NO.35に続き、浅草のお話です。話が前後しますが、境内からのスタートです。
まずご紹介するのは、戦前の浅草寺絵葉書です。前回より、もっと古い時代のモノで、上から直に彩色しているのが特徴です。明治時代のモノだと思うのですが‥‥。そういえば、「明治は遠くになりにけり」なんてセリフも、10年くらい前までは、業者さんとの会話に普通にでてきたものですが、そんな話もでないくらい遥か彼方、大昔って感じになりました。そんな時代から、浅草寺はこんなに立派な本堂を構え、仁王門(現・宝蔵門)も見事だったのです。人と比べると、本当に大きい門です。もちろん、現在も大きくて立派で、上手に写真撮ろうと思っても、枠内に収めるには、かなり離れないと全体が撮れません。自分1人なら、走ってでも全体を撮るのですが、抱っこしている娘がぐずりだしたので、仕方がありません。中途半端な写真ですが、これもご愛嬌、早朝探検の記念です。
参拝も無事に終わり、達成感とともに、晴れ晴れとした気分になりました。本当は、護摩供を申し込もうと思ったのですが、さすがに朝早すぎて受け付けておられませんでした。なんせ6時過ぎですから‥‥。けれど、昨日受け付け分の護摩供がはじまっており、静かな本堂には、お坊さんのお経が、響き渡っています。ますます、すがすがしい心持ちになったのは、いうまでもなく、しばらく目を閉じて聞いていると、わが身も引き締まる思いです。
仁王門を出ると、目の前は仲見世通りです。たくさんの商店がずらりと並ぶ景色は、楽しそうで、いいですね。着物姿にカンカン帽を被った御仁が、数人いらっしゃいますが、粋ではありませんか! ちなみに、カンカン帽は明治末頃より、日本で流行りはじめたそうです。そして、なんといっても観光地での、お楽しみのひとつはお買い物でしょう。普段見ないモノや観光地ならではの記念品、お土産など、ひとつひとつ手に取りながら選ぶのは、ワクワクドキドキ。楽しいことこの上なし。さて、参拝記念に、なにかお土産を買いたいものです。まずは、故郷に向けて便りでも出すべく、絵葉書を選びましょうか。写真もいいけれど、子供も授かったことだし、可愛らしいモノを選びましょう。
「これこれ、エンボス加工されたやつで、真ん中には大きな仁王門の写真と、まわりに子供のオモチャと、鳩が描かれた絵葉書。これがいいな。これを1枚くださいな」
親の鳥好きが子供に伝染するかはわかりませんが、今のところ、鳩に一番興味を持っているわが娘です。その様子を書いて送りましょう。
次に視界に飛び込んで来たのは陶器屋です。いろんなやきものが並んでいます。さてさて、今日の記念に小皿でも買いましょうか‥‥と思った時です。
「あれ? さっき買った絵葉書と同じ絵柄のお皿だよ! 絵葉書とお揃いの小皿があるなんてビックリ! 欲しい! 欲しい!」
絵葉書とお皿がお揃いなんて、はじめて見ました。私的には大発見です。さすが浅草寺ですね。ほかにもお揃いのモノがあるのでしょうか? でも、もう今日はこれで充分。大満足のお買い物ができました。当然のことながら、買った絵葉書は、もったいないから、使わずにおきます。
‥‥‥以上、仁王門を出てからは、私の空想話でした。
もちろん、わが家にやってきた絵葉書と小皿は、同じところで買ったわけではありません。偶然手に入れたモノが、同じ柄だったのです。いやはや驚きました。ひさしぶりにワクワクした出会いでした。
おしまいに、今も買えるお土産をご紹介しましょう。株式会社箱長の文箱です。桐箱に布でつくられた雀が3羽、デザインされています。雀に惹かれて、だいぶ前に求めました。こちらでは、手鏡などの小物から、家具や仏壇という大物まで、いろいろつくっておられますが、桐は軽くていいですね。木が落ち着いた色合いなので、布地でつくられたものが、なおのこと鮮やかに映えているように思います。そうそう、それこそ、箱長は明治7年に創業された桐工芸の老舗です。この小皿と絵葉書が売られていた時代には、当然のことながら営業しておられました。
そんなことを思いながらの、早朝浅草散歩、そろそろお開きといたしましょう。