その28−テング
おや、二足歩行をしながら団扇であおいでいる動物が…。
ヒト、じゃないなぁ、顔の中央部が異様に突出しているから。
テ、テングだ!
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日本は島国だというのに、びっくりするほど森林が多い。
だから日本人は海のみならず山からも恩恵を得て生活してきた。
木の実、山菜、キノコ…広葉樹林は豊富な食糧庫だった。
シカ、イノシシ、ウサギ…森には獲物もたくさんいた。
日本の山はとても豊かな場所なので、
山を生活の場とする日本人が多くいた。
日本人だけではなく、テングも山を生活の場としていた。
京都の鞍馬山には僧正坊というテングがいたらしい。
日本八大天狗のひとりで、
なんでも牛若丸に剣術を教えたそうである。
相当な剣の使い手だったのだろう。
テングは自在に空を飛べるとされている。
空を飛べる上に戦いにも強いのだからたいしたものだ。
鬼に金棒、ならぬ天狗に剣ってわけだ。
しかしテングというと剣よりも金剛杖と羽団扇の印象が強い。
金剛杖は修験者が山で行をする際に杖としたもの。
そういえばテングは山伏の格好をしている。
カッパやオニと違って、ちゃんと着衣をまとっている。
高下駄などはいているのも修験道の修行を思わせる。
なのになぜか手には羽団扇。
法螺貝ではなく、なぜか羽団扇なのである。
一説ではこの羽団扇を使ってテングは空を飛ぶのだという。
どうやって飛ぶのか。
団扇を両手に持って、鳥のようにはばたくのだろうか?
ドラえもんのタケコプターみたく回転させるのだろうか?
西洋の魔女よろしく、団扇にまたがって舞い上がるのか?
あるいはあれは魔法の小道具で、
念じるだけで空中浮遊ができるのかもしれない。
そもそもテングには2種類がいる。
鼻の長い鼻高天狗と嘴を持ったからす天狗だ。
からす天狗は、その顔を見ても鳥の親戚だとわかる。
修験者の格好こそしているものの、実は鳥に違いない。
であれば背中に翼を折りたたんでいても不思議じゃない。
やつらが空を自由に飛ぶのは、
その意味では当たり前と呼べるのかもしれない。
問題は鼻高天狗のほう、あいつは鳥ではなさそうだ。
鼻さえ短ければ、ほとんどヒトと言っても問題ない。
鼻高天狗はもともとは人間だったのかもしれない。
修行の結果、ぐーんと鼻が伸び、
あまつさえ空まで飛べるようになっただけで、
もとは本当に山伏だったのかもしれない。
そう、ヒトもがんばればテングになれるのだ。
かつて、ディスコ「ジュリアナ」のお立ち台には
テングにあこがれたOLたちが群れていた。
羽団扇をあおいで、空に飛び立つことを希求し、
鼻高々に下界の男どもを見下ろしていた。
たしかに当時、彼女たちは周りからもてはやされて、
一時的に天狗になっていたはずだ。
それがいまは子育てに追われる主婦に身をやつしている。
理由は簡単・・・修行が足りなかったのだろう
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【テング】
オニ同様、霊長目ヒト科に属すると思われるが、不明。山林の減
少により急激に数を減らしており、絶滅の危機に瀕しているらし
い。
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猿田彦
千葉県・船橋漁港の「水神祭」より「猿田舞」
(一説には猿田彦神が鼻高天狗のルーツと言われている)
撮影と解説 アカデミア青木氏 |
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2005年8月2日更新
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