おいちゃんは俺だ、森川信
三波春夫が〈国民的歌手〉であるならば、映画「男はつらいよ」(全48作)は〈国民的映画〉と呼んで恥じないだろう。このシリーズが、これだけ国民のあらゆる年代層に愛されて来たのは理由がある。勿論、寅さんを演じた渥美清の奮闘努力に負う点もある。また、脇を固めた沢山の個性的役者も忘れてはならない。
そんな中で、故郷である柴又の団子屋の主、おいちゃんも絶対に欠かせない一人だ。私の記憶に間違いなければ、8作まで森川信が演じていた。松村達雄や下条正巳も悪くはないが、おいちゃんは森川が適役であった。寅次郎が発するおかしみ、色気、洒脱さをがっぷり四つに組み止めて芝居をするのが森川である。銀行に勤めながら演劇を学んだ向上心、関西各地を転々としながらの舞台修行などが後年、大きく開花したと思う。
松竹ミュージカル「水戸黄門」や、「サザエさん」では、江利チエミのサザエの父親役でも知られる。
下町らしい伝法な口振り、それでいながらいつも甥っ子を思う優しさは、寅さんシリーズを見る楽しみの一つでもあった。戦前、踊り子と駆け落ちした痴話めいたエピソードは、この人の持つほのかな男の色気の土台でもあったか。
旅先を放浪して帰京する寅にとって、とらや(のちくるまや=jは、航海を終えた船の港にも似たものだ。そんな港を管理するのがおいちゃんの森川信であった。寅との掛け合いは、いつも映画館を大爆笑の渦に巻き込んでくれた。ただ叱るだけでなく、肉親の情とペーソスが、何気なく漂う役者でありコメディアンであったと思う。もっともっと長生きをして、山田洋次の時代劇にも出演してくれたら、また違ったこの人の魅力が発見されただろう。そんな森川信を見たいと思うのは私だけではないに相違ない。
生 : 明治45年3月26日
本名 : 森川義信
赤沢キネマの「肉弾三勇士」の死体役でデビュー。昭和18年松竹と契約し新青年座の座長となる。その後、岸井明とのろくろくコンビで活躍。
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2005年8月17日更新
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