その26−ナメクジ
水槽にへばりついて臆面もなく粘膜を見せているこの生き物。
そうそう、ナメクジですよ、ナメクジ。
子供のころ、塩かけて遊びませんでしたか?
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ナメクジがカタツムリの親戚だってことは誰でも知っている。
そしてカタツムリが貝の仲間ってこともみんな知っている。
ところがナメクジが陸棲の貝類と聞くとなんか違和感がある。
納得いかない感がしこりのように残る。
「あのぐにょぐにょぬめぬめしたヤツが貝だって?
人様を馬鹿にするんじゃねえ!」って感じだ。
思うに、貝は殻があることで貝とみなされているらしい。
ハマグリやアサリやホタテのような二枚貝も、
サザエやホラガイやタニシのような巻貝も、
ずいぶんといびつな形の二枚貝であるカキだって、
あまり巻いていないけどれっきとした巻貝のアワビだって、
どれもりっぱな貝殻を持っている。中身はぐにょぐにょだが。
しかしながら、殻=貝という図式は人間の勝手な解釈だ。
美しい渦巻きの殻で知られるオウムガイはイカやタコの身内。
ま、イカもタコも貝と同じ軟体動物だからさもありなんだが、
貝そっくりのフジツボにいたってはエビ、カニの近縁なのだ。
まかり間違っても貝に近いとはいえない。
ウニの殻だって見ようによっては貝っぽいではないか。
貝じゃないのに殻を持っている連中がいるのだから、
貝なのに殻を持っていない偏屈者がいたっていい。
陸上ではそれがナメクジにあたるし、
海中ではそれがウミウシということになる。
そういえば、昨今のウミウシ人気はすごいものがある。
これに対してナメクジの冷遇ぶりはあまりに対照的だけど。
どうやら、ナメクジにはいやらしい印象が強いようだ。
じめじめしたところをのろのろ歩いて、
跡に鼻水のようなてかった粘液を残していく。
湿ったところが好きなのは元は水棲だったのだから当たり前。
カタツムリだって同じなのに、ナメクジばかりが非難される。
不当である。
役立たないのろまだから不快なのだろうか。
それならカタツムリがそれほど嫌われない理由はなぜだろう。
エスカルゴとして食べることができるから?
だったらナメクジも品種改良して食べればよい。
現代のわれわれ人間の技術をもってすれば可能だと思う。
それに、殻がない分だけ食べやすいはずだ、きっと。
塩をかけるととけるから不気味なのだろうか。
でも本当はナメクジはとけたりしない。
塩により皮膚の外の浸透圧があがって、水分が出るだけの話。
つまり潤いを失って縮むわけだ。
これにしたってナメクジの専売特許ではない。
カタツムリだって同じ。おばあちゃんだって同じようなもの。
かくなるうえはナメクジのイメージアップをはかるべく、
かの生き物のすごいところを見せつけてやるしかあるまい。
耳かっぽじってよく聞くがよい。
ナメクジはなんと雌雄同体なのだ。どうだ、すごいだろう!
え、どこがすごいかわからない?
なんたる無知蒙昧!!
雌雄同体とはつまりこういうことだ。
Aというナメクジは男性器と女性器を持っている。
Bというナメクジも男性器と女性器を持っている。
このAとBのナメクジがどうやって交尾するか考えてみよ。
そう、そのとおり。
たがいに男性器を女性器につっこみ合うわけだ。
一匹でオスの絶頂感とメスの恍惚感を両方味わえるのだぞ。
こんなにすばらしい交尾があるだろうか。
事実、二匹からまりあって交尾するナメクジは
それはもうとてもとってもエロティックなのだから!
相手が見つからないときだって心配はない。
その場合は、自分の男性器で自分の女性器を……。
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【ナメクジ】
カタツムリ類と同じ陸棲の巻貝の一種である。カタツムリを歌った童謡
の中に、角出せ槍出せという謎のフレーズが出てくる。角が眼柄(がん
へい)であることは明らかだが、槍とはオナジマイマイの仲間が交尾の
際にペニス以外に相手を突き刺す針状の器官のことではないだろうか。
これは相手の交尾行動を刺激するためといわれ、恋矢(れんし)という
風流な名前がつけられている。
ナメクジの写真は、「日本ナメクジ大図鑑」のアシ研さまよりお借りしました。
「日本ナメクジ大図鑑」
http://munakobu.hp.infoseek.co.jp/
2004年12月17日更新
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