気になるお店の最近のブログ記事
前回につづいて、骨董ジャンボリーでのお話です。
会場に入ると、まずは昔からお世話になっている、古道具月天のTさんのもとへ。昨年は時間が取れずお会いできなかったので、ひさしぶりの再会です。お元気そうな姿を見て安心しつつ、つもる話に花を咲かせながら、モノたちを楽しく拝見しました。
その中で、以前にもご紹介しました「クラブ美身クリーム」なる箱入りのビンが目につきました。もっていないビンです。
紙箱はボール紙の生地で、小さなラベルを貼り付けただけの、ちょっと地味な感じのもの。でも、戦前~戦中のものにしては、状態は悪くありません。
ビンはパッと見、乳白色の顔料を混ぜたガラス製のように見えますが、陶器でできています。
箱の雰囲気や、黒いベークライト製のフタからもお察しのとおり、物資が不足した時代の、代用材料を使った化粧ビンなのでした。Tさんによると、未使用のままで、数がまとまって出たとのこと。状態もよく、嬉しくなりました。
ちなみに、箱、フタ、ビンとも、製造元や所在地の表記はありませんでした。代用品時代のこととて、ラベルの面積も限られたので、書く内容も、極限まで削ったのかもしれません。
ビンのラベルには「HORMONE"CLUB"CREAM」、「ムーリク身美ブラク」、「有含ンモルホ合綜」と、3行の表記がありました。「総合ホルモン」? はて、どんな成分なんでしょう?
ただ今マイブームの、セピア色写真でも一枚、パチリ。戦前の広告写真の気分で。
この世に生まれてから、少なくとも70年という長い時間を経て、私の家に来たビン。いつものことですけれど、しみじみ不思議な感覚におそわれます。
古道具月天さんのブースも撮らせていただいたので、ちょっとご紹介。
ガラス器たちが電灯にキラキラして、とってもきれい。曇りガラスのやわらかな照明は、モノたちの魅力を一段と引き立ててくれます。ケース内外の配置一つ一つに、Tさんの古いものへの愛情が感じられて、楽しくなりますね。
それにしても、骨董ジャンボリーのわずか3日間のために、これらの商品すべてを梱包し、展示するのですから‥‥。本当に大変な作業だなぁと、思わずにはいられません。今回は屋内ですが、露天の市では、さらに雨風の心配もしなければなりませんから、本当に頭が下がります。
もっとゆっくり眺めていたかったのですが、「お腹すいた~!」の娘のひとことで、現実に引き戻されて、後ろ髪引かれる思いでブースを離れ、レストランへ。‥‥まぁ、想定済みです。電車も2回乗り換えたり、たくさん歩きましたから、お腹もすいたのでしょう。
次につづきます。
6月5日に梅雨入りしたとたん、東京は途切れなく雨が降り続き、洗濯物を外に干すこともかないません。その前は30℃越えの暑さが続いていたこともあって、心身ともになんとなーく疲れがたまってしまう昨今。
そんな雨降りの7日、根津にあるギャラリー・マルヒさんへ行ってきました。そうです、以前ちらりとお知らせしました、エキスポさんの個展を拝見しに行ったのです。
しっとりと雨に濡れた路面に、「MARUHI」さんの看板が出ていました。
看板の矢印にしたがって、狭い路地に入っていくと、軒先に丸に「ヒ」の看板が‥‥。
建物の懐かしい感じのする佇まいに、ちょっとほっとして。
年代を感じる木造家屋に感激しつつ拝見。窓ガラスに貼られているのは、どれもエキスポさんにあったモノたちです。
モノたちが、現物ではなく写真で展示されている様子に、これらがすでに想い出になってしまっていることを感じ、なんともいえない気持ちになります。
そして、奥には、火事の様子を写した写真と、黒く焦げたモノたちが‥‥。
店内の様子を見ると、いかに火の勢いが強かったのか、思い知らされました。
2月にお店にうかがった時に、「中を見て行く?」とオーナーに声をかけてもらいましたが、見ることができませんでした。でも、こうして写真で見ると、悲しいとか、ショックという気持ちよりは、なんともいえない迫力に、不思議な感覚になったものです。
火事にあわれてから4ヶ月、よくここまで整理し、形にされたと脱帽です。
エキスポさんに集められたモノたちは、今まで数多くのマスコミに取り上げられ、当時を伝える貴重な資料として活躍をしてきました。
帰り間際、オーナーとお話することができました。
「かえるちゃん、俺はコレクションの行く末を心配してきたけど、モノのほうから終わりを選ぶこともあるって、知ったよ」
「モノたちは、オーナーをおしまいの場所に選んだのですね」
「そう思うことにした」
入口には、復活を望むたくさんのメッセージが‥‥。
最後になりましたが、一番上に載せた写真の金属のソファーは、この日求めたモノです。宝石箱なのですが、フタを開けると、鏡を取り付けた部分は熱で溶けて固まっていて、全体もススがつき、焦げくさい臭いも残っています。私はエキスポさんの形見として、つれて帰ろうと思いました。
思えば、エキスポさんとは20年以上のおつきあいで、行くたびに楽しくて、ついつい長居してしまう、居心地のいい空間でした。このソファーのように、ふわふわとした座り心地のいい場所という感じでしょうか。いつでも当たり前のようにあって、ずっと続いていくと思っていた空間‥‥。もっと訪ねておけばよかったと、今さらながら悔やまれます。
オーナー、Aさん、ありがとうございました。
感謝の気持ちをこめて、次の発信を待っています。