その30−ダンゴムシ
ドーム型をしたネズミ色の小さな生き物がいますね。
人が触ると、あら不思議、丸まってしまいます。
懐かしくないですか、ダンゴムシ。
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体を球みたいに丸める習性からマルムシと呼ばれたり、
じめじめした地を好むのでベンジョムシと呼ばれたり。
正式名称はダンゴムシ。
もっと正確に言えばオカダンゴムシである。
おとなしくてのろまなこのムシは格好の遊び相手だった。
植木鉢の下や大きな石をひっくり返した跡に、
アリやムカデやイモムシにまじってダンゴムシもいた。
見つけると必ず手を伸ばし、捕まえておもちゃにした。
ダンゴムシはこどものなすがままだった。
掌のうえでころころ転がして遊んだ。
飽きるとサイコロを振るように地面に放った。
そして地面にしゃがみこんでじっと観察するのだ。
観察といっても形態をチェックしていたわけではない。
だからほとんどの子はこの生物が14本足だと知らない。
観察といっても生態をチェックしていたわけではない。
なので大半の子はこの生物が落ち葉を食べると知らない。
こどもが観察していたのはダンゴムシのふるまいだった。
敵にであうと防御のために固い甲羅を外にして丸くなる。
その体勢で危険をやりすごすとおもむろに歩きはじめる。
この一連の動きがユーモラスで、示唆に富んでいた。
こどもはここに人生のペーソスを感じていたのだ。
丸まって敵が去るのを待つダンゴムシのしぐさは、
体を硬直させて母親の叱責をひたすらに耐え抜く
自分の姿と重なって見えていたはずだ。
こどもはここから弱者の処世術を学んでいたのだ。
何事もなかったかのように歩きだすふてぶてしさは、
叱られた後ペロッと舌を出してはまた遊びに行く
自分の姿とダブって見えていたはずだ。
弱者であるこどもは皆、ダンゴムシに共感を覚えた。
だからこそ、宮崎駿がアニメ『風の谷のナウシカ』で
オームというダンゴムシ似の怪物を復権させた際に、
大のおとながあんなにもこぞって萌えたのだ。
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【ダンゴムシ】
等脚目の動物で、近縁にワラジムシやフナムシがいる。一般的に
ダンゴムシと呼ばれるオカダンゴムシは世界中に生息するが、日
本に侵入したのは比較的新しく明治時代だと言われている。
※ 写真撮影 アカデミア青木氏
2006年5月31日更新
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