その50 アンティーク家具を使ったブックカフェで…の巻 |
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「どこかで見たようなマッチラベルだなぁ」
吸い込まれるように、ディスプレイされているところへ近づいていきました。
「やっぱり」
案の定、チェコのマッチラベルです。私が知らなかっただけで、もしかしてチェコのマッチラベルってすごく有名だったのかしら? そんなことをブツブツ思いながらまわりを見回すと、古い一軒家の1階に、フランス、イギリス、アメリカなど世界の国々からやってきた古い絵本を中心に、タグワ椰子の実でつくられた小鳥のブックスタンドや、時代を感じさせるぬいぐるみ、食器やボタンなどのアンティーク雑貨と、手づくりのお人形やポストカード、アクセサリーが、とても可愛らしくディスプレイされているのです。それもアンティーク家具に飾ってあるので、古いモノ好きな私は、ドキドキしてきました。こんな可愛らしいお店が東京・神保町にできてしまったのです。ちょっとビックリです。店名は「AMULET」。
http://www.mecha.co.jp/cocodeco/。 |
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昔出版社だったという一軒家に入ったAMULETは、鎌倉から引っ越してきたそうで、なんでも『SORTIE』(糖衣社)という、フランスのことをいっぱい紹介した雑誌の編集部が運営しておられるとか(手づくり、やりくりをテーマにした『くりくり』も発売中)。
本にこだわりのあるAMULETには、お店に似合うミニコミ誌が並んでいます。ここで出会ったのが、古本と雑貨の冊子『いろは』です。2003年に創刊されて現在3冊でています。44ページのオールカラーという体裁で、市川慎子さんと小山晴香さんが、今気になっているもの、「なんだかすてきだなー」と思っている古本と雑貨と紹介しているのでした(近々新刊がでると聞きました)。
たとえば、随筆家・森田たまさんの本。森田さんが大好きな着物で装丁したという書籍は、見ているだけでうっとり。骨董や民芸品も紹介されていて、刺し子や益子焼の器、陶芸作家の吉村和美さんがつくられた入れ子の器などは、紫など独特な色合いといい、使いやすそうだなぁと思い、私も欲しくなりました。とにかく写真はもちろん、デザインも美しい素敵な冊子なのでした。後日市川さんは、インターネット古本書店『海月書林』の店主でもあり、著書に『海月書林の古本案内』(ピエ・ブックス発行)もあると知りました。今までにない古本案内で、おもしろかったです。 |
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話をAMULETにもどしまして、2階はブックカフェになっています。入った瞬間、懐かしい気持ちになりました。古い家具たちが、自然な感じで並んでいるんです。使い込まれたテーブルや白い籐の椅子たち(…だったのですが、木製の椅子に変わりました)。それぞれのテーブルには、アンティークの小さなビンにさりげなくお花が活けてあって、手づくりのあたたかい空気がいっぱいという感じ。1人で座ってキョロキョロしながらカフェオレを飲んでいると、日常生活と違う空間にいるみたい。嬉しくなってしまいました。
しかし、「縁」とは不思議と重なることがあります。
「写真を撮らせてほしい」とお店の方にお話した時に、目白に姉妹店があると聞きました。「ココドコ(COCOdeCO)」という店名だそうです(思わず漫画家・ひかわきょうこの、『女の子は余裕!』(白泉社)の中にでてくる定食屋の「いつものところ」とか、喫茶店の「適当なところ」、甘いもの・ぜんざい屋さんの「例のところ」を思い浮かべちゃいました)。なんとそのCOCOdeCOで「個展を開くことになりました」って、著書『チェコのマッチラベル』でお馴染み、南陀楼綾繁さん主催の『BOOKMANの会』でお会いしたハラゴメカエル作家・大橋あゆみさんから、案内状が届いたんです(その48参照)。もうビックリ。「これは姉妹店にも行かなければ!」いうことになり、11月5日、晴天の土曜日に行ってきました。「目白…。最近縁があるなぁ」って思いながら。
閑静な住宅街にあるCOCOdeCOは、大正時代に建てられた日本家屋で、アンティークの家具が並ぶ中に、手づくりの作品がたくさん展示されていました。その空間にお似合いのあかねさんは、まるで住人のよう。今回の個展は、雪の結晶とキノコ、お米を菊の花にデザインした手拭いが主役で、手さげ袋とポーチ、そして和本の表紙まで手拭いを使っていました。私は「米菊」の『けろうな』(ハラゴメ文庫)を購入。あかねさんの弟子?であるピンク色のカエル「けろ」が、ひょんなことから鰻になってしまうというお話に、「わかる、わかる」(なにがわかったかというと、けろへの気持ちです)と楽しんで読んだのでした。
ところが、COCOdeCOはこちらでの営業は2日後におしまいになりました。なんだかギリギリセーフで見にいけて、よかったなぁと思いました。
くわしくはこちらまで。http://www.haragome.com/index2.html。
しかし、これだけでは終わらないのが目白。吸いこまれるように、前回ご紹介した『布と玩具 Lunco』に行ってしまいました。今回で2度目です。すると、ほとんどお店にいないはずのランコさんがいて、「あすかちゃんとは縁があるわねぇ」と驚かれ、次々とやってきたお客さんと着物の話に盛り上がり、私は一風変わった帯を買ったのでした。
「この帯しめて骨董市行くぞー」
と決意して目白を後にしたのです。自転車で…。自宅までこぐこと50分。星のきれいな夜でした。
2005年11月11日更新
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その49 『Lunco』と『小さなレトロ博物館』、着物だらけの1週間の巻
その48 コルゲンコーワのケロちゃんと『チェコのマッチラベル』の巻
その47 「旧軽の軽井沢レトロ館にてレースのハンカチを買う」の巻
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その44 『セルロイドハウス横浜館』とセルロイドのカエルの巻
その43 奈良土産は『征露軍凱旋記念』ブリキ皿の巻
その42 ブリキのはがき函と『我楽多じまん』の巻
その41 満州は新京の絵葉書の巻
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