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「ガラクタ商店街」タイトル

その81
OCCUPIED JAPANの小箱と
『伝統工芸 東北のこけし』の巻

弓屋かえる堂さえきあすか



金属の小箱たち
金属の小箱たち

 2008年12月20日、3ケ月連続で大和プロムナード古民具骨董市へ行ってきました。この日も晴天。12月にしては暖かくて骨董市日和です。午前中は仕事だったので、お昼過ぎに到着したのですが、毎度のごとく、すごいお客さんの数で、人ごみをかきわけてのお宝探しと相成りました。
 ふと、小さな金属製の箱と目が合いました。塗装がところどころ剥げていて、柵と馬3頭が描いてあります。何気なくひっくり返してみると、「MADE INOCCUPIED JAPAN」の刻印があるではありませんか!!
ドキドキしながら、
「おいくらですか?」 と尋ねると、
「500円でいいよ」 とのお返事。
「買います!」 速効でお金を支払って、逃げるようにお店を離れたのはいうまでもありません。

オキュパイド・ジャパンの小箱
オキュパイド・ジャパンの小箱

 昭和20年(1945)に日本が敗戦したことにより、27年(1952)までの7年間、日本はアメリカの占領下にありました。そして、22年(1947)から27年の間に、日本から輸出するモノには、「MADE IN OCCUPIED JAPAN」の刻印が義務づけられた、という歴史があります。
 「オキュパイド・ジャパン」こと「占領下の日本」のモノたちは、物資不足の影響で、品質はいまひとつのモノが多いのですが、つくられた時代が限定でき、数も限られていることから、蒐集している人は多く、この小箱は塗装が剥げているにしても、500円だなんて、ものすごく安い値段だと思います! まさに掘り出し物! お昼過ぎまで残っていたのは、私と縁があったのでしょう。骨董市ならではのラッキーな出会いにニンマリしちゃいました。

オキュパイド・ジャパン 書籍(黒表紙)
オキュパイド・ジャパン 書籍(黒表紙)

 「OCCUPIED JAPAN」のコレクションを紹介した洋書を5冊ほど持っています。アメリカ在住のコレクター・GENE FLORENCEさんが蒐集され、書籍にまとめられたのです。こういう書籍は、モノの写真がメインなので、英語が苦手でも見るだけで楽しいです。同じモノが載ってないかなぁとページをめくってみましたが、似たような金属の小箱はあるものの、残念ながら同じモノは紹介してありませんでした。

OCCUPIED JAPAN 書籍(赤表紙)
OCCUPIED JAPAN 書籍(赤表紙)

 金属の小箱といえば、その68でもご紹介しましたが、私の心にひっかかってくるモノのひとつです。こんなデダシがいい時って、不思議と次々にやってくるもので、次に足を止めたお店にも金属製の小箱が2ついました。イギリスから仕入れをはじめて10年という女性のお店です。ひとつは菱形で、子供の頃ラジオ体操に向かう夏の朝によく見かけた、ピンク色の草花“カワラナデシコ”によく似た花とユリの花が描いてある、可憐な小箱です。もちろん日本製。「MADE IN JAPAN」の刻印と、山のマークがありました。

菱形小箱
菱形小箱

 もうひとつは、フタに「BANK OF IRELAND DUBLIN」の文字があり、外国の街並みが描いてあります。イギリス製かなと思って、ひっくり返してみると、こちらにも「MADE IN JAPAN」の刻印がありました。猫足のデザインも可愛らしく、まわりには小さな花が描かれ、フタを開けるとピンク色の布が貼ってあります。お店の方によると、「イギリスの銀行が、日本に注文してつくらせた小箱なのよ」とのこと。状態もよく、建物の赤い屋根と青い空もステキです。このような小箱は手の平にのせて、そっとフタを開ける感じも心地いいのです。宝箱って感じで愛しさが増す瞬間です。なにより、日本からイギリスに渡り、イギリスから里帰りした小箱だと思うと感慨深く、2つともつれて帰ることにしました。

イギリス銀行小箱
イギリス銀行小箱

 今回の骨董市では、金属の小箱のほかに、大量の「こけし」の姿が目につきました。大中小と300円から5,000円くらいまで。コレクターの方から出たのかな? と思うようなまとまった数が、段ボール箱やカゴに入っていたり、お店の片隅に、ちょこちょこと並んでいたり。今日会場にいるこけしを全部集めたら、相当数集まったに違いありません。
 私はジッとこけしを見ていたら、港区新橋にあるお店で、たくさんの古いこけしと出会ったことを思い出しました。店内には高さが5ミリ弱という、ものすごい小さなこけしから、高さが80センチもある大きなこけしまで、ずらりと並んでいたのです。それは今まで見たことのない不思議な景色で、一瞬竹林を連想して、森林浴をしているような、すがすがしい気持ちになったのを覚えています。凛と背筋を伸ばしたこけしたちが、ニョキニョキとタケノコのように並んでいるからでしょうか。はじめは同じように見えたこけしたちも、しばらく見ていると表情はもちろんのこと、着ている着物もみな違い、ひとつひとつロクロや手で描かれたために、色の濃さも太さも違うのに感激しました。手づくりならではのあたたかさを感じたのです。これらのこけしは、「伝統こけし」と呼ばれ、作家さんがつくったモノで、底にはサインがありました。

東北のこけし書籍
東北のこけし書籍

 そんな「伝統こけし」たちを紹介した書籍が発行されました。高井佐寿さんの『伝統工芸 東北のこけし』(光芸出版発行)です。戦前のこけしを紹介した写真集は数多くありますが、戦後のこけしを紹介した写真集はほとんどなく、戦後活動した“こけし工人”の9割近くが集まったのを機に、戦後のこけし写真集をつくられたのです。
  こけしには土湯系、鳴子系、山形系、津軽系など11系統あり、人と同じように、それぞれの産まれた土地ごとに特徴があるそうです。『伝統工芸 東北のこけし』には、系統ごとにこけしが紹介され、それも、1000体以上のこけしをカラー写真で見ることができるのは圧巻です。巻末には工人名簿が載っています。こけし収集家にとっては貴重な資料になること間違いありません。

わが家のこけし
わが家のこけし

 わが家にいるこけしもご紹介もしましょう。2つとも新橋のお店からやってきました。ひとつは高さが50センチ弱の大きなモノで、はっきりいって重たいです。無垢の木ですから。底には「湯田 小林定雄」とサインがあります。『伝統工芸 東北のこけし』の工人名簿にも載っていました。「肘折系」で、昭和8年生まれの方だそうです。もうひとつは高さが20センチほどで、お腹に達磨が描いてあります。とても繊細に描かれた達磨に驚いて求めました。底にサインはありますが、達筆すぎて読めません。「津軽系」のこけしたちを見ると、お腹に達磨を描いたモノが何体かありますから、このこけしも津軽系なのでしょうか。いずれにせよ底のサインを見て、工人を調べることができるのは、とても楽しく、こけしの世界も歴史があり、奥が深そうだと思いました。



2009年 1月 21日更新
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