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第21回
「おにぎりを包むのは
ラップ? 銀紙?」の巻

日曜研究家串間努



 いま、私の回りでは家庭で作るおにぎりを何で包むかということが問題となっている。私が小学生時代に母に握ってもらったおにぎりは、じかに海苔が巻いてあり、それをアルミホイルで包んだもので、食べるころにはほどよく湿っていた。思わずホイルの切れ端を奥歯で噛んでしまって、キーンとしびれるイヤな感触を味わったりもした。おにぎりを友達同士で食べる機会は運動会か遠足の時だけで、そういうイベントで興奮している私たちは食べ終わったあとのホイルを丸め、野球のボール代わりにして遊んだものである。

 昭和四〇年代前半くらいまでは竹の皮で包んでいたが、それがいつの間にかホイルになっていた。ところが改めて自分の回りを見渡してみると今では透明のラップで一つづつ巻いているようだ。「銀紙」はダサいが「透明」なラップにはスマートなイメージがあるらしい。「あのギュッと握ったシワシワ感がビン私さくてイヤ」と訴える子がいる。その一方で「絶対ホイル巻だ」とこだわる人がいる。どちらで包んでも他のおにぎりとくっつかないし、昔話「おむすびころりん」のように誤って落としたときでも汚れないという利点がある。それなのにおにぎりの世界ではラップ包装が優勢になっているのである。

 日本で最初に家庭用食品包装ラップを発売したのは呉羽化学。登場は魚肉ソーセージと関連する。魚肉のハムやソーセージの包装材料は、戦前はセロハン、昭和二〇年代はライファン(塩酸ゴム)が使われていた。ところがこれらは耐熱性と気密性、作業効率がいまひとつ。業界が新しい包装材を模索している折り、昭和三〇年代初頭に同社が開発した塩化ビニリデン系の「クレハロン」は優れた性能をしめし、包装材に採用されて魚肉ソーセージブームを作った。また、すでにアメリカでは家庭用ラップが開発されており同社ではこのクレハロンを家庭用にできないかと検討、昭和三五年の発売となった。一本三〇センチ幅の七メートル巻で価格は一〇〇円。まだスーパーマーケットの販売力が期待できないころなので三越や高島屋で売られたという。
クレラップ 「クレラップが家庭に浸透していくには、冷蔵庫と電子レンジの普及がカギでした」(呉羽化学工業株式会社)
 電気冷蔵庫だと食品が乾燥してしまう。また様々な食品を詰め込むため移り香が発生する。これらを防ぐニーズを、酸素・水分・匂いを通さないクレラップが満たした。そして電子レンジの登場は、一四〇度の高温でも破けないクレラップに調理用の側面があることをアピールする。現在は年間三億本の市場規模にまで成長した。
 おにぎりがラップ包みになったのは担当者によると「私の考えですが」と前置きしながら、「あまったご飯を冷蔵庫で保存するのにラップを使ったことがヒントになっているのでは。それを電子レンジで温めるときもラップが重宝します。また、ラップで握ると手が汚れませんし衛生的ですね」と予想された。

 おにぎりはブドウ球菌による食中毒が発生しやすい。あるテレビ局の実験で、手に塩と水をつけてにぎる、手に酢と塩をつけてにぎる、ラップでにぎりそのまま包んで持っていく、の三つの方法で保存性を調べたところ、ラップでにぎるのが、「細菌をつけない」という点で一番という結果だった。

 アルミホイルは昭和三三年の発売。クレラップでも二五年くらい前は、ラップの営業で地方に行くと、「これは銀紙ケ?」と言われたというから、ホイルのほうが先に浸透していたのだろう。オーブントースターと結びついていたホイルだが、電子レンジが普及して、家庭内でのラップ使用量が上がると主婦は、おにぎり包装をより汎用性の高いラップに置き換えていったのではないだろうか。
 さてあなたのおにぎりはどちらで巻いていますか?

毎日新聞を改稿


2005年6月15日更新
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