懐中時計の鎖の輪の中に、右横書きで書かれた"吉沼商店"は、約130年前の、明治16(1883)年に、吉沼又右衛門さんが、東京日本橋に創業した"吉沼時計店"のことでした。
"吉沼時計店"と聞いても、いまひとつピンとこなかったのですが、明治22(1889)年には日本橋南萱場町に、ぼんぼん時計工場まで設立し、小売時計店としては、服部時計店や天賞堂などと、競った時期もある有名なメーカーだそうです。そんなこととは露知らず、「かっこいい~」とつれて帰ったのは、ステキな茶托としてです。
ご覧ください。見事としかいいようのないデザインの茶托を。直径11センチの中に、中央には、秒針まで描かれた時計の文字盤があり、文字盤を囲むように、光り輝く指輪、懐中時計、双眼鏡、香炉、三重盃などが描かれ、そのまわりには、2羽の鳳凰が描かれているのです。まるで、文明開化を描いた図変わり印判のお皿のようだと思いました。
金属製のモノは、何点か持っていますが、これほど細かく、ステキなデザインモノはありません。
裏面にも、"吉沼製"の刻印があります。
吉沼時計店について、もっと詳しくお知りになりたい方は、TIMEKEEPER 古時計どっとコムさんの、吉沼時計製造会社・東京時計製造をご覧ください(リンクを貼らせていただきました。とても勉強になりました。ありがとうございます)。当時の貴重な資料を交えて、ていねいにご紹介しておられます。こちらをご覧になると、いかに吉沼時計店さんが、大きく商いをしておられたのかがわかります。ちなみに、茶托も出ていますよ。
そうそう、この茶托を手に入れた時に、素性を調べるにあたって、墨田区にある"セイコー時計資料館"改め、"セイコーミュージアム"を訪ねました。平成15(2003)年のことですが、当時は今ほどインターネットが盛んではなく、情報は書物で調べるか、資料館などに出向くことが必須でした。資料館の方には、セイコーのことではない質問なのに、とても親切に対応していただいた記憶が残っています。ありがとうございました。
おまけ
上野動物園です。ここのニワトリさんは、えらいというか、かしこいというか。
娘と遊んでくれました。それも30分くらい、逃げることもなく‥‥。ありがとう。