「まぼろしチャンネル」の扉へ
「番組表」へ 「復刻ch」へ 「教育的ch」へ 「東京カリスマch」へ 「日曜研究家ch」へ 「あった、あったch」へ 「再放送」へ 「ネット局」へ
ら〜めん路漫避行
まぼろし書店・神保町店
少女漫画 ふろくの花園
帝都逍遙蕩尽日録
定食ニッポン
駅前ガラクタ商店街
日本絶滅紀行
怪獣千一夜
秘宝館
掲示板
マガジン登録
メール
まぼろし商店街
まぼろし洋品店

「絶滅紀行」タイトル

田端宏章

「連れ込み旅館」

第25回 路地裏の「温泉マーク」


 毎回、消え行く「昭和のヴィジュアル」を取り上げているこのコーナー。今回のテーマは「温泉マーク」、すなわち「連れ込み旅館」であります。かつての連れ込み旅館の屋根には、その名の通り「温泉マーク」のネオンがかかげられ、その形から通称「さかさクラゲ」とも呼ばれていたようです(温泉マークの由来は、磯部温泉発祥説、別府温泉の生みの親・油屋熊八考案説、ドイツ発祥説など諸説があります)。
 連れ込み旅館といえば、不倫だの浮気だの、あまり良いイメージが浮かびません。また、様々な趣向を凝らしたラブホテルが全盛期の昨今、建物も木造で古いうえに、隣室の音も聞こえやすい連れ込み旅館が絶滅寸前なのも時代の流れでありましょう。しかし、木造の建物から漂うあの「後ろめたさ」と「ウエット感」こそ、「連れ込み旅館」の存在意義なのではないかと思います。古い旅館になりますと、「ご休憩○○円」の他に、「ご商談○○円」などと情緒のある看板を掲げているところもあるようです。もちろん、実際に疲れた足を休めるために休憩をしても良いし、商談の場として使用したって良いわけです(「ご商談」という遠回しの表示なんて、ひと昔前の「大人の場所」という匂いを感じます)。しかし現在、このようなシットリとした大人の隠れ家的空間は、街の中から確実に姿を消しつつあります。
 日曜研究家・串間努さんの最新刊『チビッコ三面記事 子どもの事件簿』(筑摩書房刊・1500円+税 好評発売中!)に、東京の連れ込み旅館に関する記述がありましたので、少し引用させていただきます。

『東京の連れ込み旅館は昭和28年頃から増加、昭和30年には当局から「温泉マーク」を使用してはいけないというお達しが出て温泉マークのネオン看板を取りはずしたが、アベックがこっそり出入りできるように玄関を工夫したり、ふとんの下に厚いマットを敷きはじめるなど旅館側も新たなサービスを開始した。戦後の民主化で自由恋愛が解放され、性業界が活発化して各旅館は差別化・拡張化を図っていたころであった。また、連れ込み旅館がこの時期に増えたのは、昭和33年に実施される「売春防止法」(昭和31年)によって生業を失う業者が、新宿、玉の井などから、旅館業に転身していたのだった(旅館に偽装転業という業者もあったと伝えられている)。』

 赤線の廃止と連れ込み旅館の増加には因果関係があったようですね。しかも、昭和30年には温泉マークの設置も禁止されていたとは知りませんでした。温泉組合みたいなところからクレームでも入ったのでしょうか? 

「連れ込み旅館」

 さて、こうした昔ながらの風情ある連れ込み旅館は都内のどこかに残っていないのだろうか?、そんな疑問がフト浮かび、私の「都内連れ込み旅館探索」が始まりました。花街の周辺に残っている可能性はないのだろうか?、つげ義春の『無能の人』に出てきた温泉マークのように、川沿いの街に沢山あるのではないか?、色々な想像が頭をよぎります。
 まずは電話帖でそれらしい名前の旅館名をピックアップし、実際に足を運んで確かめてみることにしました。すると、神楽坂、百人町、円山町、下高井戸、浅草、上野あたりにそれらしい旅館があることを突きとめたのです。プライバシーの問題があるため、詳しい場所、館名は伏せることにいたしますが、いくつかご紹介させていただきます。
 すでに紙数も尽きましたので、次回は都内に点在する旧き佳き連れ込み旅館を訪ねてみることにいたします。乞うご期待。

(たばた ひろあき 逆さクラゲの会(仮名)準備委員)


2004年7月16日更新
ご意見・ご感想は webmaster@maboroshi-ch.com まで


第24回 正しい観光地ミヤゲ (その5 最終回)
第23回 正しい観光地ミヤゲ (その4 神奈川・江の島 後篇)
第22回 正しい観光地ミヤゲ (その3 神奈川・江の島 前篇)
第21回 正しい観光地ミヤゲ (その2 山口・秋芳洞 篇)
第20回 正しい観光地ミヤゲ (その1 埼玉・吉見百穴 篇)
第19回 タバコの王様ピース美術館 その4 (モダニズムデザイン 篇)
第18回 タバコの王様ピース美術館 その3 (乗り物 篇)
第17回 タバコの王様ピース美術館 その2 (お役所系 篇)
第16回 タバコの王様ピース美術館 その1
第15回 レッツ ボウリング アゲイン!
第14回 風切り付き自転車に乗ろう!
第13回 同潤会アパートが消えてゆく
第12回 トリスを飲みにトリスバーへ行こう! その3
第11回 トリスを飲みにトリスバーへ行こう! その2
第10回 トリスを飲みにトリスバーへ行こう! その1
第9回 徳用マッチの面白さ その3
第8回 徳用マッチの面白さ その2
第7回 徳用マッチの面白さ その1
第6回 カラーブックスの魅力
第5回 活版印刷に魅せられて
第4回 看板建築は「ゆとり」の象徴
第3回 銭湯が消えてゆく……
第2回 麻雀意匠の愉しみ方
第1回 廃墟巡りのススメ


「カリスマチャンネル」の扉へ