その24−スズメバチ
さっきからブンブンと羽音が聞こえませんか?
威嚇するように周りを飛び回っているその大きな蜂。
近づかないほうが身のためですぞ。
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日本に生息している動物で一番人を殺しているのは何か?
すぐに思いつくのは北海道のヒグマや南西諸島のハブ、
あるいは近海まで来ることのあるサメなどだろう。
たしかにヒグマは怖い。
人間がまともに戦って勝てる相手ではないので、
運悪く出遭ったら天国行きの特急券を手に入れたも同然。
そうそうハブだって怖い。
やつらの毒は人の筋肉組織を溶かしていくので、
運悪く咬まれたら焼け火箸を刺されたような激痛は必至。
もちろんサメだって怖い。
馬鹿でかい口と鋭く尖った歯を持っているので、
運悪く同じ海域で泳いだ場合食われてしまう覚悟が必要。
でもまあ、ヒグマもハブもサメも、
スズメバチに比べたら可愛いものである。
ヒグマは爪の一撃で人間の筋肉を削ぐ。
ハブは毒の一撃で人間の筋肉を溶かす。
サメは歯の一撃で人間の筋肉を食べる。
どれも痛そうだけれど、死ぬことはあまりない。
さらにいえば、これらの動物とはめったに遭遇しない。
だからそんなに心配することはない。
熊、毒蛇、鮫による死者は数年に一例ぐらいなのだ。
一方のスズメバチはこうだ。
スズメバチは針の一撃で人間をひるませる。
そして、さらにもう一撃で人間の命を奪う。
いわゆるアナフィラキシーショック。
一種のアレルギー反応で2回目に刺されたときがやばい。
人によっては平気といってもどこにでもいるからまずい。
実際、蜂によって毎年何人もの死者が出ている。
特に危険なやつがオオスズメバチ。
体長は大きいもので5センチほどにもなる蜂界の横綱。
成型プラスティックめいた光沢のある山吹色の体には
太い黒色の縞模様がこれ見よがしに走っている。
本家のトラよりも見事な虎模様は警戒色で、
「オレは粗暴な性格なんだぞ、近づくんじゃねえ」
と、みずから宣言しているわけだ。
その筋の人がやけに派手なファッションを好むのと同様。
善良なる市民はうかつに近づいてはいけない。
さらにオオスズメバチは極端にキレやすく、
「オラオラ、勝手にオレの縄張りに入るんじゃねえ」
と、遠くから攻撃してくることもある。
その筋の人から理不尽な因縁を吹っかけられるのと同様。
善良な市民は決して目を合わせてはならない。
スズメバチに殺されたくない人が気をつけることは3つ。
第1に服装―蜂は黒いものに近づいてくる性質がある。
白っぽい服を着て頭髪も帽子で隠したほうが無難。
この点、はげた老人や茶髪の若者のほうが有利かも。
第2に行動―巣を見つけても絶対に触ってはいけない。
その筋の人達の事務所にけんかを売りに行くようなもの。
見て見ぬふりが得意な臆病なサラリーマンは有利かも。
第3に度胸―蜂が近づいてきても刺激してはならない。
必死に追い払おうと動くと逆に蜂を刺激することになる。
テロや戦争に鈍感な日本国民は案外有利なのかも。
スズメバチに殺されてもいいと割り切るのもひとつの手。
借金地獄の果てに首をくくるはめになったり、
交通事故や医療ミスで命を落とすくらいならば、
蜂に刺されてころっと死ぬほうが潔いと思うのは私だけ?
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【スズメバチ】
膜翅目スズメバチ科スズメバチ亜科のハチは日本に3属16種が生息し
ている。オオスズメバチは世界最大のスズメバチで土中に巨大な巣を
作る。長野や岐阜の珍味「蜂の子」はクロスズメバチの幼虫や蛹。
スズメバチの写真は、「都市のスズメバチ」の山内さまよりお借りしました。
「都市のスズメバチ」
http://www2u.biglobe.ne.jp/~vespa/
2004年9月28日更新
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