第13回「日本のお菓子に描かれたる外国の子どもたち」の巻
みなさん、お菓子の箱に描かれた外国人の少年少女たちを見て、「なんで日本のお菓子に出てくるんだろう? ヘンな子だなあ」「名前はなんて言うんだろう」と思ったことはないでしょうか。
私はある。最近見かけなくなったけど、不二家の「フランスキャラメル」の女の子だ。ではこの子は一体どこの子か調べてみた。そうしたら……驚くべき事実がわかったのだった。なにしろ発売されたのが古い、昭和九年という。当時五、六歳としたら、今は七十歳を超えているじゃあないか。
実はこの年、映画界の話題を独占した名子役の「シャーリー・テンプル」ちゃんという少女が大人気だった。不二家ではこの子をモデルに箱をデザインし、フランス人形のように愛らしかったので「フランスキャラメル」と命名したという……。ああ、それで箱はフランス国旗の赤・白・青のデザインだったのか。世界には三色旗の国旗が多い。フランスの国旗の色を右から順番にいうことができるかな。私には全くできないな。
フランスキャラメルと違って、パッケージのデザインが変わったために、今はいない外国人の子どもたちもいる。グリコがそうだ。グリコの「バタープリッツ」や「ビスコ」、アイスでは「ジャイアントコーン」にも昭和五十年代くらいまでは、外国人の子が描かれていた。
そこで、グリコにも三つまとめて尋ねてみたぞ。しかし名前は一人もわからなかった。パッケージに子どものイラストが使用されたわけは、買い手の子どもたちに目を引いて、親しみをもってもらうためだという。そうかなあ。ギモンとアンバランスさは感じたけど、親しみを持ったことなんてないんだけど……。だって外人が珍しかった時代だもの。この手法は昭和八年発売の「ビスコ」から取り入れているらしい(でもあのビスコの男の子は日本人がモデルなんだけど……)。ではなぜ外国人なのか。バタープリッツはドイツの「プレッツェル」にヒントを得て開発され、アイスのジャイアントコーンもアメリカの「ジェットコーンアイス」の包装を取り入れて開発された。つまり欧米のお菓子を日本に取り入れるという意味で、子どもの親しみやすい表情を取り入れたらしい。でも折角日本という外国のお菓子の包装デザインに使われたのに、名前を誰も知らなかったなんて悲しいな。メーカーでさえわからないとは、トホホだ。そういえば山崎製パンの昔のキャラクターも食パンをナマでかじっている外国人女子だ。名前はスージーちゃんとという。
昔は、私らのまわりには子どもの顔があふれていた。明治のメリーミルク、河合の肝油ドロップ、カバヤのクラッカージャックに、和光堂シッカロール……。
商品パッケージの世界でも少子化になってきているのかなあ。
●報知新聞と毎日新聞を合わせて改稿
2005年5月18日更新
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