テレビを見ていたら、月刊情報誌『日経トレンディ』による"2010年ヒット商品ベスト30"が紹介されていました。思えば、私にとっての2010年は、出産にまつわることが大半で、高齢出産についてなら、いくらでも書けそうですが、今年のヒット商品といわれても、いまひとつピンときません。なにが紹介されるのかしら? と思いつつ眺めていると、
1位・食べるラー油(食べたことありません)。
2位・3D映画(見たことありません)。
3位・スマートフォン(持っていません)。
‥‥‥。
4位から30位まで見ていくと、ひとつだけ使っている商品がありました。7位の低価格LED電球です。2ヶ月前に玄関の電球を交換した時に取り付けました。それ以外の商品は、正直よくわからない物が大半を占める私です。思うに、出産前後というのは、今まで続いてきた世界がプッツリと途切れ、まったく別の世界に移動してしまったような、そんな感覚に陥るから不思議です。
しかし、ヒット商品の中で9位に輝いた、コクヨの"ハリナックス"が紹介されるやいなや、私は画面にくぎ付けになってしまい、思わず、
「それ、無針紙綴器だろ~!」
とつっこんでしまいました。
ハリナックス...針不要のホッチキス、ステープラーですね。このような地味(?)な代物が9位に輝くなんて。まさに環境に優しくあるべき、エコ時代の要望でしょうか。それもハンディタイプというのが素晴らしい。ひきだしにポンッと入れておけるコンパクトさに加え、安価で5色の中から好きな色を選べるのも嬉しいですね(安価といえば、ゼロ針という同様の商品も売っていましたが)。
けれど、古いモノに心惹かれている私としては、ハリナックスの祖父母的存在である、昔の仲間も知っていてほしいなぁと思いました。写真を見てください。渋い木製で、クリップレスと書いてあるこの代物が、ハリナックスの先祖(?)です。トレードマークは「CK」。特許番号が2つ書いてあります。番号から調べてみると、92年も前の大正7年に、名古屋在住の方によって特許登録されていました。そして登録された商品名が「無針紙綴器」。なんてインパクトのある商品名でしょうか。ググッと心をわしづかみされたのは、いうまでもありません。使用方法は、上からガシャンと押すだけ。ハリナックス同様に、紙が紙自体に穴を開け、差し込むようにして、数枚の紙を綴じることができます。
この商品は、その後もクリップレス、ステープレスという商品名で、形を変え、素材を変え、販売されてきましたが、ハンディタイプになったとはいえ、2010年を映すヒット商品に選ばれたのですから、すごいことですね。今後子供が大きくなるにつれ、イベント時に色紙で鎖をつくる時(私としては今までにない発想で、笑ってしまいます)、また手紙など数枚の紙を綴じる時に、ハリナックスで綴じるのはグッドアイディアだと思ったりして。
そしてもうひとつ、針が必要なステープラーをご紹介します。このステープラーは、なんといってもデザインがステキで、飛行船をモチーフにしているのです。写真を見てください。「カッコイイ‥‥」この一言につきます。デザインはもちろんのこと、金属の輝きも、年季を感じる錆も、実に味わい深いと思うのです。
飛行船といえば、昭和4年8月19日の夕方に、東京上空に現れた銀色の巨大飛行船"ツェッペリン伯號"が思い浮かびます。その出現は人々に、ものすごいインパクトを与えたのでしょう。当時つくられたモノに、その姿を数多くとどめていることからもわかります。たとえば玩具に食器、文房具、着物や薬のパッケージなどなど、いったいどれくらい種類があるのか、想像もつかないほどの豊富さなのです。飛行船型にデザインされた商品を手にして嬉しそうにしている、当時の人たちの熱狂ぶりが目に浮かぶようで、こちらまで嬉しくなってしまいます。