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「脇役列伝」タイトル

ヒーロー研究家立石一夫

異質な時代劇役者、薄田研二


 かつての東映チャンバラ映画で、悪役として一番斬られた役者は誰だろう? 月形龍之介か、山形勲か、進藤英太郎あたりか。意外にもっと他の役者かも知れない。
 先日そんなことを回想していたら、薄田研二の顔を思い出した。
 ほお骨が張って、目もくぼんでいる。明治男でありながら、小顔だから八頭身に近い。
 大変スマートな俳優(外見だけでなく)というイメージが強い。それは戦前には築地小劇場で「どん底」で初舞台、その後もプロレタリア劇に心血を注いだ経歴から来るものも大きい。
 幼ない頃、東映映画を見ていてこの人だけが他の俳優と、何故か異質に思えたことがある。顔が大きい、いわゆる一般的な役者と雰囲気がまるで違って見えた。
 「旗本退屈男謎の幽霊船」では、武骨な薩摩武士を好演。初めは主水之介に悪意を抱くが、主水之介の人柄を見抜き彼に協力する。
 南国・琉球にはこびる一味を共に退治する。時にユーモラスで、時に人情味あふれる侍の役はこの人の本質に近い気がして好感が持てたものだ。
 この人が出演した映画で一番強い印象があるのが「赤穂浪士」だ。東映十八番のオールスター・キャストの大作である。薄田は堀部弥兵衛を熱演。吉良邸での乱闘シーンで、敵方に襲われあわやの一瞬。娘婿の安兵衛(大友柳太朗)に助けられる。その時のセリフが笑わせた。「余計なことをするな!」と、安兵衛を一喝した。薄田の情ないやら、悔しいやらの表情が私には忘れられない。こういったかくしゃくとした老人役にも光彩を放っていた。

薄田研二

 残念に思うのは、東映は当時現代劇も多数制作していた。薄田が「警視庁シリーズ」などに出演していたら、また違う役の顔が見られたろう。人情刑事役や、悪賢い犯人役など見られたらもっと東映映画が楽しくなったに相違ない。


(生) M31.9.14
(没) S47.5.26
(出身) 福岡市西新町
<本名> 高山徳右衛門 T14年築地小劇場入り。S4年丸山定夫らと新築地劇団を結成。左翼演劇で好評を得る。ススキダ演技研究所で後進も育てた。著書に「暗転 - わが演劇自伝」など


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2006年6月28日更新
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