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「ぶらり歌碑巡り」タイトル

アカデミア青木

http://www.maboroshi-ch.com/hoso/item-43.html
ラジオ版・ああ我が心の童謡〜唱歌編
http://www.maboroshi-ch.com/hoso/item-50.html
ラジオ版・ああ我が心の童謡〜童謡編
まぼろし放送にてアカデミア青木氏を迎えて放送中!

碑

第36回 『蜀黍畑』

 日溜まりの公園で、暮れなずむ街角で、夜のしじまの中で、ひとり「童謡」を口ずさむ時、幼き日々が鮮やかによみがえる…。この番組では、皆様にとって懐かしい童謡の歌碑を巡ってまいります。
 野口雨情の童謡歌碑は各地にありますが、昔愛唱されて今日あまり歌われなくなった歌の碑がいくつかあります。第33回でご紹介した『四丁目の犬』、そして今回ご紹介する『蜀黍畑』はそれに該当するでしょう。『蜀黍畑』の作曲は、おなじみの中山晋平や本居長世ではなく、藤井清水*が行っています。



『蜀黍畑』(『金の船』大正9年6月号 に発表。歌詞は『定本野口雨情 第三巻』未来社 昭和61年 収録のもの)
 作詞 野口雨情(のぐちうじょう、1882−1945)
 作曲 藤井清水(ふじいきよみ、1889−1944)

 

碑

 

 お背戸の 親なし
 はね釣瓶

 海山(うみやま) 千里に
 風が吹く

 蜀黍(もろこし)畑も
 日が暮れた

 鶏 さがしに
 往かないか。

 

 この歌について、雨情は次のように書き残しています。
 「蜀黍畑はさわさわと野分けが吹いて、日も早や暮れようとしてをるのに、鶏はまだ帰つて来ない。お背戸の井戸端のはね釣瓶よ、お前も親なしの一人ぼつちで、さぞ、さびしてだらう、私と一緒に鶏をさがしに行かないかといふ、気持を歌つたのであります。
 この単純な自然の景色のなかに、田舎の晩秋の夕暮時が忍ばれてくるのではありませんか。かうした情趣は、日本の田園にしか見出すことの出来ない独特の世界であります。郷土童謡の意義は、こんなところにあることを承知して戴きます」(『童謡と童心芸術』同文館 大正14年)
 また、雨情は『童謡と児童の教育』(イデア書院 大正12年)の中で、「学校又は家庭、その他の団体に於て、子供に童謡を歌はせ、また踊らせ、作らすには、どんな資格を具備した人でなければならないか?」という問いに対して、「世の中には、童謡の指導は詩人でなければ出来ないと云ふ人もあります。つまり童謡詩人以外の何人も適任ではないと申されるのであります。成るほど左様かも知れません。しかし私はさうは考へません。童謡詩人でなくても少くとも童謡の分る人、正風童謡を見分け得る人であれば、それで充分の資格あるものだと考へてゐるのです」と述べ、小林一茶の「九輪草四五輪草でしまひけり」の句と共にこの『蜀黍畑』を挙げて、「この童謡が解つて下すつたら、何も文句はないと考へます」と断言しています。
 それほどまでに雨情の思い入れが深かった『蜀黍畑』の歌碑は、雨情が死去した栃木県宇都宮市鶴田町の旧居の裏、羽黒山の山頂に建てられています。ここからは宇都宮の市街がよく望めますので、雨情の旧居に行かれた際には是非お立ち寄り下さい。

山頂から宇都宮市街を望む

山頂から宇都宮市街を望む

*藤井清水 ふじいきよみ。明治22年、広島生まれ。作曲家。大正5年、東京音楽学校甲種師範科卒業。小倉高女教諭、大阪市民館書記等を経て、作曲活動に専念。「真の日本民族性の表現たるべき国民音楽の樹立」を願い、日本の民謡を基にして民族的なスタイルの歌曲、新民謡、童謡などを多数作曲。昭和19年に死去。享年55。


[参考文献

『定本野口雨情 第三巻』未来社 昭和61年

『定本野口雨情 第七巻』未来社 昭和61年

『定本野口雨情 第八巻』未来社 昭和62年

下中邦彦編『音楽大事典第4巻』平凡社 昭和57年]

場所:栃木県宇都宮市鶴田町羽黒山山頂
交通:JR東北本線「宇都宮」駅西口10番バス乗り場より、関東バス「長坂経由新鹿沼」、「砥上車庫」、「上欠・松原団地経由新鹿沼」行きで「鶴田橋」バス停下車、徒歩7分


2005年8月19日更新
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[ああ我が心の童謡〜ぶらり歌碑巡り]
第35回 『あの町この町』
第34回 『黄金虫』
第33回 『四丁目の犬』
第32回 『七つの子』
第31回 『背くらべ』
第30回 『浜千鳥』
第29回 『通りゃんせ』
第28回 『宵待草』
第27回 『案山子』
第26回 『仲よし小道』
第25回 『七里ヶ浜の哀歌』
第24回 『城ヶ島の雨』
第23回 『どんぐりころころ』
第22回 『十五夜お月さん』
第21回 『浜辺の歌』
第20回 『叱られて』
第19回 『故郷』
第18回 『砂山』
第17回 『兎と亀』
第16回 『みどりのそよ風』
第15回 『朧月夜』
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第13回 『春よ来い』
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第10回 『靴が鳴る』
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[ああわが心の東京修学旅行]
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