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第30回 カレーにしてね(1)
都内3大カツカレーその1 神保町「まんてん」

畸人研究学会今柊二


カツカレー カレーライスに関しては、うんちくをたれる人がラーメンほどではないが多い気がする。こういう人たちの特徴は、ラーメンととても似ていて、あまり値段のことを気にしないで、うまければ突進していくのであった。定食の聖地、神保町でも実は数々のカレーの名店があるのだけれど、どの店も結構高い。当然金額にひるまないカレーマニアたちはそれらの店に殺到するわけだが、この街の多数をしめる古本マニアたちも、これらの高いカレー屋が結構好きだ。古本マニアというのは、反面面倒くさがりやの側面も持っているので、一つの店に決めてしまえば、ずっとその店に通いつづけるからである。

 ゆえに、神田古書センター内にある「ボンディ」なんかは、同ビルにある芳賀書店の訪問とセットになっていて、「神保町に来た時のお約束」みたくなっているんじゃないかね。スマトラカレーの「共栄堂」なんかも同じだろう。この両店とも1000円程度、もしくはそれ以上の予算は必要となるのだけれど、体が反応してしまうんだろうな。

 ただ、私の場合は神保町ビギナーの頃から、1000円をランチに使うほどの経済力がなかったため、この2店の魔力にはいまだつかまっていない。とは言っても、神保町でカレーを食べないわけではない。以前記したように「さぼうる2」などはその一例である。

 「さぼうる2」はその充実度からいっても、それほど高いわけではないが、もっと安いということで言えば、神保町のカレーのなかでも代表格だったのが、「シャトー」。伊峡のそばにあった。「あった」というのも、実はこの店2004年時点では閉店してしまったからだ。大盛りカレーが350円だったりとスゴイ安さだったので、いつか入ろうと思っているうちに店がなくなってしまった。無念。ただし、同じ系列の味で「まんてん」はまだ健在だ。この店、さがすのにちょっとしたコツがいるけど、白山通りを水道橋に向かって歩いていく途中を右に折れた路地にある。店は定食部門とカレー部門に分かれていて、定食部門の方のとんかつ定食550円も、やや油っぽいものの、なかなかおいしいが(特に付けあわせのケチャップ味のスハゲテイが泣けてくる)、ポイントはやはりカツカレーだ。これもステキな550円。ベースは挽肉カレーで、ライスの上には結構大きいカツがドドンと乗っている。

「まんてん」

 この店のさらなるポイントは、これにアイスコーヒーがついていることであった。カツカレーとアイスコーヒーの組みあわせははてしなくウマイ。魔力的にウマイ。エネルギッシュかつアブラギッシュなカツカレーを食べた後に喫すアイスコーヒーが食事としての深い完成感を与えてくれる。

カツカレー

 …しかし、栄養学的に考えても、いやもっと言えば、胃弱の人の立場で考えれば、これはかなりキツイ組みあわせである。食べ終えた直後の快感としばらくしたあとの胃痛の苦しさが絶妙だね。そういう意味では、「自分にどれだけ体力が残っているか」を推しはかるには絶好の食べものだと言えるでしょうな。


2004年12月9日更新
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