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日曜研究家串間努

第27回「カミソリはいったい
何枚刃まで可能だろう」の巻


 私は温泉などに置いてある、使い捨ての1枚刃のカミソリを使うと、すぐに顔面流血の惨事となる。ヒゲが硬くて濃いのに、皮膚が薄いせいだろう。やはり2枚刃が肌に優しくてイイ。
 「カミソリ革命」ともいわれる、カートリッジ式2枚刃のカミソリが日本にお目見えしたのは昭和46年のこと。ジレットの製品「G2」だ。深剃りがきく2枚刃の歴史はそんなに古くないことに驚かされる。そして2枚刃の登場以降、熾烈な機能性競争が行われた。
 昭和53年にはシック「ウルトラ」、ジレット「アクタス」が首振り機能を搭載、顔面の曲線に沿って刃が流れるようにした。

 ボタンを押すと隙間から剃ったヒゲが押し出される「クリーニング機構」は昭和58年のフェザー剃刀が開発。「隙間に目詰まりしたヒゲをそのままにして置くと、固くこびりついてしまい切れ味が悪くなるのです」(同社営業企画部)。
 同社は平成7年に「ザ・ガード」という横滑り防止ヒゲ剃りを、国産で最初に発売したメーカーでもある。
 当てた肌のすべりを良くするために、スムーサーというのが昭和61年から付き始めた。平成8年にはジレットがこれに「アロエ」を入れた。前年に女性用カミソリに入れたのがヒントで、アロエの消炎、保湿作用でカミソリ負けを防ぐ。今では同社のシェービングフォームやジェルまでにもアロエが添加されているという。

「3枚刃」

 と、まあ、このように各社が、アイデア合戦を行ってきたが、貝印は「3枚刃」を登場させた。最初、知人から聞いた時には「千枚刃」と聞こえ、なんだそれはと思ったが、「3枚刃」だって充分なインパクト。剃り味と安全性というヒゲ剃りに求められる2つの性能から行き着いた結論がこれだという。1枚目の刃が毛穴からヒゲを引き出し、カット。続いて2枚目が残ったヒゲを、カット。そして3枚目がわずかに残ったヒゲを更にカットするという『超剃り残しなし』だ(同社パンフより)。今までなかったのが不思議だ。実は、世界のカミソリメーカーは次世代最重要機種として3枚刃の開発にしのぎを削っていたが、とうとう貝印が世界初成功したのだ。やったぜニッポン。では4枚刃とか5枚刃とかはどう? と水を向けると、ウフフと笑いながら、「そう何枚もあるとヒゲが詰まってしまいますから……」(同社総務)と世界初開発の余裕で応えられてしまった。でも理論的には可能性はあるらしい。(実際にいまは4枚刃が発売されているではないか)

毎日新聞を改稿


2007年2月28日更新
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