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「ぶらり歌碑巡り」タイトル

アカデミア青木

http://www.maboroshi-ch.com/hoso/item-43.html
ラジオ版・ああ我が心の童謡〜唱歌編
http://www.maboroshi-ch.com/hoso/item-50.html
ラジオ版・ああ我が心の童謡〜童謡編
まぼろし放送にてアカデミア青木氏を迎えて放送中!

碑

第39回 『シヤボン玉』

 日溜まりの公園で、暮れなずむ街角で、夜のしじまの中で、ひとり「童謡」を口ずさむ時、幼き日々が鮮やかによみがえる…。この番組では、皆様にとって懐かしい童謡の歌碑を巡ってまいります。今回は、『シヤボン玉』です。
 「シヤボン玉 飛んだ、屋根まで飛んだ…」で始まる『シヤボン玉』。野口雨情が手掛けた童謡はたくさんありますが、子供から老人まで愛唱されている歌といえば、この歌と『七つの子』が双璧ではないでしょうか。作曲は、おなじみの中山晋平です。



『シヤボン玉』(『金の塔』大正11年11月号 に発表。歌詞は『定本野口雨情 第四巻』未来社 昭和61年 収録のもの)
 作詞 野口雨情(のぐちうじょう、1882−1945)
 作曲 中山晋平(なかやましんぺい、1887−1952)

 

碑

 

 シヤボン玉 飛んだ
 屋根まで飛んだ

 屋根まで飛んで
 こはれて消えた

 シヤボン玉 消えた
 飛ばずに消えた

 生れて すぐに
 こはれて消えた

 風 風 吹くな
 シヤボン玉 飛ばそ

 

 シャボン(石鹸)は南蛮貿易によって初めて我が国にもたらされ、江戸時代には主に薬として使われました。シャボンを膨らませる「シャボン玉遊び」も昔から行われ、江戸時代の延宝8年(1680)の『洛陽集』には「空やみどりしやぼん吹かれて夕雲雀」、「我貌の面目もなきしやぼん吹」の句が収められています。ただ、ここにある「しやぼん」は、貴重な輸入石鹸ではなく、ムクロジの実の皮などを焼いて作った灰を水に溶かしたもののようです。幕末には、「さぼん玉売り」と呼ばれる行商人が、この遊びのセットを江戸や上方で売り歩いていました。
 国産の石鹸が一般に販売されるようになるのは明治になってからで、当初は手工業的に作られていました。その後次第に発展して、大正時代に入ると石鹸の輸出入は逆転、我が国の輸出超過となります。国内生産量は第一次大戦を契機に大幅に増え、洗濯石鹸は生活必需品となり、化粧石鹸も中流以上の家庭で使われるようになりました。(当時、入浴の際に化粧石鹸代わりに糠袋を使う家庭もあった)『シヤボン玉』が発表されたのは大正11年のこと。歌中に出てくる「シヤボン玉」は、もしかすると普及が進んでいた洗濯石鹸で作ったものかもしれません。
 『シヤボン玉』については、巷間「雨情が幼くして失った子供を偲んで作詞した」といわれておりますが、そのような記述は『定本野口雨情』には残されていません。雨情は、明治41年に娘・みどりを生まれてからわずか8日後に亡くしています。もしかすると、そんな過去がこの歌に投影しているのかも知れません。でも、前回見たように、雨情にとって童謡は「歌謡のすがたを備へた童心芸術」であり、意識的に作られることは童謡の本質ではないのです。子を失う悲しみは親が抱く感情であり、子供をまだ持たぬ童男童女はそんな感情を抱くことはありません。本心はどうあれ、雨情はしゃぼん玉に対する子供の素直な想いをこの歌に表現せざるをえなかったのです。

像

 さて、この『シヤボン玉』の歌碑は、前回の『雨降りお月さん』と同じく茨城県北茨木市の常磐自動車道・中郷サービスエリア[下り線]内に建てられています。歌碑は池のそばにあり、傍らにはしゃぼん玉を膨らませる子供の像があります。歌詞は自然石に彫られているのですが、離れて見ると、丁度詞が子供が吹いたしゃぼん玉のように見えます。なかなかユニークなデザインとなっておりますので、機会がありましたら是非ご覧になって下さい。


[参考文献

『定本野口雨情 第四巻』未来社 昭和61年

『花王石鹸五十年史』昭和53年

『世界大百科事典』平凡社 昭和47年の「石鹸」の項

『童心の詩人 野口雨情』いわき市立草野心平記念文学館 平成12年]

場所:茨城県北茨城市常磐自動車道・中郷サービスエリア[下り線]内
交通:JR常磐線南中郷駅よりタクシー6分。


2005年11月25日更新
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[ああ我が心の童謡〜ぶらり歌碑巡り]
第38回 『雨降りお月さん』
第37回 『かごめかごめ』
第36回 『蜀黍畑』
第35回 『あの町この町』
第34回 『黄金虫』
第33回 『四丁目の犬』
第32回 『七つの子』
第31回 『背くらべ』
第30回 『浜千鳥』
第29回 『通りゃんせ』
第28回 『宵待草』
第27回 『案山子』
第26回 『仲よし小道』
第25回 『七里ヶ浜の哀歌』
第24回 『城ヶ島の雨』
第23回 『どんぐりころころ』
第22回 『十五夜お月さん』
第21回 『浜辺の歌』
第20回 『叱られて』
第19回 『故郷』
第18回 『砂山』
第17回 『兎と亀』
第16回 『みどりのそよ風』
第15回 『朧月夜』
第14回 『早春賦』
第13回 『春よ来い』
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