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その89
クリスマスにキューピーの
ペーパーウエイトの巻

弓屋かえる堂さえきあすか


懐中時計を持つキューピー

   意外だといわれることもあるけれど、私の集めているモノたちの中に、キューピーは、ほとんどありません。“ほとんど”と書くのですから、数個は持っているのですが、絵葉書とか、ビン、小皿くらいでしょうか。景山忠弘さんにも『コレクター・骨董市雑学ノート』(ダイヤモンド社発行)の中で、私の集めてきたモノに対して「なに一つ珍品と思われるものはないな」と書かれたことがあるのですが(その10 お相撲貯金箱の巻参照)、私は王道と呼ばれるモノは、ほとんど持っていなくて、地味でヘンテコなモノばかりに惹かれ、集めてきたのでした。その美意識?思い入れ?に感心してくださって、景山さんとは大変親しくさせていただいたこと、王道コレクションのひとつと思われるキューピーについて考えていたら、ふと思いだしました。

   というのも、平成21年も残りわずかとなった12月のこと。ひさしぶりに訪れた下北沢の月天さんで、視界に飛び込んできたのが、キューピーのペーパーウエイトだったからです。ガラスケースから取り出して、手のひらにのせてみると、なんだかこの子をつれて帰りたいという欲望がフツフツと湧いてきたのです。ワンピースを着てお座りしたキューピーは、ひざの上に懐中時計の形をした方位磁石を持っています。この方位磁石というのが、私的に惹かれる重要な個所でありまして、和洋折衷といいましょうか、ペーパーウエイトでありながら、方位磁石でもあるという、一石二鳥のような楽しみ方ができるデザインに、ステキさを感じるのです。そして、全体が金属でできているのも魅力のひとつです。金属製というと、人間や動物など表情があるものは、色がないぶん怖くなったり、ちょっとイメージが違うなぁと思うことがあるのですが、このキューピーは、上手な方がつくられたのでしょう。とても可愛らしい表情をしています。底には「MADE IN JAPAN」の刻印があり、ますますつれて帰りたいと思いました。

   そういえば、少し前に松屋銀座で、「誕生100年 ローズオニール キューピー展」が開催されていました。100年前というと、1909年だから明治42年です。生みの母親であるローズオニールさんは、35歳の時にアメリカの婦人雑誌のクリスマス特集号で、キューピーを発表したそうですが、クリスマスを目前にして、このペーパーウエイトのキューピーが視界に飛び込んできたのは、偶然なのでしょうけど、偶然でないような、私の中では、なにか縁があったんだなぁと思ったりして。

新春を祝う瓶マヨネーズ

   その後、近所のスーパーで、2010年の新春を祝う記念の瓶マヨネーズを見つけました。ビンに描かれたのは、もちろんキューピー! 来年の干支である寅年にちなんで、寅の着ぐるみを着ているキューピーが、ビンのまわりにぐるりと描いてあるのです。あまりにも可愛らしくて、ついつい買ってしまいました。「ご使用後は、ガラスポットとしてお楽しみいただけます」なんて書いてあるし。毎年でていたのでしょうか? 気がつかなかったなぁ。

   さて、早速わが家のクリスマスツリーと一緒に飾ってみました。このクリスマスツリーは、高さが27センチほどの小さいモノで、アメリカ製です。電源を入れると下の電車がクルクルと動きます。毎年下駄箱の上に飾っているのですが、飾りもみんな付いているので、横着者の私には、パッと箱から出すだけでよく、とても気に入っています。このツリーを玄関に飾ると、今年も終わり間近だなぁと思い、しんみり眺めてしまいます。1年間元気に過ごせたことに感謝しながら…です。

