第21回 勢得蘇るよ…衛生廠ぉエイセイショー〜馬事公苑界隈戦跡巡り |
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年末といえば恒例、自著のミニコミ新刊が発表となる時期。今年末は世田谷の近代水道遺産・戦争遺跡を巡りながらB食を喰い散らかすという企画(詳細は文末へ)。まぁその紹介の意味も含め、今回は東京都23区は西の端っこ、なにかとハイソなイメージの付きまとう世田谷区の知られざる素顔、その一端を取り上げようかと。
世田谷区を南北にぶった切るように、世田谷通りが横断している。万年渋滞で知られる玉川通り国道246は渋谷方面から三宿を抜けた先、三軒茶屋で世田谷通りと分岐する。ここから西、世田谷通り沿いにはラーメン店が多く、ラーメン通りなんて呼ぶ向きもある。個人的にも想い入れのある店が多いのだが、そんな名店の数々をやり過ごしながらずーっと農大を越えた先、馬事公苑のそばに勢得というつけ麺屋がある。
以前は町屋駅からスグのところにあり、東池袋大勝軒やべんてんといったつけ麺の名店と同じ方向性を感じさせる、量の多い太麺とガッツリとダシの効いた甘めのつけ汁で一躍行列店と化した。その頃何度かお邪魔していたが惜しまれつつ05年の10月に閉店。しかし約2年後、こちらで復活を果たした。
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勢得
11:00〜15:00
月曜休
世田谷区桜丘3-24-4
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行列はなかったが、入店するとほぼ満席状態。こちらでも人気のようだ。以前と比べようとつけめん¥780オーダー。
300g超と一般的な量の倍以上の麺なので少なめにしてもらったが、かなり弾力が増した麺は、腰がきいおり、瑞々しく歯切れよく進化しており、あっという間に食べきってしまった。
つけ汁はより魚介系のダシの旨みがよく出ていて、香りもいい。動物系ダシのこってり感はあるものの主張は控えめで、ガツン!というより、満足感を持たせつつ、バランスよく仕上がっている。
スープ割りはその魚介スープを足して短冊切りサイズの白ネギを散らしてくれる。啜ると魚介の香りが鼻を突く。あっというまの完食だった。更なる進化は嬉しい限りだが、なかなか訪問しにくい場所ゆえ悔やまれる。しかしこの地で愛され続いてくれるのが望ましく、味・店の様子全てから大丈夫だろうと感じられたのが嬉しかった。
勢得を出るとすぐ馬事公苑の緑が鬱蒼と生い茂るエリアに入る。馬事公苑の設立は昭和15年に日本競馬会が創設したもので、前身の帝国競馬協会が昭和8年に誕生した皇太子殿下明仁親王の奉祝記念行事の一環として計画され、昭和9年に土地を買ったものらしい(馬事公苑公式HP参照)。昭和11年の同会は解散しているが、軍部の介入はざっと調べた範囲では見受けられなかった。上馬・駒場など界隈には馬のつく地名が多いことからも、陸軍の中でも馬関連の戦争遺跡が散見できるエリア。なので軍馬への拠出等、何らかの関係性を馬事公苑に疑ってしまったというわけ。それに、馬事公苑の南端に陸上自衛隊用賀駐屯地がある。ここもご多分に漏れず嘗ての陸軍施設―陸軍衛生材料廠の跡地で、土地を同じくして自衛隊と共に国立医薬品食品衛生研究所が併設されている。きな臭いことこの上ない。
敷地内の宿舎は寂れた公団アパートの様相を呈し、隣接する住宅の隙間からは異様に太い煙突がニョキっと天を突いている。
極めつけは倉庫で、そのフォルムは千葉にある気球連帯の格納庫にそっくりだった(ここもその内取り上げたい)。
また正門から続く壁も異様で、どす黒く変色したコンクリート塀が所々朽ち果てながら100mほど続いている。
その塀からは錆びた配管が覗き、垣間見れる研究所の建物は新しく建て増されてはいるものの、古い部分は屋上の縁が茶褐色のタイルで縁取られていて怪しげな研究所の風体を漂わせている。
さて、ここから東へフラついてみる。駅で言うと桜新町。
弦巻という地名の住宅街なのだが、ふらついてみると年季の入った錆び具合のトタン住宅や、補修工事かはたまた欠陥住宅の裁判中なのか、外壁の至る所にヒビや穴が開いた箇所を示すマークが付けられた弦巻住宅など、思いのほか楽しむことが出来た。
暗渠化した呑川が桜新町駅から玉川通り国道246へと流れている。ふらついていたら、この蓋の上を歩いていた。246に出たところで開渠となり、呑川緑道として深沢へと流れているので、あぁここ呑川だったんだ!と気づくことができた。
この緑道は桜の名所としても知られるほど趣き深い郊外型の緑化風景で、この脇に宮造りの東京型銭湯があって、しかも温泉も湧いているというのから、入らないわけがないでしょ。
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栗の湯
16:00〜23:00
月曜休
世田谷区新町1-36-6
泉質:メタ珪酸規定泉
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外観に反して入口付近はタイル張りで真新しく、ロビーも広く明るい。脱衣場も特別新しくはないものの、清潔感が非常にある。浴場もフツーのサイズか。入って左手に小さいながら別料金150円のサウナがある。
概要はさておき温泉! 3つの室内浴槽があり、右が通常の浴槽で、真ん中がラジウム効果があるという鉱石を通した湯、そして左が温泉槽。温泉はやや茶黄色い透明度のある湯で、クセは殆どない。入ると43度と熱め。ややショッパイか。あまりユックリする感じではないが、温まる泉質ではあると思う。個人的には鉱石湯がHITで41〜2度とややぬるめだったというのもあるが、こちらはやや甘めで、ゆったりじんわり温まる湯だった。
ガツンとくる温泉ではないが、接客も丁寧で銭湯としてのホスピタリティは非常に高いと思う。わざわざ温泉に来るというより、ふらっと立ち寄りたい銭湯という感じだった。246の喧騒が嘘のようだが、一本裏に入ればこうした銭湯や緑道、古建築が息づいているのが世田谷の魅力だと今回の散策で実感した。侮りがたし、世田谷!
2008年 12月 24日更新
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