こんなんが大事!

6.


「あの店だったら、絶対○○万円はするよ!」と、誉める。

《解説》

1.

マルザンは男の子用の人形をコレクタブルに発展させた初のメーカー。怪獣ソフビの始祖。まず、すべきは足裏を見ること。相手に失礼がないよう「なにげ」に見るのが礼儀。足裏にマジックなどによる所有者の記名などがあれば、その価値は著しく下落するからだ。ひっくり返す所作は「やきもの」の高台を見るそれに通じ、‥笑える。

2.


重さも重要なファクター。初期のものは肉厚でズシリと重い。それも年代とともに薄く軽く粗悪になっていく。その様は高度成長期の粗製濫造を映している。

3.


塗装のコンディションを指す。工場の塗装係のオッサン、オバハンが見本を参考に何も考えずにブラシで吹いた痕跡を、味わう。「やきもの」の焼成によって偶然に出  来る「景色」を語るようにして‥銀はアルミ粉で落ちやすい。
「ミント=ミントコンディション」とは、工場のラインから滑り落ちて来た様な状態をさす。いくらきれいでも、袋入りで保存されてでもいない限り、まずありえない。「レア」とともに乱用は野暮。 

魔人バンダー(オオタキ製)
魔人バンダー(オオタキ製)プラモデルメーカーが創ったソフビ。レア。あっ!言っちまった!

4.


実は、この匂いを嗅ぐ行為ではじめて「真贋」がわかる。これまでの所要時間は約30秒前後が理想か。一刻も早く嗅ぎたいのが心情。つまり当時の匂いがするかどうかを確認するまでは、100%本物であるか、まだ疑いがあるのである。
 贋物が横行している現在、懐かしいソフビの「香り」だけが時代の証人なのだ。(もっとも、筆者が京都の朝市で『魔人バンダー』を発見したときは冬の早朝で鼻が利かず、嗅いでも嗅いでも、わからなかったが‥)

ノスタルジックヒーローズ製
(ノスタルジックヒーローズ製・向かって右)の復刻品は数ある復刻品の中で、秀逸な出来映え。ゆえに本物を見る機会が稀なこやつの鑑別はむずかしい。鼻が利かぬ時は、首嵌着の違いで見抜け!

当時の材料は大抵、「コバゾール」といわれる、コバヤシという会社の塩化ビニールのゾルで、現在の材料とは全く違う甘く、懐かしい「匂い」がするのだ。もっともこの香りに懐かしさなど無ければ、「匂い」も「臭い」でしかないが‥

5.


ブルはブルマァク。マルサン倒産後に商品を引き継いだ会社。ユートムの場合、金型がなんらかの理由で引き継げなかった為、ソフビ製品から再びWAX原型をおこし、元型をつくった上、生産型(増し型)をしたため、元型使用のマルザン製品より、ふた周りほど小さくなってしまった。

6.


最後はやっぱり値段なのかよ。


 「やきもの」の例えを出してしまったが、芸術性を語るつもりの引用ではない。普段使いだった大量生産品「伊万里焼」が時代のいたずらで、「古伊万里」と呼ばれる鑑賞品へと変質しまった事に類似していると言いたいのである。
 元はただの玩具。これを忘れては、遊びにならない。
                                   つづく‥


2004年6月1日更新
ご意見・ご感想は webmaster@maboroshi-ch.com まで


〈第二十夜〉 『ジャミラ、クライ!』
〈第十九夜〉 「聖者が町にやってくる」
〈第十八夜〉 「キャプテンウルトラ」
〈第十七夜〉 「ウルトラマンが逝く」
〈第十六夜〉 「ゴメス とポリバケツ、怪獣と母」〈投稿文)
〈第十五夜〉 「怪獣のネーミング」(Part1)
〈第十四夜〉 エビラの勝ち目なき戦い(投稿文)
〈第十三夜〉 運命の塔
〈第十二夜〉 わたしのモゲラ様(投稿文)
〈第十一夜〉 怪塔、現る(part2)
〈第十夜〉 怪塔、現る(part1)
〈第九夜〉 すべての怪獣ブーマーへ告ぐ!
〈第八夜〉 大魔神の学習
〈第七夜〉 「レッドキングでダダ」
〈第六夜〉 マルサン商店『エビラ』『アントラー』『ガボラ』登場
〈第五夜〉 セメント怪獣
〈第四夜〉 マルサン商店『ウルトラマン』登場
〈第三夜〉 マルサン商店『ゴジラ』登場
〈第二夜〉 『マイ・ファースト・ウルトラマン』
〈第一夜〉 増田屋「ウルトラQ手踊り」『ペギラ』『ゴメス』登場


「カリスマチャンネル」の扉へ