「あっ、ベークのフタだ」と思いました。どっしりとした広口ビンに、ところどころ剥げた年季を感じる赤いラベル、そして、チョコレート色をした、とても状態の良いベークライトのフタが、視界に飛び込んできたのです。乾物でも入れようかな。どこに置こう‥‥と考えながら、辺りを見まわすと、なんとも不思議な空間です。民家が密集した場所に、すぽっと空いた狭い土地。そこに陶芸、鞄、骨董などが、楽しそうに並んでいました。ところは谷中7丁目。幟がひらひらと立っています。宇宙人のようなウサギが描かれたピンク色の幟には、"PEKE USAGI"と、黄色いアヒルの幟には、"家鴨窯"と描いてあります。そう、ここが友人のお店です。
数時間前のこと、仕事前の旦那サンが、友人のブログを読んでひと言。
「がーちゃん、谷中で店やるみたいだよ」
「ふ~ん。いつ?」
「今日。もうはじまってるね」
2月26日のことです。布団の中でゴロゴロしていた私は、ガバッと飛び起き、赤ちゃんをつれて、慌ててやってきたのがこの会場。手創り市だと思っていたのに、骨董も売っていたのです。
このビンは(ガラスの保存ジャーといったほうがいいのかな?)イギリス製で、1950年代のモノだそうです。底には「BRITISH MADE」の文字があり、てろんとした、厚手で小さな気泡がポツポツはいったガラスも可愛らしく、高さは16.5センチと使いやすい大きさです。そして、なんといっても、フタがベークライトなのが魅力です。地味な色合いだけど、味わい深いというか、ステキだと思うのです。しばらく眺めていたのですが、台所で使うことに決め、買うことにしました。
肝心な友人のお店は、家鴨窯というだけあって、店主はアヒルの"がーちゃん"です。本日は猫の街谷中ということもあり、猫グッズをメインに並べておられましたが、鳥好きである私のお目当ては、当然がーちゃんグッズ。箸置きと、カップ、スープ皿を買いました。優しい生成色をした器たちは、小さながーちゃんが、ちょこちょこと顔をだしている可愛らしいデザインです。スープや飲み物がなくなったあとに、ちょこんと顔を出すがーちゃんを想像するだけで、ほんわかとした気持ちになります。それに、赤ちゃんも喜ぶと思いました。小さな突起を触るのが大好きだから。私個人としては、カフェボールなんかつくっていただけると、嬉しいかも。そんなことを思いながら、がーちゃん一家の人柄がにじみ出るでているお店で、しばし歓談。ひさしぶりにお会いできて、楽しいひとときです。製作者のhalcoさんは、手づくりが大好きで、不器用な私は常々見習いたいと思っている女性のお1人。ニコニコと楽しそうに接客しておられる姿を見ると、私までニコニコしちゃうのでした。
この小さな市は、"谷中ペケ市"というそうです。"貸はらっぱ 音地"にて2010年の夏からスタートし、月2回のペースで開催しておられ、その都度出店者が変わる模様。楽しみですね。そうそう、甘酒も売っていて、通りすがりの人が、美味しそうに飲んでいました。こういうほのぼのした市が、この街には本当によく似合います。近所には飲食店をはじめ、象牙のお店や骨董屋、初音小路もあるし、見はじめるとキリがありません。いろいろ見たい気持ちを抑えて、谷中銀座商店街を通り(通れるようになりました。*No.3参照)、コシズカハムで、ベリーハムを買って、赤ちゃんがぐずりはじめる3時間を目前に、退散しました。
その夜、旦那サンに「楽しかったよ~」と、写真を見せたら、
「このペケウサギってなに?」と聞かれました。「知らない。ペケ市のキャラクター?」と答えたのですが‥‥。今度行ったら聞いてみましょうか。