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第26回「ドングリで感じる秋」の巻

日曜研究家串間努


  秋が深くなったころ、近所の森に行くと落ち葉の下に【ドングリ】がたくさん落ちていた。夏にカブト虫やクワガタを採った森である。「どんぐりころころ」という童謡で、日本人にはなじみの深い木の実だが、ドングリが何者なのか深く知る人は少ない。
  狭義ではクヌギの実を指し、一般的にはカシ、カシワ、ナラ、シイなどブナ科の木の実のことだという。大雑把にいえば大粒なのがナラの実で、小粒がカシの実だ。


「小学生も中学生も“ドングリ拾いに夢中”の図」

 

  ドングリを用いた遊びは、芯に爪楊枝を刺して【ドングリごま】にするものが有名だが、私の地域ではもっぱら【ドングリ笛】だった。
  拾ってきたドングリを学校の屋上やベランダのコンクリートで擦る。摩擦熱でドングリの硬い部分がなくなって柔らかい実の部分が見え始める。そこに名札についている安全ピンの針を差し込んで実をほじくるのである。
  最初は粉状の実しか取れないが、そのうちいっぺんに大きな実が取れるとたいそう嬉しい。それは、まるで大きな耳垢が取れたときのささやかな喜びにも通じるものだった(そんな人いますよね?)。


「“ドングリごま”はかんたんに作れる」

  途中で出てくるドングリの粉を口に入れると、遊び仲間から【ドングリを食べると吃音になる】という迷信で囃し立てられたものだ。だが、戦時中に食べ物がないときにはドングリ粉を食べたし、韓国ではドングリの粉でつくる豆腐があるというので、この俗信には科学的根拠がないのではないか。
  中が空洞になったドングリを唇に当てて息を吹き入れると“ピー”という音が出る。その単純な音が楽しいし、なんと言っても自分でゼロから作り出した音だ。ついこの間の暑い夏から、寒い冬への季節の谷間でしっとりとした秋を感じさせる音色だった。


「これが本当の“ドングリの背くらべ”だね(笑)」

  ドングリをバケツ一杯くらい拾って帰り、親に「こんなにたくさんどうするの!」と怒られた。昔はドングリは無価値であり、大量のドングリをなんとか有効活用できないかと子ども心に思っていた。ところが今では緑化促進のため『どんぐり銀行』というものを営んでいるNPOが香川県にある。
  ドングリを集めて通帳に記帳するとポイント(通貨単位は「D」で、小さなドングリは「1D」、大きなドングリは「10D」だとか)に応じて苗木と交換(払い戻しが苗木ということです)してくれるというから、時代の変化には本当に驚かされる。
  あーなんだか、大宮の「リス園」に行ってドングリを、思う存分リスに上げたくなっちゃったなー。


2009年11月10日更新


第25回「雑草が遊び道具だったころ」の巻
第24回「セーターを編んでいた時代」の巻
第23回「しり取りの切り札「る」はカルタでも困り者」の巻
第22回「失敗し続けたコウちゃん」の巻
第21回「「ライパチ」くんにも五分の魂の巻
第20回「野球のボールを作ったのは誰だ」の巻
第19回「もういくつ寝るとお正月」の巻
第18回「走れ! ピンポンダッシュ」の巻
第17回「近所に出没したアヤシイひと」の巻
第16回「子ども会っていつからあるのか」の巻
第15回「子どもの移動距離と文化の深浅」の巻
第14回「あなたは塾にいきましたか」の巻
第13回「食べものを奪い合う子どもたち──カラーそうめんの希少価値はどこへ」の巻
第12回「いじるな、子どもは、レコードを」の巻
第11回「吹き矢でプー」の巻
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第9回「カラーヒヨコがピヨピヨ」の巻
第8回「子どもの笑いのセンス」の巻
第7回「銭湯の下足札」の巻
第6回「日曜日のおでかけで作った綿菓子の甘い想い出」の巻
第5回「むかし日本の空き地には鬼がいた」の巻
第4回「マッカチンを知らないか……ザリガニ釣り」の巻
第3回「シスコーン、即席ラーメンの生喰い」の巻
第2回「落とし穴と犬のフン」の巻>
第1回「キミは秘密基地で遊んだか」の巻


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