東日本大震災から1週間が過ぎた頃、花屋さんの店先に、大量の花があふれていました。近寄ってみると、お値段がかなり安く、どうしてかと尋ねると、東北へ出荷されるはずだった物が、東京の市場でストップしたために、大量に入荷したとのこと。食品ではないナマモノには、こういうことも起きるのかと、黄色いフリージアとカスミ草、ピンク色のチューリップを、抱えられるだけ買って帰りました。‥‥といっても、ベビーカーを押しているので、たかが知れていますが、花を買ったのは桃の節句以来のことです。電気を消した薄暗い台所に花を飾ると、暗かった部屋がパッと明るくなりました。まるで、春が来たようです。
春といえば、お彼岸のお墓参りに行く途中に、大きな柳の木があり、見上げると、黄緑色の小さな新芽が、ゆらゆらと揺れていました。白い木蓮の花も咲いていて、どこからか、沈丁花の香りもします。よく見ると桜の蕾も少しだけふくらんでいました。まだまだ寒くて、冬だと思っていましたが、もう春なのですね。時間がゆっくりと、確実に流れていることを感じます。
ここより北にある被災地は、もう少し春の訪れは遅いのでしょうが、どうか、優しく、力強い春の力が、心も身体もあたたかく包み込んでくれますように‥‥。
今回ご紹介するのは、戦前の絵葉書2枚です。サクラソウとユリの白黒写真に、桜のような、きれいなピンク色で彩色がしてあります。独特の色合いですが、可憐で美しく、うっとりと眺めてしまうのです。当たり前のことですが、色があるっていいですね。春を感じさせてくれる色は、元気を与えてくれます。