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ヨコハマの洋食をやったからには、やはり東京もやらねばなるまい。東京で洋食というと、やはり銀座のＲや浅草のＹなど老舗の名前があげられるものだが、これらの店はふだん食べる定食と考えればあまりにも高い。それに銀座のＲなどは結構混んでいて、落ち着いて食べられるものでもない。落ち着かなくて、高いとくればそれは行かないよね。大体コロッケやらライスやらたべて１５００円以上なんていうのはちょっとイヤだなあ。 ではどの店を紹介するかといえば、何はともあれ「バンビ」だ。私の「バンビ歴」も非常に長く、もはや１０年以上になる。「バンビ」は、都内でもお茶の水の明治大学そば、本郷の東大前というように学生街にあるが、私が愛用しているのは、最初に入った茗荷谷店だ。この地下鉄丸の内線の「茗荷谷」というのは、実にシブイ街で、お茶の水女子大、筑波大附属、跡見学園、拓殖大学などと、多くの学校がある、まさに文教地区だ。ただし、お茶の水駅〜神保町界隈のように、古本街や、スポーツ用品店などもないため、その学校の学生か、学校関係者でもないかぎり、普通の人はあまり訪れる機会のない街だろう。ただし、小学校から大学まで様々な学校があるため、古い街だけど活気のある不思議な雰囲気が漂っているのだった。 学生街であるため、駅前を中心として、食べもの屋もとても充実している。近年新装なった駅ビルにはジョナサンや松屋などの大チェーン系などがあり、その近くには、同じチェーン系でも激安軍団が控えているのだった。それは、２００円という驚異的な値段を展開する「牛丼太郎」、そして居酒屋の「さくら水産」の繰り出す昼定食である。この街にもサラリーマンは若干いるが、この「さくら水産」に入ると、サラリーマンがわらわらと繁殖している。魚関係の定食からフライものまでランチのレパートリーは幅広いが、何しろ５００円からと実に安い。さらに飯、海苔、漬物、味噌汁、玉子などが食べ放題なのだ！ 飯だけでも食べ放題だとありがたいのに、なんとこの店はおかず系まで食べ放題なので、貧乏なサラリーマンが頬に涙しつつ、ご飯に生玉子かけて、海苔をかけてばりばりと飯を食っているのだった。
このような「さくら水産」は、貧乏サラリーマン定食業界では、横綱級の強さを発揮するが、「バンビ」だって負けていない。定食メニューは６００円程度からだったが、最近はタイムサービスで、コロッケランチと野菜ハンバーグランチはなんと４８０円だ。この店の定食は、コンソメスープが最初にサーブされ、続いてメインデイシュが登場する。４８０円のコロッケでもちゃんと手作りで、トマトソースを皿の上に敷いた上にあげたてのクリーミーなコロッケが載っているのだった。当然生野菜もちゃんとついている。ライスは一回限りだが、半ライスをお代わりさせてくれる。 しかし、この店の凄さは、これだけではない。はじめて店内に入ったあなたは、他の客がやたらと「食後にホット」とか「俺、アイスコーヒーもってきて」とか注文しているのに気がつくだろう。メニューを見るとランチにコーヒーがついているわけではなく、３００円とかするのだった。そして不思議に思いつつ、食事を終えて、席を立とうとすると、店員がすすっと寄って来て、「どうもありがとうございました」と言いつつ、エプロンのポケットから何やらカミキレを取りだして渡してくれる。それを見るとなんと１ドル札！ しかしよく見るとそれは「バンビ」のコーヒー券なのだ。これが有名な「バンビ・永久循環コーヒー券」なのだ。つまり、一回この券をもらえば、次回食後にコーヒーを飲め、さらに店を出ようとすると、次のコーヒー券をくれるのだった。いつもコーヒー券を使うたびに「今回も帰りにくれるのかなあ」と心配になるが、この１０年ほど毎回必ずくれている。 だから、私の財布には必ずこのバンビのコーヒー券がいつも待機しているのだった！ 2003年10月23日更新 ［定食ニッポン］ → |
