一見して、懐中時計を模したとおぼしきケース。フタの中央には、毛まで細かく表現されたリアルな描写のライオンが、精密なプレスでデザインされています。
10年ほど前になりますか、出会った瞬間、ものすごく惹かれるものがあって、裏返したりフタを開けたりして、眺めまわしてしまいました。残念ながら、表面にも中身にも、製造国やメーカー名を記した刻印はなく、どこで作られたのかはわからなかったものの、私のツボをつくものがあったのでしょう、即お持ち帰り決定。
なんというか、携帯できる古いモノというのは、お家に飾っておくだけのモノにくらべて、よりロマンチックな感じがしませんか?
全長55ミリ、手のひらにのせると、ちょうどよい大きさ。ライオンのディテールも手伝ってか、ギュッにぎりしめた感触も、心地いいのでした。そして、年月を経た真鍮ならではの、ちょっと黒ずんで重厚感のある色合いがまた味わい深く、古いモノ特有の存在感にあふれています。
時計でいう、竜頭にあたるところを押すと、気持ちよくパチン、と音がして開きました。中はごらんのとおり、しっくりとはめ込まれた内貼りがあって、浅いお皿のような容器になっています。用途はなんだったのでしょう、薬入れだったのでしょうか。
よほど細工がよいのでしょう、閉める時も、パチンと音がしてしっかりと閉まり、まったくガタがありません。
裏はつるりとして、撫でまわしても気持ちの良い感じ。
出会って10年、そろそろ実際に使って愛でようかなあ。大切な写真を入れて、ロケットペンダントにしようかしら。
【おまけ】
8月の中旬に里帰りしてきました。東京はまだ猛暑だったので、田舎は朝晩涼しくて、やれやれ助かったと思ったものです。もっとも、戻るころには東京も涼しくなりつつあり、いっぺんに秋が訪れたような気分でした。
そして、涼しい風とともに、義理の父が亡くなりました。
私はこの間、とても多くのことを学びました。例えば、着物の喪服は、6月と9月は「ひとえ」を着て、夏は「絽」を着るのが正式の装いなのだということ。でも、現在では6月から9月まで絽を着ることが多くなり、ひとえは貸衣装もありませんでした。
古いモノもそうですが、時間が流れると、どんどん変化していきます。便利になってよかったと思う反面、さびしい気持ちもあります。そして、伝えていきたい気持ちも。
駆け足で走りぬけた半月‥‥。今年の夏を忘れないでいようと思います。
「おじいちゃんは、お星様になったんだよね」明るい娘の言葉です。