4月某日 金ナシ地位ナシ之誕生日ニ地元ノ古本屋ヲ回ル事 |
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今日はぼくの誕生日。39歳になったのである。ミニコミ『日曜研究家』に「帝都逍遙蕩尽日録」の連載をはじめたとき、ぼくは28歳だった。断続的にとはいえ、もう10年以上この題名を使い続けているのか、と感慨深い。
それにしても、40代手前となれば、誕生日だからってべつに盛り上がるコトはない。とりわけ、今年の春はままならない仕事や事情を抱えてウツウツとしている感じである。行きつけの店の奥さんに、「あさって誕生日でしょう?」と云われて気づき、「そうだ、今年は免許証の更新に行かなきゃなあ」と思った程度。盛り上がるワケがないのである。
しかしまあ、今日は土曜日だし、このところ雨続きだったが、今日は珍しく晴れている。風は肌寒いがうららかな天気ではある。自転車でご近所を散策してみるか。
西日暮里駅の高架を抜けて、尾久橋通りへ。以前、ここの交差点は見通しが良かったのだが、いまは頭上に大きな橋がかかっている。ずっと工事中なので、上から落ちてきそうでコワイ。これは2007年に開通する予定の「新交通
日暮里・舎人線」の軌道なのだ。
交差点を渡り、京成線のガードに沿って自転車を走らせる。この道はヒトも車もあまり通らないのだが、ガード下では、自転車の修理屋、肉屋、ナニかの卸屋などが営業している。そのうちの一軒が、〈鈴木書店〉という古本屋だ。文庫からマンガ、エロ雑誌から文芸書まで扱う下町の古本屋なのだが、ほかの店と違って、在庫を床に積んだりせず、きちんと分類されているから、本が探しやすい。しかも値段が安い。ずっと探していた中公文庫のある本が200円だったのは、嬉しかった。定期的に覗くようにしている店だ。
しかし、行ってみるとシャッターが閉まっている。じつは、一週間ほど前に通りかかったときにも閉まっていたのだ。まさか、閉店するんじゃないだろうね。次に行ったときには開いていてほしい。スゴスゴと引き返すと、まだ4時なのに、〈竹屋食堂〉がもう開いている。いかにも「大衆食堂」というカンジののれんがイイ。その向かいに、〈うたごえ酒場 ボイス〉という看板がある。イイねえ、うたごえ酒場。カラオケじゃなくて、ギターの生伴奏が付くのだろうか?
さて、さっきの交差点に戻り、日暮里方向へ。日暮里図書館で本を返し、その辺りの横道に入り込んだら、方向が判らなくなってしまった。この辺りは道が入り組んでいるので、自分がドコに向っているのか怪しくなるコトが多い。ただ、そうやって徘徊したおかげでぶつかった店や通りも多いのだが。今回も、あれ、ココはドコだ? と思っているうちに、JR三河島駅に出てしまった。
日暮里方面に戻り、〈峯尾文泉堂〉へ。この店は以前、根津にあり、よく通っていた。店内にコピー機があったのだが、その使い方でオヤジとケンカしたこともある。この場所に移ったのは5、6年前だろうか。ずいぶん狭くなったが、本がよく整理されているという印象。ただ、ぼくが買いたい本は見つからず。その先にある〈石川書店〉(芸能本に強い)にも行ってみたが、ココも休みだった。どうも今日はうまくいかないなあ。
また三河島に戻り、今度は三ノ輪方向へ。韓国料理屋が並ぶ通りだが、このナカに〈豚太郎〉というもつ焼き屋がある。ここのモツは大ぶりに切ってあり、串から食べると充実感が味わえる。昼間でものれんが掛かっているのだが、コレはずぼらを決め込んでいるからのようで、さすがにこの時間にはやってない。今度また来よう。
さて、三ノ輪だ。居酒屋〈遠太〉のヨコを通って、〈えどや〉という古本屋をめざす。あれ、シャッターが閉まっているぞ? しかも不動産屋の「空き物件」の表示まである。まさか、やめちゃったのか……。しかし、コレはぼくの早とちりで、もう一ブロック先にちゃんと店はあった。どうも焦っているらしい。気を落ち着けて入店する。ココは、ぼくにとっては最強といってもいい店で、行けばなにかしらイイ本が見つかる。文庫が一冊150円と安いし、サブカル系の単行本もときどき出る。だけど、たんねんに棚を見たにもかかわらず、今日は収穫ナシだった。うーん、4店も回ってナニも買えずとは。
このあと、近くの〈中さと〉に入り、カウンターの常連さんのハナシをうつろに聴きながら、チューハイを飲んだ。こうして誕生日の地味な一日は終わったのだった。それにしても、今回はゼンゼン蕩尽しませんでした。ゴメン。
2006年6月27日更新
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