第２４回　魚が食べたい日々（３） …飯田橋串鐡「鮭＋もつ煮定食」

　焼き魚のなかで、中毒性が高いのが、やはり塩鮭。東海林さだお大先生も、塩鮭のひんまがった先っぽがとてもおいしいと言われている。しかし、家庭でならいざ知らず、家の外で昼飯としてそれを食べようと思うとかなり難しい。吉野屋が開発した「牛鮭（今は豚鮭）定食」は魚が廉価な定食で食べられるという意味では偉大だったが、チェーン店ではあれが限界があり、とても鮭の先っぽのおいしさまでは至らない。「じゃあ、おいしい店教えてあげるよ」と言われて知人が連れて言ってくれる店は大体パターンが決まっている。小料理屋か小さい割烹で、白木のカウンターがあって、ぶすっとした板前風のおやじかなんかが夜の客をあてこんで昼定食を出している。大体魚でも粕漬系が得意で、値段も１０００円以上。大体４０台以上の金持ち管理職サラリーマンか自宅通勤の給料全部小遣いＯＬばかり。当然、彼らは馬鹿食いはしないので、量も上品。なんか書いているうちに腹立ってきたな（笑）。まあ、俺も３０台半ばを越えたしさ、たまにはいいけど、毎日は１０００円も昼飯にはとても出せませんわ。

　そこでどの店を推すのか？ そこで紹介するのが飯田橋の串鐡（くしてつ）。名前の通り、串焼きというか、焼き鳥屋で、昼のランチも得意技が焼いた鳥の巨大な肉がドバッと載っている「きじ丼」だが、私は「鮭＋もつ煮定食」をオススメしたい。これは実によくできている定食。前述した吉野屋の「豚鮭定食」につながるサラリーマンの食べたいものを集めた定食なのだ。さすが焼き鳥屋だけのことはあって、鮭の焼き加減は実に絶妙。肉厚の塩鮭のはしっこは脂と塩の最高のハーモニー。たっぷりとした大根おろしも実にナイス。魚につけて食べてもよし、口直しに食べてもよし。さらに付けあわせのモツ煮がまたいい！ あっさりとした味噌たれでこんにゃくとともに煮込まれたもつに七味とうがらしをパパッと振って食すと、こりこりとしたモツが「元気になれよ！」と言ってくれているみたいだ。さらに、塩味がややきつめのたっぷりとしたキャベツのおしんこ、キャベツの味噌汁が伴奏をかなでる。そしてこれだけの素晴らしいおかずたちをしっかりと受けとめてくれるのが、大量のごはん！

　で、これで６００円。税込みだ（泣）。偉い！偉すぎる！ １０００円で４００円もおつりがあるぞ！ 今日は仕事帰りに氷結果汁（オレンジ）も１００円の古本文庫本も買えるぞと涙ぐみながら、お父さん達は職場に帰るのだった。

2004年７月30日更新
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