ご紹介するのはペン先です。その名も"鐡帽ペン先"。旧陸軍のマークが描かれている鉄帽(ヘルメット)の台紙に、鉄帽型のペン先という、文房具売り場に並んでいたら、真っ先に視界に飛び込んできそうな、インパクトのある、シロモノなのです。う~む。すごすぎるデザインです。発想がすごいですよね。それも、「他品より寿命が三倍以上永い」そうで、「世界最新型」なんだとか‥‥(本当かな?)。"TETSUBO"の文字が、海軍の錨マークと、陸軍の星マークではさまれているところに、時代を感じることができます。ほかにも変わり種のペン先ってあるのでしょうか? まだまだ見たことのない文房具があるなぁと、しみじみ思った出会いでした。
ペン先を見ていると、子供の頃、インクをペン先につけて、漫画を描いて遊んでいたせいか、インクの匂いや、ペン先に力を入れると、線が太くなるとか、紙質がよくないと、ひっかかるとか、そんな独特の感触が、ぼんやり浮かんできて、懐かしい気持ちになります。ペン軸にGペンと丸ペンを、挿しかえながら書いていたけど(イッチョマエに‥‥)、考えてみたら、田舎の薬局を兼ねた小さな文房具屋で、よく売っていたなぁと思ったりして。ペン先だって、1個ずつ売ってくれたような。当時は、まだまだ需要があったということなんでしょうね。
話は変わりますが、先日、京都の骨董仲間Kちゃんが、わが家にやって来ました。そもそも京都に住んでいる彼女と、なぜ知り合ったのかというと、高校生だった彼女が、京都にあった骨董屋で、『月刊魔法瓶』という、私を含め、数人でつくっていた、ささやなな骨董情報誌(?)を、入手してくれたのがはじまりです(コピー誌です)。
今回は、昔の『月刊魔法瓶』を読みたいという話から、わが家に来てもらったのですが、一緒に読んでいたら、平成5(1993)年12月号に、友人の空瓶28号さんが、No.85でご紹介したベビ新辞典について、書いていたことを思い出しました。私が書いた文面と違い、グッとくる内容に、懐かしさと、時間の流れを感じたのですが、空瓶28号さんが、モノときちんと向き合いながら、集めておられる姿に、いつも感心したり、学んだことを思い出し、ひさしぶりの再会を記念して、その文面もご紹介したいと思いました。
不便を楽しむ
空瓶28号
必要以上に小さな物を見ると、つい、買ってしまう。先日も東寺の市で小さな錫で出来た茶釜を買った。既に普通の大きさのそれは持っていたので、この2~3㎝の物と2つ並べたらおもしろいだろうと思ったのだ。こんな調子で普通のサイズの物のヨコに1~2㎝の煙草盆、1㎝位の徳利とハカマなどを買うのだが、それより小さい物を見るとまた手が出てしまう。小さな物の世界が大きく広がっていくのである。が、しかしサイズの壁に突き当たる物もある。(私しの知る限りでは)そんな1つに国語辞典がある。私しの手元にあるのは、昭和11年至誠堂発行の「ベビ新辞典」で、縦5㎝、横4㎝の小ささだが、906ページもあるしっかりとした物である。言葉を引く時などは、虫メガネと落ち着いた心がないと、うっかり指を滑らせてすぐに数ページ飛んでしまう。だから急ぎの時にはなかなか引けないし、かたや時間がたっぷりあるからといって、決して昼寝の枕にもできない。ちょっと骨の折れる国語辞典である。