下北沢の、今はなき露崎商店(建物がなくなった時は、本当に驚きました)の2階に、古道具・月天があった頃、出会ったのは横幅74ミリ、縦40ミリ、厚さ15ミリの、細長い箱でした。金属製で、箱に描かれていたのは、"BUNGUBAKO"という文字。とっさに、「文具箱なんだ。可愛い!」とつぶやき、手にとってみると、小さいながらも、きちんとしたつくりで、手のひらにのせてギュッと握れるサイズも、ちょうどいいなぁと思いました。錨と桜が描かれているので、海軍が連想されますが、どうなのでしょう?
フタを開けてみると、 朱肉に墨、残念ながら筆は入っていませんでしたが、筆記具が入るスペースもあり、筆が取り出しやすいように、フタを開けるとバネで筆が持ち上がる構造になっています。携帯用文具箱として、シンプルでありながら、実に機能的といいますか、凝っていますね。店主のTさんいわく、「携帯用の筆記用具入れは、たまに見かけるけど、もう少し小さいモノが意外と多く、だいたいシンプルな箱だから、文字がプレスしてあるこの文具箱の意匠は、出来のいいモノだと思うよ」と話してくれました。
携帯用文具箱といえば、料理家の飛田和緒さんが、小さい桐の小箱に入った懐中硯を持ち歩いておられ、旅先などで葉書を書かれるという話を、ずいぶん前に読んで、いいなぁと思ったことがありました。左利きの私にとって、毛筆はうまく書けないので、敬遠しているのですが、筆で文字が美しく書けるのって、あこがれています。
気になるお店 雑貨&喫茶のお店・包み計画
私の中で、関西が大ブームの時期がありました。カレンダーで21日が休日だとわかると、ワクワクしながら計画をたて、向かった京都、大阪、神戸。メインはもちろん骨董市。東寺、四天王寺をまわって、お気に入りの骨董屋、古本屋などのお店もまわること。今みたいにインターネットや携帯電話での情報収集はできなかったから、紙媒体から情報はゲット。モノとの出会いも今より緊張感がありました。だって、ヤフーオークションもないわけですから、探すのも大変というか、でも楽しい大変でした。
そんなモノ探しの旅の途中で、楽しみなことがもうひとつ。ステキな喫茶店で、コーヒーを飲むことです。純喫茶などを見つけては入り、出会ったモノを眺めたり、次に向かうエネルギーを補給したり、欠かせない場所でした。当時はデジカメもなかったから、写真に残っていないのが残念ですが、京都では特に、裏道に「こんなところに、ステキな喫茶店があるんだ」と思わされたものです。
そんな気持ちを、思い出させてくれたお店が、包み計画(クルミケイカク)です。
もう時期オープンしてから1年が経ちます。見つけるのが難しいのではないかと思われる路地裏に、厳選された雑貨たちが並び、喫茶店も兼ねているお店、クルミケイカク‥‥。包むという文字が、包んであるものをはめこんだロゴもステキです。
育児に必死だった1年前から、散歩の途中に見つけて以来、何度か訪れました。古い家屋のせいか、それともオレンジ色のあたたかい照明のせいなのか。どこか懐かしく、時間がゆっくりと流れる感じがするお店なのです。なんでかなぁと思ったら、京都でこんな感じのお店があったのを思い出しました。 入口の大きなガラス戸のせいかな‥‥。
真っ白な壁と、木目の美しい家具もステキです。ところどころに飾られた、ディスプレイ用のアンティーク雑貨や、手にとってみたくなる料理や雑貨などの書籍からも、店主のこだわりが伝わってきます。もちろん、コーヒーもケーキも美味しくて、エネルギー補給場所としては、うってつけなのでした。
そして、すごーく個人的な思いですが、ここの女性店主が、前回ご紹介をした小さな哺乳瓶を譲ってくれた業者さんに、なんとなく似ているということもあり、余計に京都を思い出してしまうのかもしれないと思いました(京都の骨董屋から来た哺乳瓶でした)。
見ているだけで楽しくなる、選び抜かれた雑貨がズラリ。 カフェオレを飲みながら、大きなガラス戸越しに、ぼんやり外を眺めます。
ちなみに、包み計画のあるこの辺りは、明治45(1912)年に"三業地"に指定された場所でもあります。三業地とは、料亭、芸者置屋、揚屋(待屋)のある花街のことです。近年では、だいぶ建物の建て替えが進みましたが、現在も残る狭い石畳の路地や階段(井戸もあります)、丸窓の木造家屋などを眺めていると、当時の面影が偲ばれて、ワクワクします。昔の写真を飾ったお店があったり、着物のしみぬきや染物を商うお店もあります。詳しく知りたい方は、『東京 花街・粋な街』(上村俊彦著・街と暮らし社発行)を参考になさってください。街歩きも兼ねて、ほっこりしてみてくださいね。
おしまいに
4月10日の夜、娘をおんぶして散歩をしていたら、背後の娘が「ふうせん~」といいだしました。「え~。夜に風船は飛ばないと思うよ~」と振り返って夜空を見上げると、光輝く飛行船の姿が! 「本当だ。すご~い。かっこいい~。カメラ持ってくればよかった~」と話していたら、2日後ベランダから飛行船を発見。どうやら都内のお花見を兼ねて、連日飛行船が飛んでいるようです。大慌てで撮影し、娘と眺めたのでした。幸せなひとときです。
思えば、いつまで娘を抱っこ(おんぶ)できるのかな? 本当にエルゴの抱っこ紐 にはお世話になってきました。2歳を目前に、そろそろ終わりかなぁと思い、調べてみたら、4歳くらいまで使用可能だと書いてありました(私の腰が耐えれるかは別として)。‥‥あと2年は使えるのですね。すご過ぎるゾ。エルゴ。