その68 宇都宮からやって来た
鳳凰が描かれた小箱の巻 |
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小さな箱を買いました。
手の平にのる大きさで、ズッシリと重さがあり、脚が付いているので、まるで宝物入れのような、重厚感のあるデザインの小箱。だけど、どこかチープに感じるのは、ところどころ銀メッキが剥げた、アンチモニーという素材のせいでしょうか。
フタの中央には、大きな花のような太陽のような模様が型押しされ、その両側には、縁起物である鳳凰が大きな羽を広げて飛んでいます。まるで、手塚治虫の漫画『火の鳥』のようです。そして箱のまわりには、菊と菖蒲の花が美しく描かれ、なにか大切な小さなモノを入れてみたい気持ちになりました。
それにしても、どういう年齢層をターゲットにつくられた小箱なのでしょう。子供の玩具としては少々渋めなので、外国の方向けの、日本のお土産として作られたのかも知れません。お店の方のお話では、東京の自由が丘にあったお宅からの“うぶ出し”だとか。ずいぶんと古い家で、取り壊される時にいろいろなモノが出たそうです。
「ずっと維持することは大変ですよね」
なんて、しんみりした話になったりして。
さて、このお店はどこにあるのかというと、宇都宮です。例によって神社へやってきたのですが、毎度のごとく行き当たりばったりの小さな旅で、テキトウに歩いていたら、このお店にたどり着いたのです。店名は“ANTIQUE 道具屋 福や”。オリオン通りの賑やかな商店街を抜けて、ふらっと小さな川沿いを歩いていったら、白い壁の小さな骨董屋さんを見つけたのでした。それも夕方近くなった時間に、川のせせらぎの音とセミの声を聞きながらの出会いで、なんとも懐かしいような、時間がゆっくり流れているような、不思議な気持ちになりました。やっぱり偶然の出会いって、調べて行く以上にワクワクしますね。
店内に足を踏み入れると、“道具屋”といわれるとおり、ひと昔前の食器や照明など、すぐに使える実用品たちが、ところせましと並んでいます。そんな中で目が合ったのが、この鳳凰が描かれた小箱でした。しばらく眺めて、何か秘密めいたモノでも入れたいなぁ、なんて思ったのですが、結局のところ浮かんできたのは、小さなアクセサリー。宝箱としてはピッタリかもしれません。
考えてみたら、最近の私は、まず何を入れるか、何に使うかって考えるようになりました。20代の頃は目的なんてまったく考えてなくて、気に入ったモノはお金の許す限りつれて帰ったのに…。この意識の変化は年齢のせいでしょう。少しだけ現実的になりました。でも、気ぜわしい日常から非日常へ誘ってくれる古いモノたちは、私を元気にしてくれるパワーの源。嬉しい出会いにニッコリです。
小箱のほかには、蝶が描かれたフタつきのお椀と高瀬舟が描かれた“いげ皿”を買いました。蝶の絵って、なんだか素敵だと思いませんか? 結構細かく描かれていて、ちょっぴり乙女ちっく(?)な感じがして、ひと目で気に入りました。“いげ皿”は、その37でもご紹介しましたが、お皿のフチが茶色いギザギザのモノで、骨董市などでわりとよく見かけますが、絵柄も豊富でいろいろ探すと楽しいと思います。この波に浮かぶ高瀬舟と松の絵柄も、私的にはグッときたのですが、いかがでしょう。この食器たちは、もちろん実用品。今夜にもさっそく使いたいと思います。
おまけ
二荒山神社のご紹介を少し…。オリオン通りを見下ろす、街の中心ともいえる場所に鎮座するこの神社は、訪れた日も老若男女とたくさんの人で賑わっていました。当然のことながら御朱印を頂いて境内の散策となったのですが、ここの狛犬たちは表情が豊かで可愛らしいのです。イキイキとしているように見えるのは私だけでしょうか? なんだか見ているこっちまで、ニコニコしちゃいました。
2007年9月12日更新
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