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第3回 わが地下街での定食史(2)
…横浜駅西口地下街(ジョイナス)「鉄板焼 らんじゅ」 |
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ふとしたきっかけで、横浜の大学に入学することとなり、1986年4月に上京した。ヨコハマ(カタカナ表記がポイントです!)の大学だから、アーバンライフとまでは行かないまでも、それなりの洒落た街並みを期待していた。しかし私の入学した大学は、相模鉄道という、首都圏とは思えないほど、実にローカルな路線に位置しており、最初はわけもわからないままに、その相模鉄道の星川という、名前ばかりはロマンチックだが、実際は駅のそばにこんにゃく工場があって、こんにゃくいもを蒸すにおいが満ちているという実に泣けてくるほどアーバンな場所に住むこととなった。おまけにその星川のアパートが、アパートの前が交通量の激しい道路、後ろは相模鉄道がのべつまくなしに走り、さらに窓をあけると踏み切りがカンカンなるという、もはや地獄を通り越して前衛的ですらあった立地だった。何しろ、トイレで小便をしていると、窓ごしに相模鉄道の乗客と目があうという親切設計だったからね。
そんなもんだから、アパートにこもっているのがもういやでいやで、大学図書館で本を読んでいるか、街をぶらぶらしていることが多かった。しかし、星川は横浜とは名ばかりの灰色の街。しかたがないので、90円出して(当時)相模鉄道にのって横浜駅に向かったのだった。
ところで横浜駅というのは、西口と東口の二つの文明ゾーンにわかれていて、相模鉄道は西口に到着する。その西口というのが、ダイヤモンド地下街、ジョイナスなど巨大な地下街が複雑に交錯していて、四国松山の単純明快な「まつちかタウン」しか知らなかった私にはめまいすら覚える代物だった。生物と機械が溶け合うマンガで有名な諸星大二郎の作品のなかで、サラリーマンが巨大な地下街で地上に出れなくて、迷子になり、何日もかけて上へ上へと上がり続けていると、いつしか高層ビルの屋上に出てしまう…というのがあったが、まさにその世界だった(「地下鉄を降りて」・集英社「夢みる機械」収録)。
ただ、地下街というのは、地上の街にはない人工的につくられたはなやかさというのがあり、迷宮に慣れてしまえば探検のしがいのある場所であった。さて、そんな地下街のなかでも、お気に入りだったのが相鉄ジョイナスの「らんじゅ」だった。ここは鉄板焼きの店なのだが、昼も夜も定食仕様のセットを出してくれる。
大学1年のときから愛食しているのが昼の「らんじゅランチ」。ハンバーグ(冷凍ではない。荒挽肉。よく焼かれている)、チキンソテー、サラダ、そして独特の太麺の焼きそば(これが滅法うまい!)そしてライス、スープ、さらにはアイスコーヒーまでついている。余談だが、洋食系の店で、ときたま、コーヒーがおまけでついてくるけど、なぜかアイスコーヒーしか選択できないという事例がまれにあるが、これは一体どういうことか(ちなみに、神保町のまんてんのカツカレーもアイスコーヒーがついてくるよな)。多分、せっかちな客たちの多い場合の、サービスなのかなとも思うのだが。確かに「らんじゅ」もそんなに客の滞在時間は長くはないようだ。
さて、このような充実のメニューがなんと600円程度で食べられるのだった。値段も昔からそれほど上昇していない。
それでも、大学1年の頃は、ここでランチを食べるのは、バイトでお金が入ったときや、黒崎や海老名など(ともに畸人研究学会同人)友人と昼飯を食べようといったやや特別なときだけだった。しかし、おじさんとなった今は、普通にランチとして食べられる。「思えばエラクなったもんだ」と内心ほくそ笑みつつ、ハンバーグを食べていると、カウンターの隣に座った同年配の野郎も、生ビール片手に、鉄板イカ焼き食ってにやついていたのだった。
2003年8月6日更新
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