その27−コオロギ
リリリリリ、リリリリリリリリ〜♪
なにやら暗がりから美しい声が聞こえてきます。
懐かしいですね。エンマコオロギの鳴き声じゃありませんか。
*****************************
コオロギほど毀誉褒貶の激しい虫もない。
中国では古来からこの虫をめでる文化があった。
宮廷からコオロギの鳴き声を競わせる遊びがはじまり、
やがてオス同士を戦わせる闘蟋(とうしつ)が生まれた。
闘蟋は庶民の娯楽として根付き、広まっていった。
闘牛でも闘鶏でもそうだが、動物を戦わせる競技に男は燃える。
勝敗は賭け事の格好の材料となる。
必然的に強いコオロギはもてはやされ、
それを育てるためにいろんな技が編み出される。
食べ物に何を与えるべきか、
飼うための容器はどんなものがいいか、
健康管理にはどのような工夫が必要か。
多くの中国人たちが知恵を絞ってきた。
何冊もの指南書が書き継がれ、研究は深化していった。
コオロギの鳴き合わせやコオロギ相撲は現代でも盛んで、
ときとして違法な賭博の温床にもなっている。
現代においても、コオロギはメシの種になっているのだ。
一般人はもとよりコオロギ商や賭場の博徒にまで、
この虫はペットとしてこよなく愛されている。
日本でもコオロギを生活の糧にしている人がいる。
子供の頃を思い出してもらいたい。
コオロギをカマキリに差し出した経験はないだろうか。
カマキリはむしゃむしゃと、やけにうまそうに食ったものだ。
丸々と太ったコオロギは良質の動物性タンパク質である。
カマキリだけでなく、いろんな生き物が食べる。
鳥も食べるし、ネズミも食べる。
コオロギの柔らかい体はさも食べやすそうである。
たぶん消化にもいいのだろう。
爬虫類や両生類もこの虫が好物だ。
大きな口でぱくっとくわえ、胃袋につめこんでいく。
きっと食い応えがあるに違いない。
となると、これらの動物の飼い主には欲しがる人も出てくる。
需要があるところに商売が生まれる。
簡単に繁殖させられるという点もよかったのだろう。
エサ用コオロギのブリーダーという職業が実際に存在する。
一部のトカゲやカエルのマニアによって、
この虫はペットのエサとして重宝されている。
まこと、コオロギほど毀誉褒貶の激しい虫はない。
中国ではペットなのに、日本ではペットのエサ。
扱いは正反対だが、どちらにもコオロギで食ってる人がいる。
でも、両方とも不自然に感じるのは私だけだろうか。
コオロギを愛玩する気持ちはわからなくもないが、
それを賭博にして大金が動くというのはいかがなものだろう。
トカゲやカエルを飼う気持ちも理解はできるが、
そのためのエサとして大量消費するのはどこか解せない。
世界中見渡せば、コオロギで食っている人はもっといると思う。
良質の動物性タンパク質ならば、人間にとっても栄養になる。
きっとコオロギを食する文化がどこかの国にはあるはずだ。
この場合、コオロギで食っているというよりも
コオロギを食っているといったほうが正確だが。
将来的に食糧難の時代が来ることは確実視されている。
その際の解決策の切り札は昆虫食だと考えられている。
日本人も中国人もコオロギを道楽にしている場合ではない!
日本だってごく普通にイナゴやハチの子を食べていたんだし、
中国にはカの目玉のスープというとんでもない料理まである。
ぼちぼちこの虫の味にも慣れておいたほうがよいのかも。
*****************************
【コオロギ】
直翅目(バッタ目)のコオロギ科に属する昆虫の総称で、日本には100
種類近くが生息している。翅をすり合わせて鳴く声は、秋の風物詩とし
てよく知られている。ちなみにコオロギは漢字で書くと蟋蟀。難読姓の
興梠とは字が異なるので要注意。
コオロギの写真は、「昆虫エクスプローラ」のTooru Kawabeさまよりお借りしました。
「昆虫エクスプローラ」
http://www.insects.jp/
2005年5月12日更新
ご意見・ご感想は webmaster@maboroshi-ch.com
まで
その26−ナメクジ
その25−ヒル
その24−アスズメバチ
その23−アオダイショウ
その22−ノミ
その21−スズメ
その20−アメンボ
その19−カマキリ
その18−オニ
その17−トカゲ
その16−ザリガニ
その15−ツチノコ
その14−コウモリ
その13−シラミ
その12−ウーパールーパー
その11−シーモンキー
その10−ケラ
その9−メダカ
その8−ムジナ
その7−回虫
その6−カッパ
その5−アリジゴク
その4−デメキン
その3−ジュウシマツ
その2−イボカエル
その1−スピッツ
→ |