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第26回 『仲よし小道』 |
日溜まりの公園で、暮れなずむ街角で、夜のしじまの中で、ひとり「童謡」を口ずさむ時、幼き日々が鮮やかによみがえる…。この番組では、皆様にとって懐かしい童謡の歌碑を巡ってまいります。今回は、『仲よし小道』です。
小学校の登下校時、近所の子供達がわいわい言いながら家の前を通っていきます。彼等を眺めながら、「そういえば、そんな時期もあったなぁ」と感慨に耽っていると、ふとこの歌が口をついて出てきました。作詞は三苫(みとま)やすし、作曲は『かもめの水兵さん』の河村光陽です。
『仲よし小道』(昭和14年1月に同人誌『ズブヌレ雀』に発表)
作詞 三苫やすし(みとまやすし、1900−1949)
作曲 河村光陽(かわむらこうよう、1897−1946)
1.仲よし小道はどこの道
いつも学校へみ?敬??桧??髑????よちゃんと
ランドセルしょって元気よく
おうたをうたって通う道
2.仲よし小道はうれしいナ
いつも隣のみよちゃんが
ニコニコ遊びにかけてくる
ナンナン菜の花匂う道
3.仲よし小道の小川には
とんとん板橋かけてある
仲よく並んで腰かけて
お話するのよ楽しいナ
4.仲よし小道の日暮には
母さまお家でおよびです
さよならさよなら又明日
お手々をふりふりサヨーナラ |
小学校低学年の男の子と女の子の無邪気で楽しい日々。聞く大人に甘酸っぱい感傷を与えるこの歌は、まさに「なつかしの童謡」といえます。ところで、もし作曲者がこの詞の持つ明るさをストレートに表現したいのなら、『靴が鳴る』(大正8年)のように長調の曲を付けそうなものですが(試しに『どんぐりころころ』の曲に乗せて『仲よし小道』を歌ってみましょう)、『仲よし小道』では「ヨナ抜き*短音階のスキップ・リズム」を採用しています。ここに河村光陽の工夫が感じられます。無論、彼も作詞者同様、子供達の純真可憐さを表現するのに心を砕いていました。その証拠に五線譜の冒頭に「可憐優美に、ゆっくりと」という書き込みがしてあります。
さて『仲よし小道』の歌碑ですが、埼玉県の久喜青葉団地の中、青葉小学校の通学路の脇にあります。この通学路に沿って、『赤とんぼ』、『この道』、『七つの子』、『仲よし小道』、『靴が鳴る』、『めだかの学校』、『故郷』の歌碑が建っており、さしずめ「童謡の小道」といった風情があります。『仲よし小道』の歌碑は、道のちょうど中間地点、『七つの子』の碑と道をはさんだ形で建てられています。
近年、各地で老朽化した団地が取り壊されたり、建て替えられたりしていますが、この碑達にはずっとここにいて、ランドセルをしょった子供達をいつまでも見守っていてもらいたいものです。
*ヨナ抜き音階 ド〜シまでの7つ音階のうち、4番目の「ファ」と7番目の「シ」を抜いた五声音階の別名。日本の通俗歌謡に多いメロディー。ヨナ抜き短音階とは短調のヨナ抜き音階のこと。ちなみに『靴が鳴る』はヨナ抜き長音階、『どんぐりころころ』は長音階(七声音階の)。
[参考文献 |
『抒情歌愛唱歌大全集』ビクターファミリークラブ 平成4年 |
『河村光陽作曲 中根庸子・梅沢雅子 愛唱童謡曲集』キング音楽出版社 昭和23年 |
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場所:埼玉県久喜市久喜青葉団地内
交通:JR・東武伊勢崎線「久喜」駅東口より朝日バス「青葉団地」行きで「団地中央」バス停下車、徒歩4分。
2004年12月20日更新
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