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「8989」

 

第19回 お好み焼きだって、ごはんだ!(1)…広島・8989

畸人研究学会今柊二



 もともと四国出身のためか、関西の出張は心がなごむ。やはり関西の食べものたちが私を呼んでいるようだ。に四国の対岸の広島ともなればなおさらだ。新幹線の改札を出れば、まずは強烈に私を呼んでいるお店に直行だ。そこは何をかくそうお好み焼き屋だ。広島駅の新幹線口を出てしばらく行くと、行きつけのお好み焼き屋「8989」がある。これでパクパクと読むのだった。お好み焼き屋で何をするかって?そりゃ、食事として広島焼きを食べるんだよ!

「8989」

 西原理恵子のマンガで、自宅でごはんとしてお好み焼きをつくったら、旦那(当時)に見向きもされなかったという悲しい話があったが、関西・四国出身者においては、お好み焼きはまごうこともなき食事であり、ごはんだ! 東京で「お好み焼き食べようぜ!」と人に言うと、「ええ?、酒飲むわけじゃないし」とか言われてしまう。要はですね、東京の人はですね、お好み焼きをおやつか、まあ酒のつまみくらいにしか思ってないわけですがな。しかしあんさん、よう聞いてほしいねんけど、お好み焼きは食事でんがな!

 なぜか? お好み焼きのメリケン粉の部分が主食にあたり、キャベツと豚肉の部分がおかずにあたり、玉子が、おかずと主食の「つなぎ」であり、ソースが定食における「汁」の役割を果たしているからだ! ついでに言うと、トッピングとしての青海苔と鰹節粉がふりかけというところですね。これらの食材が、鉄板の上で融合し、混然としつつ焼き上がることによって、完成された栄養価の高い、そしておいしい食べものが完成するです。

お好み焼き

 さらに、広島焼きの場合は、主食たるメリケン粉の部分で、肉、キャベツ、もやし、天カス、そして別に作成された焼きそばを挟み込んで、焼き上げ、さらにメリケン粉の表面のところに玉子を目玉焼き的にのっけるわけですが、主食が「そば」と「メリケン粉」という二つ登場することによってかなり満足度が高まるわけです。さらに、もっと満足度を上げたければ、主食としては餅を追加したり、そばをうどんに変えたり、おかずとしては、牡蛎やら海老やらイカを追加して豪華さを演出する方法もあります。また「イカ天」というのが広島のお好み焼き屋にあるけれど、これはイカの天ぷらが出てくるのではなく、コンビニや駄菓子屋に売っているほうの「イカ天」で(厳密には駄菓子屋のものとは違うらしい※)、これを乗せたり、鉄板でふかして焼いてもらったりという不思議なたべ方をする。同様の考え方の延長線として、トンカツを載せた広島焼きという店も西広島にあったけど、これはお好み焼きとトンカツが味でけんかしちゃって、全然おいしくなかった。

 ちなみに8989の肉玉(豚肉と玉子入り、そばつき)の値段は500円。駅前の店にしてはかなり安いが(駅ビルのなかだと700円くらい)、広島でも住宅地の方にいくと400円台もあるわけであって、これだけ安くておいしければ、それは食べないわけには行かないのだった。

お好み焼き

※お好み焼き屋で出てくるイカ天は味をつけていないらしい。


2004年5月20日更新
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