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「秘密基地」タイトル

第22回「失敗し続けたコウちゃん」の巻

日曜研究家串間努


 小学六年生のとき、近所の子どもたちを集めて、十人くらいの集団であそんでいた。オイルショック後の昭和五十年ころだったが、まだ地方都市の郊外ではそういうガキ大将文化が残っていたのだ。後輩の一人に、コウちゃんという四年生になる子がいた。コウちゃんは小遣いが潤沢で、いつも何千円ものお金を自由に使っていたのがうらやましかった。
 当時、子どもたちだけで遊びに行くところで『子どもの国』という場所がとなりの市にあった。自然を切り開いた公園で、釣り堀とかベビーゴルフや運動場があったが、ゴーカートなどお金のかかる施設もあった。その一角では「らくやき」という陶芸教室も開かれていて、確か三百円くらいでダルマの貯金箱を焼くことができた。らくやきとは、素焼きの茶わんや皿などに思い思いの絵を書き、うわ薬をつけて焼き上げるものです(陶芸用語では初代長次郎に始まる京都の楽家代々の作(本窯)とその系譜を引く一族や弟子の作(脇窯)の総称。京都の楽家代々の作や、それらと同様の手捏。ねの軟陶を楽焼と総称しています。手捏ねで成形し、低火度(ていかど)で焼いた軟質陶器)。
 この日コウちゃんはついていなかった。まず、ダルマに厚くうわぐすりを塗りすぎて紫色のダルマになってしまった。そして「ダルマが紫ってことはねえだろう」とみんなに言われたせいか、ダルマを落として割ってしまった。しかし資金が潤沢なコウちゃんはまたお金を出してらくやきをし、新しいダルマを得た。しかし、帰り道にあったガソリンスタンドで冷たい水を飲んでいる時に、誤って落としてしまい、しかもそこがコンクリだったのでまた割れてしまった。
 駅に着いたとき、ちょうどペットショップがあり、そこでリスを買った。ところが家に持ち帰って、かごに入れようとした瞬間、逃げてしまった。仕方がないのでまた、リスを買いにいった。九官鳥を入れるかごに入れたが、網目が縦目なので、リスは頭をスルスリして、お尻をフリフリすると、スルリと逃げてしまった。
 仕方がないので、今度はウサギを飼った。さすがにウサギは一週間くらい持った。
 ある日。お尻の毛にウンチが固まったので、ハエがそこにたかったためコウちゃんは殺虫剤を吹き掛けた。もちろんハエを殺すためである。しかしハエはたちまち飛び去って逃げ、あとにはウサギの死体が残されただけだった……。

はるかを改稿


2006年10月31日更新
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