第11回 1963年(昭和38年)
「日本のアニメが世界的に好評だけど、そのルーツとなったのが1963年の1月から始まった『鉄腕アトム』だったね」
「そのマンガなら私も知っているわ。手塚治虫先生の代表作だもの」
「手塚さんが自ら私財を投げ打って制作したアニメだけに、彼の情熱がストレートに伝わってきたね。最高視聴率40.3%を記録し、“虫プロ”の名を不動のものにしたんだ。後年『アストロ・ボーイ』の題名でアメリカでも放映され、世界の手塚治虫になったんだよ。『鉄腕アトム』のヒットに続き、『鉄人28号』や『エイトマン』がアニメ化された。『鉄人28号』は以前に実写版があったんだけど、大人よりちょっと大きい程度の情けないロボットでね。動きも遅くて笑いの対象だったけど、アニメになって原作のイメージ通りになった」
「当時の実写版だと、CGもないし想像がつくわ」
「そういえば、『鉄腕アトム』の実写版もあったね。これも酷かった。『鉄腕アトム』のアニメの成功が、日本におけるアニメの隆盛をもたらしたことに間違いない。『鉄腕アトム』のアニメはテレビにおいて革新的なことだったんだよ。革新的といえば、『三匹の侍』もそうだな。刀がふれあう音、ビュンとうなる刃の音、肉を斬り、骨を断つ音が効果音として使われた最初のテレビ時代劇だった。微温湯的なテレビ剣法になれていた茶の間のファンはビックリしたねェ。『三匹の侍』を演出した五社英雄監督が“見せるチャンバラでなく、斬るチャンバラ”と言っていたように、体と体がぶつかり合う豪快な殺陣は迫力があって、単に音響効果だけではなかったよ。最近のテレビ剣法は刀を横に払う動きばかりだけど、大上段から斬り落としたり、下から斬り上げたりと殺陣に工夫をこらしていたね」
「最近、時代劇って少なくなったよね。今でもあるのは、NHKの大河ドラマとか……」
「大河ドラマといえば、1963年の『花の生涯』が最初なんだよ。舟橋聖一の小説が原作で、井伊直弼の生涯を描いた歴史ドラマ。主演は歌舞伎界の重鎮だった尾上松緑だけど、視聴者がビックリしたのは長野主膳役で佐田啓二が出演したことなんだ。佐田啓二は松竹のトップスターで、当時映画界には5社協定というのがあって、映画の大スターがテレビに出演するのは不可能と考えられていたからね。プロデューサーの合川さんが土日曜ごとに佐田邸に押しかけ続け、十数回目にして、やっと出演交渉ができたそうだよ。佐田啓二の出演と、『花の生涯』のヒットにより、翌年の『赤穂浪士』では、大映の大スター長谷川一夫が出演し、やっと各社の映画スターがテレビになだれをうって出演するようになるんだ。テレビと映画が逆転するエポックメーキングなったといっても過言ではないね」
参考資料:テレビドラマ全史(東京ニュース通信社)、テレビ50年(NHKサービスセンター)、テレビ史ハンドブック(自由国民社)
2005年4月7日更新
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