No.91、No.103にひきつづき、水洗マッチをご紹介します。今回は、明治5(1872)年に、東京で最初に発行された日刊紙『東京日日新聞』(現在の『毎日新聞』の前身)のマッチケースです。ご覧ください、思わず「月の沙漠を~はるばると~」と歌ってしまいそうな、夜の砂漠の絵が描かれたマッチケース。人が寝静まっている夜の間も、らくだとともにもくもくと歩く人のように、たんたんと新聞をつくっているというイメージで、このパッケージなのかしらん? と思ったのですが、どうなのでしょう。たぶん、なにかしら意味があると思うのですが、パッと見た時は、ちょっと暗いデザインだと思いました。
横の2面にも、砂漠の絵が描かれ、正面には『東京日日新聞』の文字が、右横書きで描いてあります。箱の大きさは、縦60ミリ、横90ミリ、高さ35ミリです。
そして、裏面には『大阪毎日新聞』、『點字新聞』、『エコノミスト』、『サンデー毎日』、『東京日日新聞』の文字がズラリ。それぞれの創刊した年を調べてみると、『大阪毎日新聞』は明治21(1888)年(前身紙『大阪日報』は、明治9(1876)年創刊)。『點字新聞』は大正11(1922)年。『エコノミスト』は大正12(1923)年。『サンデー毎日』は大正11(1922)年。『東京日日新聞』は先にも書きましたが、明治5(1872)年です。いまさらながら、現在も発行されているそれぞれの新聞、雑誌を思うと、歴史の深さに感心するのですが、『東京日日新聞』が、『毎日新聞』に改名されたのが、昭和18(1943)年なので、このマッチケースは、大正12年から昭和17年までの間につくられたことになります。
そういえば、童謡『月の沙漠』が発表されたのが、大正12(1923)年ですから、この絵柄は、『月の沙漠』の歌詞をイメージして描かれたのかも知れませんね。製造年もそのころと考えて、間違いないのではないでしょうか。
No.103の瀧口屋水洗マッチと同様に、このケースにも、側面にマッチを擦る薬板がはめ込んであります。
おまけ
『月の沙漠』が歌われた頃から、ここに立っていたんだろうなぁと、見上げた美しい巨木たち。小石川植物園にて。