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その83
東洋の宝石
「帝国ホテル・ライト館」
名刺入れの巻

弓屋かえる堂さえきあすか


ライト館の名刺入れ
ライト館の名刺入れ

 3月19日木曜日のこと。だいぶ陽が長くなってきたとはいっても、まだまだ薄暗い早朝5時。私は下弦の月に向かって、もくもくと自転車をこいでいました。目的を思い浮かべては、笑いが込み上げてきて、“あらふぉー”の自分もまだまだ幼稚というか、若いなぁと半ば呆れつつも、性格だと思いながら、目的地は某都営地下鉄の駅です。本日始発より、東京都交通局から、都電荒川線9000形をデザインした革製のコインケースが発売になるのです。
 思えば、このコインケースとは縁がありました。数週間前にたまたま乗った電車の中で広告を見て、可愛いケースだなと脳裏にインプット。17日にまた広告を見たので、駅の事務所で「コインケースください」と駅員さんに声をかけたら、「あさって19日に発売だよ。実物がさっき届いたんだけど見る?」といわれ、「見たいです」と手に取ったら、やっぱり可愛い。500円というお値段もお安いですし、行き先が「早稲田」と書かれたエンジ色の9001号、「三ノ輪橋」と書かれた紺色の9002号の2種類があり、限定5000個というのも魅力的です。早速会社の同僚で鉄道ファンである男性にメールをし、いるかどうか尋ねると、「欲しい」といわれたので、複数の注文をまとめて、早朝わが家から自転車で15分の駅に向かっていたのでした。
  始発前の地下鉄の駅は、しんとしていて不思議な感じがします。遠くから電車の音が聞こえてきたので、朝のスタートを感じつつ、私以外にもコインケースを求めて誰かいるかな? と思ったのですが、残念(?)私ひとりで、一番乗りだったのでした。うーん。人気ないのかな? まぁ、でも確実に入手できたのですから、よしとしましょう。喜んでつれて帰ったのでした。もちろん会社の男性も大喜び。「可愛いよねぇ」と大人気ない会話をして、冷やかな視線をあびたのは、いうまでもありません。

都電荒川線のコインケース
都電荒川線のコインケース

 オリジナルの限定品で革製品といえば、『IMPERIAL HOTEL TOKYO JAPAN』の名刺入れを持っています。そうです。日比谷にある帝国ホテルです。結婚一周年のお祝いに、大切な人から頂きました。元箱入りで状態がよく、遠くに見える富士山を背に、美しく豪華なホテルと、松、桜、柳などの植物が描かれているのです。裏面には、花と葉が細かい図柄で上品に描かれており、見るからに高級感溢れるデザインの名刺入れは、「さすが帝国ホテル!」と思いました。
 『帝国ホテル 写真で見る歩み』(株式会社帝国ホテル発行)を読んでみると、名刺入れに描かれているのは、大正12年9月1日に開業した「ライト館」です。米国の有名な建築家であるフランク・ロイド・ライトの設計によるもので、皇居や日比谷公園の緑と調和した大変美しいホテルだったそうで、「東洋の宝石」と称されていたとか。写真を見ても建物の素晴らしさはもちろんですが、空間の取りかたの見事さ、植物との調和の美しさに、うっとりしてしまします。
  しかし、「ライト館」の開業日は、驚くことなかれ、関東大震災が起きた日なのですね。被害は最小限に留められたことから、大事にはいたらなかったそうですが、なんとも劇的なスタートです。その後、昭和初期の華やかな時代から、戦争の時代、終戦を迎え、GHQによる接収を経て、日本の復興とともに歩んできたという、「ライト館」は波乱万丈の時代を生きてきたといえます。昭和17年生まれの義理の母に、「ライト館に行ったことありますか?」と尋ねたら、「子供だったから行ってないわよ。前を通ったくらいかしら。だいたい当時のホテルは敷居が高くて、今みたいに誰でも行けなかったわよ」、「そうそう、格式があったのよねぇ」と親戚の叔母様もいっておられました。確かに、王室の方々や大統領、マリリン・モンローに、多くのハリウッドスターたち、昭和12年にはヘレン・ケラー、昭和4年には、飛行船・ツェッペリン伯号とともに来日したエッケナー博士まで滞在しておられます。余談ですが、ツェッペリン伯号がデザインされた古いモノがあります。玩具、文房具、食器類などで、当時の人気ぶりがうかがい知れますね。わが家にも数点いるのでした。そんなあこがれのツェッペリン伯号に乗ってこられた方々が滞在されたなんて、あらためて帝国ホテルの歴史の深さに感激しました。
  残念なことに、名刺入れについての記述はありませんでしたが、「ライト館」時代のパンフレットがカラーで紹介されており、その中の1枚が、この名刺入れと同じ絵柄でした。背に富士山、ホテルの手前に松、桜、柳などの植物が、縦長に描かれているのです。この名刺入れは、帝国ホテルで販売しておられたのでしょうか。数があれば、もっと目にしているでしょうから、販売したというよりは、記念に配られたのではないかと思っているのですが…。
そんな歴史ある記念品が、私にとって、結婚一周年の記念品となりました。

ライト館名刺入れ裏面
ライト館名刺入れ裏面



2009年 3月 25日更新
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