田奈弾薬庫専用線跡 その6

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これまでの記事:その1その2その3その4 その5 熱帯植物園の奥は急な坂道...というか崖とも形容したくなるような上り坂となる。 椿の森と名付けられ、無数に伸びる椿の木々の間を進む。急勾配なので、小道はジグザグに設けられ、それも人一人通るのがやっとだから、花が咲く時期はその見事さと引き換えに、危険を覚悟せねばならないだろう。 椿の森を抜けた先が、園内の最高緯度地点となる。椿園を見下ろすベンチが設けられているのか...にしてはコンクリートが朽ちて危険な状態だ。 これこそ、今回イサム・ノグチ作ともう一つのお目当て、高射砲の台座だ。
表面が崩れてはいるが、4つの柱はシッカリとした太さで、イカツイ出っ張りを今日に晒している。
台下は崩れ落ち、まるで空房のようだ。 中はどうなっているのか、カメラだけ突っ込んで撮影してみた。 が、やはりなにもないようで、石片が転がるのみだった。 60年以上前の建材の手触り。当時の人々の想いや場の空気が知り得ようもないが、その頃からここにあるものに触れることで、なにか感じられることは確かだ。 そんな感慨に耽りながら、再び椿の森を抜け帰路に着くと、普通に家族連れが通る通路脇に、枯葉にうもれてはいるが、コンクリート製の細かな段差を発見した。 その上部には、なにやらモノリス状態のコンクリの壁面の一部が露出している。
急な斜面を階段状に登れるように段差を付けているようだ。 恐らくこれも弾薬庫の一部なのだろうが、この脇に、境界石のように四角いコンクリの塊が一部露出しているのを見つけた。 そのすぐ隣には、先程の高射砲の台座のようなコンクリが横たわっていた。 弾薬庫の頭頂部ではないだろうか。急な斜面を削って弾薬庫にしたので、知らぬ間に屋上に登っていたのか。 すると、換気口のような穴が空いていた。
覗いちゃう? 覗いちゃうか!? 怖いけど、カメラだけ突っ込んでフラッシュを炊く。何が写っているか、感想は各自に委ねる。 なにが写っていただろうか。 なにもなかっただろうか。 見えたかもしれないし、ないのだからみえるはずもない。 ただ、当時よりの風が、中から吹いてきたように思えたのは...勘違いだろうけど...そう感じたことだけは確かだ。
【終】