クリスマスツリーと一緒に



2009年12月24日更新


その88 雪が谷大塚からやってきた、「溶鉱炉水滴」と「スズメの豆皿」の巻
その87 まぼろしの神保町絵葉書とまぼろし骨董館の巻
その86 防虫消毒香料発散機「ムシキラー」の巻
その85 笠間骨董我楽多市と一富士二鷹三茄子筆立ての巻
その84 喫茶店の中の東京タワーと『世界一の東京タワー』絵葉書の巻
その83 東洋の宝石「帝国ホテル・ライト館」名刺入れの巻
その82 昭和初期につくられた簪を入れた小引き出しの巻
その81 OCCUPIED JAPANの小箱と『伝統工芸 東北のこけし』の巻
その80 マツダセレクトスイッチ電気時計と『実用 電気時計総説』の巻
その79 『山梨水晶』カタログと“ブルームーンストーン”に恋をするの巻
その78 “タンク式洗濯器”と向田邦子さんを真似て古い小鉢を買うの巻
その77 たばこ祭りで買った煙草煎餅と煙草図柄皿の巻
その76 昭和13年ライオン常用日記と手帳の巻
その75 「防諜」を訴える三猿貯金箱の巻
その74 ビー玉、水晶、真珠、まんまるに惹かれての巻
その73 房総からやってきたウランガラスのビー玉と貝殻の巻
その72 切れ端の写真立てと国旗柄写真立ての巻
その71 富山の薬箱はひきだしの巻
その70 水アイロンと桜&鈴印のコテの巻
その69 『がらくたからもの』対談と主張する平和記念“糸とおし”の巻
その68 宇都宮からやって来た鳳凰が描かれた小箱の巻
その67 野球少年柄のランドセルとランドセル柄の帯の巻
その66 三峯神社と戦前の迷子札の巻
その65 浦賀からやってきた江戸時代の灯芯押さえの巻
その64 戦前の牛乳ビンは花瓶の巻
その63 便利な実用品『回轉式踏台』の巻
その62 美味しい野菜&野菜種袋の巻
その61 元旦の福袋!日満ポンプと戦前鉛筆削りの巻
その60 国産マッチ創始者『清水誠』とマッチ入れの巻
その59 “萬年海綿器”と“スタンプモイスチャー”の巻
その58 上野「十三や」のつげ櫛の巻
その57 斎藤真一『紅い陽の村』と『夫婦岩』の大皿の巻
その56 ケロちゃん色の帯と『LUNCOの夏着物展』の巻
その55 こわれてしまった招き猫「三吉」の巻
その54 下北沢の『古道具・月天』と画期的発明鉛筆削りの巻
その53 無料で魅力的なモノ、例えば「ケロちゃんの下敷き」の巻
その52 時間の整理と時間割の巻
その51 自分へのごほうび、昔の文房具に瞳キラキラの巻
その50 アンティーク家具を使ったブックカフェで…の巻
その49 『Lunco』と『小さなレトロ博物館』、着物だらけの1週間の巻
その48 コルゲンコーワのケロちゃんと『チェコのマッチラベル』の巻
その47 「旧軽の軽井沢レトロ館にてレースのハンカチを買う」の巻
その46 濱田研吾さんの『脇役本』、大山と富士山型貯金箱の巻
その45 横浜骨董ワールド&清涼飲料水瓶&ターコイズの指輪の巻
その44 『セルロイドハウス横浜館』とセルロイドのカエルの巻
その43 奈良土産は『征露軍凱旋記念』ブリキ皿の巻
その42 ブリキのはがき函と『我楽多じまん』の巻
その41 満州は新京の絵葉書の巻
その40 ムーラン鉛筆棚の巻
その39 「Luncoのオモシロ着物柄」の巻
その38 ペンギンのインキ壷の巻
その37 「更生の友」と「ナオール」こと、60年前の接着剤の巻
その36 鹿の角でできた「萬歳」簪の巻
その35 移動し続けた『骨董ファン』編集部と資生堂の石鹸入れの巻
その34 「蛙のチンドン屋さん」メンコと亀有名画座の巻
その33 ドウブツトナリグミ・マメカミシバヰの巻
その32 ガラスビンと生きる庄司太一さんの巻 後編
その31 ガラスビンと生きる庄司太一さんの巻 前編
その30 『家庭電気読本』と上野文庫のご主人について‥‥の巻
その29 ちんどん屋失敗談とノリタケになぐさめられて‥‥巻
その28 愛国イロハカルタの巻
その27 ちんどん屋さんとペンギン踊りの巻
その26 「ラジオ体操の会・指導者之章」バッチと小野リサさんの巻
その25 針箱の巻
その24 カエルの藁人形と代用品の灰皿の巻
その23 『池袋骨董館』の『ラハリオ』からやってきた招き猫の巻
その22 東郷青児の一輪挿しの巻
その21 西郷隆盛貯金箱の巻
その20 爆弾型鉛筆削の巻
その19 へんてこケロちゃんの巻
その18 転んでもただでは起きない!達磨の巻
その17 ケロちゃんの腹掛けの巻
その16 熊手の熊太郎と国立貯金器の巻
その15 単衣名古屋帯の巻
その14 コマ太郎こと狛犬の香炉の巻
その13 口さけ女の巻
その12 趣味のマーク図案集の巻
その11 麦わらの鍋敷きの巻
その10 お相撲貯金箱の巻
その9 カール点滅器の巻
その8 ピンク色のお面の巻 後編
その7 ピンク色のお面の巻 前編
その6 ベティちゃんの巻
その5 うさぎの筆筒の巻
その4 衛生優美・リリスマスクの巻
その3 自転車の銘板「進出」の巻
その2 忠犬ハチ公クレヨンの巻
その1 野球蚊取線香の巻


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